下痢はどう?
もう少し聞いてからだけど小建中湯(しょうけんちゅうとう)あたりが良いかもね。
みなさん、こんにちは!
漢方薬剤師の玄(@gen_kanpo)です。
「漢方薬は苦くて飲みにくい」
こう警戒されてしまいますが甘くて飲みやすいものもあります。
今回紹介する小建中湯もその1つ。
中に麦芽で出来た飴(アメ)が入っている漢方薬で体調を崩しやすいお子さんなどオススメです。
今回は虚弱者にオススメ!「中(胃腸)を建てなおす漢方薬」小建中湯について解説していきます。
- お腹が痛くなりやすい
- 疲れやすい
- 子供の体調が悪い
小建中湯ってどんな漢方?
簡単に説明すると
脾胃(≒胃腸)の冷えでエネルギーが不足し起こる様々な不調を改善する漢方薬です。
ポイントは「虚(不足)と冷え」
小建中湯は「中を建てる」と書きます。
※他にも大建中湯などがある
中とは中焦(ちゅうしょう)脾胃(≒胃腸)のことを指します。
※上焦は心や肺など、下焦は腎など
中を建てる=脾胃を立て直す
胃腸の不具合から起こる様々な不調に使っていく漢方薬です。
脾胃は後天的にエネルギー(気血など)を生成する大事な場所です。
体質や暴飲暴食などで脾胃が弱ると慢性的にエネルギー不足が起きます。
- ストレスに対して弱い
- 風邪を引きやすい
- お腹が痛くなりやすい など
小建中湯はこれらの原因の脾胃を建て直すことで改善する漢方薬です。
出典の傷寒論と金匱要略の代表的な条文には
【傷寒論】
- 寒さが原因の風邪にかかり、陽脈濇にして陰脈は弦であれば、急な腹痛がある。まずは小建中湯を与え、ならないものは小柴胡湯がよい。
※陽脈濇にして陰脈は弦→軽く触れると渋る 深く触れると弓の弦のような脈 - 寒さが原因の風邪にかかり2.3日、動悸がして胸がざわざわする人は小建中湯で治す
【金匱要略】
- 疲労でお腹がひきつり、動悸があり鼻血がでて、腹痛、夢精、四肢が委縮し痛み、手足がほてり、喉や口が渇くのは小建中湯で治す。
※超意訳
この様に書いてあります
手足のほてり口の乾きという熱に似た症状に使いますが「冷やす漢方薬」ではないので注意です。
脾胃は冷えを嫌うのでどちらかというと温めるタイプの漢方薬です。
陽が虚すれば寒が生じる
陰が虚すれば熱が生じる
脾胃の虚を去る→陰陽気血の元が正常に作られる
虚すれば筋肉にも栄養がいかず、粘膜は乾き、体液や血を留めることができず漏れ出てしまいます。
虚を補うことで様々な症状を改善する漢方薬ということがわかります。
構成生薬
≪生薬名≫ | ≪効能・効果≫ |
---|---|
膠飴 | 中焦を温め元気にする 腸の調子を整える |
桂枝 | 温め陽を補う→膠飴の補助 |
生姜 | 温める 桂枝との組み合わせで辛甘化陽 |
芍薬 | 陰血を補う→膠飴の補助 |
大棗 | 脾胃を整える 白芍との組み合わせ酸甘化陰 |
甘草 | 胃腸を整え 虚に対抗する |
小建中湯は桂枝湯の芍薬を増やし(桂枝加芍薬湯)に膠飴を加えたものです。
膠飴は米粉などに麦芽を加えて加工精製した飴(アメ)です。
膠飴は君薬(メインの生薬)で栄養補給の意味と胃腸の過度な動き(ひきつり)を改善します。
桂枝湯は風邪でも使いますが、小建中湯の大きな目標は中焦(脾胃)を立て直すことです。
構成生薬には芍薬+甘草の組み合わせ(芍薬甘草湯)が含まれるのも特徴です。
陰血を補う効果と筋肉に引きつりを改善できる組み合わせになっています。
よく使う症状
体力虚弱で,疲労しやすく腹痛があり,血色がすぐれず,ときに動悸,手足のほてり,冷え,ねあせ,鼻血,頻尿および多尿などを伴うものの次の諸症:小児虚弱体質,疲労倦怠,慢性胃腸炎,腹痛,神経質,小児夜尿症,夜泣き
厚生労働省 薬局製剤指針より引用
疲れやすい(体力がない)
大人も子供も疲れやすい人はよく使います。
中焦(脾胃)は後天的にエネルギー(気血など)を作る場所。
弱っているとエネルギー不足になります。
特に子供は脾胃(≒胃腸)が未発達です。
胃腸の改善のため虚弱体質の子に対して長期で服用することがあります。
焦らずじっくり服用していきましょう!
冷え、手足のほてり、血色がすぐれない
これも脾胃が弱ることで起こるエネルギー不足の症状です。
- 冷え→気血が足りない
- 手足のほてり→四肢を主る脾胃の陰が足りない
- 血色がすぐれない→血虚
パッと見ると「冷えるのにほてるの?」と思うかもしれませんが虚によるものだと思えば理解できると思います。
夜泣き、神経質
これも子供に対してよく使います。
子供の体質は感情を主る肝が高ぶりやすく、脾胃が弱くなりやすいです。
脾胃と肝は五行で相克の関係です。(抑制する関係)
脾胃が弱いと肝の暴走を抑えることができなくなります。(脾虚肝乗)
肝は情緒や筋に管理している臓です。
暴走すると引きつるような腹痛、イライラ、感情のコントロールが低下がおきます。
子供は精神も未発達なので感情のコントロールが上手くありません。
すると夜泣きや神経の高ぶりが起きやすくなります。
腹痛
腹痛にも種類がありますが「冷え+虚(不足)」がポイントです。
小建中湯がよく効く腹痛は、
- 胃腸が弱い
- 気血が作られない
- 肝血が不足
- 肝気が失調(暴走)
- 脾胃が弱い状況で肝が強い
- 木乗土(肝が脾胃を攻撃)ひきつるような腹痛
この様な状態です。
虚寒(虚+冷え)が原因なので温めたり手で押さえるとと軽減する痛みに適しています。
構成生薬に腹痛やこむら返りに使う芍薬甘草湯(芍薬+甘草)が含まれます。
芍薬甘草湯は酸甘化陰(酸味と甘味は陰を作る)の組み合わせで陰血を補充します。
筋肉に栄養を与えて引きつる様な痛みに有効です。
- 触ると嫌な感じ(拒按)→実(不要なものが入り込んでる)
- 触ると気持ち良い(喜按)→虚(必要なものが足りない)
注意すべき点
湿熱タイプ、食積タイプ
小建中湯の主薬である膠飴は麦芽から作られたアメです。
体内のベタベタした状態を悪化させる可能性もあります。
湿熱タイプには注意が必要です。
脾胃は五行説では土。
性質は「土喜温燥」でベタベタを嫌います。
小建中湯は中を建てる漢方薬。
土がべちゃべちゃでは立派な建造物は建てれません。
また食積(食べすぎ)タイプにも向きません。
膠飴は補う作用が逆に滞りを悪化する可能性があります。
どうしても使う場合は平胃散などと組み合わせると良いと思います。。
四君子湯との違い
同じ脾胃を補う基本処方に四君子湯があります。
四君子湯(人参、白朮、茯苓、炙甘草)
同じ虚を補いますが白朮、茯苓の存在が大きいです。
この2つの生薬は健脾利水(脾胃を整え要らない水を去る)
食べ過ぎ、飲み過ぎで体に不要な水がたまっているタイプには四君子湯が向いています。
【個人的ざっくり分類】
下痢傾向(便秘もある)、浮腫がある、舌が腫れ上がる→四君子湯
コロコロ便)、便秘傾向(下痢もある)、頻尿→小建中湯
四君子湯は動きが緩慢なタイプ
小建中湯は過緊張やひきつりタイプ
大人の脾胃の疲れは暴飲暴食が多く水が溜まりやすいので四君子湯
子供は脾胃の弱さは生まれつきの部分が多いので小建中湯
まとめ
体が虚弱な人にオススメの小建中湯について解説しました。
小さいお子さんがいる方は覚えておくと便利です。
今回の内容をまとめると
小建中湯は中焦(脾胃)を建て直す漢方薬→胃腸が治ると様々な不調が治る
【よく使う症状】
- 疲れやすい(虚弱)
- 冷え、手足のほてり、血色がすぐれない
- 夜泣き、神経質
- (ひきつる)腹痛
【注意すべき点】
- 湿熱・食積タイプには向かない
子供は脾胃が弱く、肝が高ぶりやすいから、抑圧しない環境作りも大事ですよ!
思い当たる節がありだわ。私も少しも少しリラックスしなきゃね!!