それだけ徳のある漢方薬ってことじゃな!
他の処方の骨格をなす漢方薬でもありますから納得の名前ですね。
みなさん、こんにちは!
漢方薬剤師の玄(@gen_kanpo)です。
今回は四君子湯(しくんしとう)という漢方薬について解説していきます。
この四君子湯は非常に大事な漢方薬です。
それは色々な漢方薬の基礎になっているからです!
ぜひ学んでいってくださいね☆
- 胃腸が弱い
- 疲れやすい
- 漢方薬を勉強したい
四君子湯ってどんな漢方薬?
簡単に説明すると
『疲れ+胃腸障害』に対しての基本処方です。
具体的な症状としては
- 食欲不振
- 消化不良
- 下痢
- 疲労倦怠感
脾気虚になるとこれらの症状が出やすくなります。
解剖学でいうと胃腸の機能が一番近いんじゃ。(細かいことを言うと少し違う)
脾気虚になると消化吸収が低下しエネルギーを後天的に作れなくなってしまうんじゃよ。
四君子湯はこの脾気虚の基本薬で、胃腸障害や疲れに有効な漢方薬です。
そして、補中益気湯、六君子湯、十全大補湯、参苓白朮散など効果に疲労や胃腸の不具合という項目がある漢方薬たちのベース考えられています。
※補中益気湯は諸説あり
出典の和剤局方には
体内を栄養する栄気と、対外を守る衛気とが共に弱り、五臓六腑が虚弱で、胃の辺りが張って苦しく、
食欲不振、腸が鳴り、下痢をし、嘔吐やしゃっくりが出るような人に用いる。
常用すると胃腸の機能を整え、食欲を増して、外からの邪気の侵入を防ぐ効能がある。
※超意訳
この様に書いてあります。
脾(胃腸)を立て直すことで内外のエネルギーを充実させる漢方なのがよくわかる内容だと思います。
有名処方【六君子湯】との違い
胃腸科などでも人気の六君子湯。
これのベースは四君子湯です。
六君子湯=四君子湯+半夏+陳皮
この半夏、陳皮に四君子湯にも含まれる茯苓を加えた処方を【二陳湯(にちんとう)】といいます。
二陳湯は化痰(けたん)の基本処方。
化痰(けたん)とは体の不要な水分とそれが固まった痰を取り除く作用です。
脾の臓は湿気を好まない性質をもっています。
水分代謝が悪く胃に溜まってしまうタイプは六君子湯の方が向いてると言われています。
構成生薬
≪生薬名≫ | ≪効能・効果≫ |
---|---|
人参 | 気を補う 体を潤す |
白朮(蒼朮) | 不要な水を取り除くことで胃腸を調える |
茯苓 | 不要な水を取り除くことで胃腸を調える |
(炙)甘草 | 補気を助ける 生薬を調和させる |
名前の通り4味で構成された漢方薬です。
シンプルに脾(胃腸)を調える構成になっています。
この4味の【性 温】【味 甘】
どちらも脾(胃腸)に優しい性味です。
人参、(炙)甘草が潤し、白朮、茯苓で乾かすという対になっているので極端な傾きなく使えます。
エキス剤の場合はここに大棗と生姜が加わります。
これには賛否があるのですが胃腸を整えたり、味を調整することができているので個人的にはあっても問題ないと思っています。
メーカーによって白朮と蒼朮が違います。
この差をざっくり説明すると
- 補が強いのが白朮
- 瀉が強いのが蒼朮
疲れが強いなら白朮
胃内に水分がぽちゃぽちゃしてるなら蒼朮
細かいことを言うと使い分けると良いです。
個人的には白朮の物を好んで使っています。
よく使う症状
単体で使うよりも他の処方と併用することが多い処方の一つだと思います。
漢方薬は構成生薬が
- 多いとマイルド
- 少ないとシャープ
効くとされています。
胃腸虚弱
メインで使う症状です。
- 下痢をしやすい
- 食欲不振
- いつも食べた後もたれる
この様な症状に四君子湯は有効です。
胃腸の機能を調え、不要な水を去ることができます。
一般的な胃薬の様に単回で飲むのではなく長く飲むのがオススメ。
四君子湯は脾(胃腸の機能面)を治す漢方薬です。
- 食べ過ぎたから胃もたれ
- 冷たい飲み物飲み過ぎで下痢
- 嘔吐下痢の風邪
この様な症状にも使えるのですが、他の漢方薬の方が向いている場合が多いです。
慢性的な胃腸弱などをじっくり治していくのに適しています。
四君子湯にも不要な水を抜く効果があるんだけど下に苔がべったりつくようなタイプは六君子湯の方がオススメです。
下痢が続くような場合は参苓白朮散の方が使いやすいことが多いです。
疲れやすい
脾(胃腸)が弱いと後天的に気血(エネルギー)を作ることが出来ないので『疲れやすい』という症状が出やすくなります。
『食事をすると疲れてしまう!』
なんて時には最適だと思います。
少し注意したいのが『疲れやすい』という単語。
漢方薬局にいるとこの単語をよく耳にします。
これには
- 雨や湿気で体が重い
- 精神的に疲れやすい
似たような症状がとても多く存在します。
この様な時は他の漢方薬の方が適している場合が多いです。
どんな時に悪化するか?どうなると楽になるか?で対応する漢方薬が違うので注意しましょう。
四君子湯が有効な疲れは
- 食べた後疲れる
- 運動した後に疲れる
- 夕方疲れる
など気(エネルギー)が不足して起こる症状です。
注意すべき点
元気の人がより元気になるものではない!
中医学の基本は中庸。
極端な傾きをせずバランスが取れている状態を良しとします。
そのため補気の基本は
- 疲れている人は補気をして元気にします
- 問題ない人は特に何も治療を必要としません
元気な人がさらに四君子湯を飲めば気が余り滞りの原因になるぞ!
血圧が高い
人参は『血圧をあげるという報告』と『血圧を安定させるという報告』があります。
これにはかなり個人差があるので飲み始めは少し注意するようにしましょう。
逆に低血圧の人には人参が入った漢方薬はおススメです。
まとめ
補気の代表薬【四君子湯】
色々な漢方薬の骨格になってる漢方薬です。
単独で飲んでも良し!合わせて飲んでも良し!
便利な漢方薬です。
そして、これから漢方薬を勉強したい人は『補気薬の基本』という意味でもおぼえておいて損はないです。
簡単にまとめると
四君子湯は胃腸を元気にする漢方薬の基本。
【よく使う症状】
- 胃腸障害
- 疲れやすい
【注意すべき点】
- 元気の人がより元気になるものではない
- 高血圧の人
シンプルながら要点をよく考えられた処方ですね!