他には?
暑いからいっぱいお水飲んだ後から調子悪いよ。
みなさん、こんにちは!
漢方薬剤師の玄(@gen_kanpo)です。
二日酔いなどで
『のどが渇いて飲むのにおしっこの出が悪く浮腫む』
これに近い症状を経験したことありませんか?(私はよくあります)
これは、体の水分の異常による症状です。
そんな時に大活躍するのが
『五苓散(ごれいさん)』
体の水分に対して働きかける漢方薬です。
応用範囲が広いのでとても便利な処方です。
そこで、今回は水の偏りを改善する漢方薬の代表『五苓散』について解説していきます。
- よくお酒を飲む
- 体が浮腫む
- 低気圧に体調が悪い
五苓散ってどんな漢方薬?
簡単に説明すると
体の水分調整を漢方薬です。
水を飲んでいるのにきちんと吸収されず、胃腸などの体組織に水分がたまった状態を改善するとされる漢方薬です。
「正しく使われない水」
「不要な水」
この様な水に対して有効な漢方薬です。
傷寒論および金匱要略が出典で、代表的な条文には
寒さの風邪の治療(葛根湯などで発汗)の後に、おしっこの出が悪く、微熱が続き、口が異様に乾く人は体に邪が残ってるし、内部に水分をため込んでるから五苓散を飲みましょう。
超意訳&短縮
っと書いてあります。
他の条文には
- 発汗後に口が乾いて寝れない人には水を少しずつ与えれば勝手に治ります!
- 風邪をひいて6、7日まだ治らなく、のどが乾いたから水を飲もうとしたら吐いてしまったこんな時は五苓散を飲もう!
やっぱり超意訳
とも書いてあります。
「口が乾く」「水をため込んでる」
この逆の症状が出ているのがキーポイントになります。
構成生薬
≪生薬名≫ | ≪効能・効果≫ |
---|---|
猪苓 | 体の不要な水を去る(メイン生薬) |
沢瀉 | 体の不要な水を去る |
茯苓 | 胃腸を調え水の滞りを防ぐ。気を巡らす |
白朮(蒼朮) | 胃腸を整え水の滞りを防ぐ |
桂枝(皮) | 体表面の邪を去る。温め利水作用を助ける |
見ての通り猪苓、沢瀉、朮、茯苓の4種はどれも利水作用がある生薬です。
そのため体の不要な水分を抜く生薬構成になっています。
そして、桂枝が入っているのもポイントです!
実は五苓散から桂枝を抜いたものを四苓散といい利水作用に優れます。
体を温める桂枝が入ると気血の流れが改善され、体上下の水のめぐりがが活発になり水の偏り(特に上部)使うことができます。
脾(胃腸)⇒肺(全身バラまく)⇒腎(排泄)
胃腸に水がたまっていたりすると肺まで行くことができず水の偏りが生まれます。
すると上部で口渇などが起きます。
そのため、五苓散を使うポイントとして『胃内停水(胃に水がたまってぽちゃぽちゃ)』というのも挙げられます。
利水作用とは?
漢方薬の世界では
利水作用≒利尿作用
決しってイコールではないのです。
利水作用とは体の水分の調整。
不要なところにたまった水と水が不足しているところを調整する機能を指します。
そのため、この利水作用をもった生薬をたくさん含む五苓散は
『口は渇くけど胃には水が溜まってる』という逆症状に使うことができるのです。
風邪にも使えるの?
風邪に使うというよりも
『風邪が治りきらないで胃に水がたまり、口が乾くけど飲んだら吐く』というときに有効です。
ちょっと専門的に書くと風邪の治療が長引いて邪が膀胱に入ってしまう。
(風寒の邪が最初に侵入してくるのが膀胱の経絡)
すると、膀胱の機能が低下して
- おしっこを下に出せない→小便不利
- 再利用しようとした水分を上に持っていけない→口喝
このような状態になってしまいます。
この様なときは五苓散が有効です。
よく使う症状
体力に関わらず使用でき,のどが渇いて尿量が少ないもので,めまい,は
きけ,嘔吐,腹痛,頭痛,むくみなどのいずれかを伴う次の諸症:水様性
下痢,急性胃腸炎(しぶり腹のものには使用しないこと),暑気あたり,
頭痛,むくみ,二日酔厚生労働省 薬局製剤指針より引用
一見難しそうな漢方薬ですが『水の偏り』があれば使える要素があるので五苓散はとても応用範囲が広い処方です。
矢数道明先生の漢方処方解説にも
『本方の応用範囲はすこぶる広い。』
1行目に書いてあります。
胃腸障害
口が乾くのに
- 胃に水がたまってぽちゃぽちゃ(胃内停水)
- 吐き気
- 水様性の下痢
こんな時は五苓散がよく効きます。
暑気あたり
特に暑い夏に
- 水を大量に飲んだけどのどが渇く
- 胃に水がたまってるけどのどが渇く
- おしっこが出ないのに下痢
こんな時は体の水分が偏っている可能性があります。
五苓散を服用すると体内の水分の偏りが改善できるのでとてもオススメです。
二日酔い
これは本当によく効きます。
二日酔いで朝起きると
『のどはカラカラなのに体はむくむ』
『のどが渇いて飲んだら吐いてしまった』
こんな経験はありませんか?(私はたくさんあります)
このような時はまさに水の偏り、五苓散の出番です。
頭痛・めまい
おしっこの出が悪く、むくみ、低気圧に悪化するタイプにオススメです。
これは頭部や胃腸に不要な水分が溜まっていることが原因にあります。
そのため不要な水分を抜いてあげる及び調整してあげると改善していきます。
注意すべき点
乾燥傾向(水の偏りがない)
水分の調整をしてくれる五苓散ですが『潤す』タイプの生薬は構成されていません。
そのため水の偏りのない
- 皮膚の乾燥
- 口喝(口の渇き)
等には効果は薄いです。
舌などを診ると『赤くて乾燥している】
まとめ
利水剤の代表処方『五苓散』
体内での水の偏りを調整してくれるとても大事な漢方薬です。
簡単にまとめると
【よく効く症状】
- 水の偏りがある症状
- 暑気あたり
- 頭痛・めまい
- 二日酔い
- 胃腸障害
【注意すべき点】
- 潤す漢方薬でない
五苓散で改善する症状は大体、不養生が原因だよ。
飲食物の見直しも大事!