じゃあ、ちょっと解説してみよう!
みなさん、こんにちは!
漢方薬剤師の玄(@gen_kanpo)です。
梅雨から夏にかけて、「お腹を壊しやすい」「下痢が続く」といった相談が増えてきます。
しかし中医学(東洋医学)では、一口に「下痢」といってもその背景や原因はさまざま。
いつ起こるのか?
どんな便なのか?
どんなときに悪化するのか?
これらを手がかりに、体の内側で何が起こっているかを読み解くことができます。
今回は、中医学でよく取り上げられる「下痢の5つのタイプ」と、それぞれの原因・特徴・対処法について解説します。
- 下痢になりやすい
- 市販の下痢止めが効きにくい
- 特定の時間や場面で下痢をする
下痢について

中医学では、泥状や水のような下痢を「泄瀉(せっしゃ)」と呼びます。
一言に下痢といっても、その原因はさまざま。中医学では、主に以下の2つのタイプに分けて考えます。
【①体のエネルギー不足によるタイプ】
脾気虚(ひききょ)といわれる消化吸収力の低下や、冷え、加齢、慢性的な疲れなどが原因です。
胃腸が本来の働きを失っていて、水分や栄養をうまく処理できない状態です。
【②体に不要なものが入り込んだタイプ】
暴飲暴食や油っこいものの食べ過ぎ、冷たいものの摂りすぎ、アルコールの飲み過ぎなどが原因になります。
これらは消化しきれず“中焦(ちゅうしょう)”=胃腸にとどまり、湿や熱となって下痢を引き起こします。
どちらのタイプでも共通していえるのは、「脾胃(=消化吸収を担うシステム)」に負担がかかっているということ。
脾胃は中医学では“後天の本(こうてんのほん)”=生命活動のエネルギーを生み出す源
ともいわれるほど大切な器官です。
【脾気虚(ひききょ)】常に便がゆるい、慢性的なタイプ

「いつも便がゆるく、スッキリしない」
「疲れるとお腹がゆるくなる」
これは「脾気虚」による下痢の可能性があります。
中医学における「脾」は、消化吸収を担う臓腑。
気が不足すると、食べ物をしっかり消化して水分を吸収する力が落ち、便が常に稀薄になります。
【具体的にはこんな人】
- 胃腸が弱い
- 少食でも下痢になる
- 疲れやすい、倦怠感がある
【対処法】
- よく噛んで食べる
- 冷たいものを避け、胃腸に優しい食事を心掛ける
- 疲れをためない
- 脾を補う漢方(補中益気湯、参苓白朮散など)
【五更泄瀉(ごこうせっしゃ)】明け方に決まって起こる下痢

「毎朝3~5時頃になるとお腹がゆるくなる」
このタイプは「五更泄瀉」と呼ばれ、中医学では(脾)腎陽虚(じんようきょ)が原因とされます。
脾胃の虚弱が長引くと、やがて腎にも及び、体を温めて代謝を支える「腎の陽気」が不足してしまいます。
これが、夜明け前の冷えと結びついて下痢を引き起こします。
【具体的にはこんな人】
- 加齢により冷えやすくなった方
- 虚弱体質の方
- 冷たい飲食を好む方
【対処法】
- 温かいものを摂る
- 脾腎の陽を補う漢方(四神丸、附子理中湯など)
- 下腹部を温める生活習慣を心がける
【傷食】食べ過ぎによる急性下痢

「食べ過ぎた翌日に急にお腹が痛くなって下痢」
「悪臭の強い便が出る」
これは傷食(しょうしょく)=飲食の不摂生による下痢です。
特に脂っこいもの、甘いもの、冷たいものを大量に摂ったあとに腸内で食物停滞が起き、急激な下痢につながります。
【具体的にはこんな人】
- 食後すぐに腹痛と下痢が起こる
- 便がすっぱく腐敗臭のようなにおい
- お腹が張る
【対処法】
- 食事を控えて胃腸を休ませる
- 食積を解消する漢方(保和丸、啓脾湯)
【裏急後重(りきゅうこうじゅう)】出そうで出ない、肛門が重い不快感

「急に腹痛が起こり、便意があるのにスッキリ出ない」
「肛門が引っ張られるような違和感がある」
こうした症状は「裏急後重」と呼ばれ、大腸に「湿熱」がこもっている状態です。
感染性胃腸炎や暴飲暴食による炎症など、急性の下痢でも見られます。
【具体的にはこんな人】
- 胃腸炎にかかったとき
- 慢性的に脂っこいものや甘いものを多く食べる
- 夏場の不衛生な食事のあと
【対処法】
- 消化に良い食事を心がける
- 刺激物・脂ものを避ける
- 湿熱を取り除く漢方(葛根黄連黄芩湯、白頭翁湯など)
【肝脾不和(かんぴふわ)】ストレスや緊張による下痢

「会社や学校に行く前にお腹がゆるくなる」
「生理前になると下痢しやすい」
これは「肝脾不和」という状態で、ストレスや感情の起伏が胃腸に影響を与えて起こる下痢です。
中医学では、「肝」は気の巡りを主り、「脾胃(≒胃腸)」はその肝の力を借りて消化吸収をおこなっています。
肝がストレスで不調になると、脾の働きを抑えつけてしまい、消化不良や下痢につながるのです。
また、肝は生理を整える働きもしているため、生理前に下痢しやすい人はこの肝脾不和の可能性が高いです。
【具体的にはこんな人】
- ストレスを感じるとすぐにお腹を壊す
- 生理の前後で便がゆるくなる
- 緊張するとトイレが近くなる
【対処法】
- 深呼吸やリラックス法で肝の気を整える
- 香りのある食材(陳皮、しそ、みょうがなど)を活用
- 肝と脾を調和させる漢方(痛瀉要方、逍遙散など)
まとめ

下痢の「タイプ」を知って正しくケアしよう!
中医学では「同病異治」(どうびょういち)という考え方があります。
同じ「下痢」でも、原因や体質によって適切な対処法は異なります。
「なんとなく体調がすぐれない」「いつもと違う下痢が続く」
そんなときは、自分の体の状態=バランスの乱れを知ることが、正しいケアの第一歩になります。
季節の影響、食生活、ストレス……自分の生活を見直して、必要ならば漢方の専門家に相談するのもおすすめです。
中医学の知恵を日常に取り入れて、下痢に負けない体づくりをしていきましょう。
今回の内容を簡単にまとめると
1分でまとめ解説
動画で簡単に「下痢タイプと養生法」のポイントを復習したい方はこちらをご覧ください。
一概に下痢といっても「どんな時に?」「どんな症状?」でタイプが違うのね。
じゃあ。私はストレスを感じやすいからリラックスの為に散歩でもいくわ。