疲れすぎて、逆に寝れないんだよ。栄養ドリンクでも飲もうかな?
なら、栄養ドリンクよりも漢方薬が良いかもよ?
みなさん、こんにちは!
漢方薬剤師の玄(@gen_kanpo)です。
現代人は疲れている人が多いですよね。
そのようなときに活躍するのが「補気・補血」の生薬を含む漢方薬。
ウチの薬局でも毎日よく売れます。(みんな疲れてますね汗)
これらの漢方薬にも色々特徴があります。
今回は、慢性的な心身の疲れに使いやすい人参養栄湯(にんじんようえいとう)について紹介します。
疲れが気になる人は参考にしてみてくださいね。
- 疲れやすい
- 精神的にも疲れやすい
- 貧血気味
人参養栄湯ってどんな漢方薬?

簡単に説明すると、
人参養栄湯は「八珍湯(四物湯+四君子湯)」をベースにした、心身の疲れに有効な漢方薬です。
出典である『和剤局方』には、
長く疲れがたまって(積労虚損)、手足が重だるく、骨や筋肉が痛む。息切れしやすく、動くと苦しくなり、心も不安定で驚きやすくなる。下腹がつっぱり、腰や背中が痛み、口や喉が乾く。食欲もなく、もの悲しく落ち込みがちで、寝てばかりになる。
こうした状態が慢性的に続くと、次第に痩せて衰え、五臓の力も尽きてしまい、回復が難しくなる。
また、肺や大腸の虚弱にも使われ、咳や下痢、痰を吐くような症状に適応する
※超意訳&要約
このようなことが記されています。
つまり、疲労や虚弱を中心に、メンタルの不調や睡眠トラブルまで幅広く対応できる処方だとわかります。
構成生薬
人参(にんじん) | 体力や気力を補い、疲れやすい・食欲がないときに。 |
---|---|
黄耆(おうぎ) | 気を補い、免疫や体のバリア力を高める。 |
白朮(びゃくじゅつ) | 胃腸の働きを助け、体に必要なエネルギーを補う。 |
甘草(かんぞう) | 生薬同士の調和をとり、胃腸の働きを助ける。 |
当帰(とうき) | 血を補って巡らせ、冷えや肌・髪の乾燥にも。 |
芍薬(しゃくやく) | 血を補い、筋肉の緊張をやわらげる。 |
熟地黄(じゅくじおう) | 血と潤いを補い、ほてりや肌の乾燥を防ぐ。 |
陳皮(ちんぴ) | 気の巡りをよくして痰を去る、胃腸の調子を整える。 |
遠志(おんじ) | 心を落ち着け、記憶力や精神の安定をサポート。 |
五味子(ごみし) | 咳や汗を抑え、体力の消耗を防ぐ。 |
茯苓(ぶくりょう) | 余分な水分を排出し、胃腸を元気にする。 |
桂皮(けいひ) | 体を温め、血行をよくして冷えを改善する。 |
人参養栄湯は、「十全大補湯」から川芎(せんきゅう)を除き、代わりに五味子・陳皮・遠志を加えた処方です。
この組み替えにより、単なる気血の補いにとどまらず、呼吸器・消化器・メンタル面のケアまで対応できる構成となっています。
- 遠志(おんじ):心を安定させ、不眠や不安感など精神的な不調に
- 五味子(ごみし):咳や寝汗を抑え、肺を引き締める
- 陳皮(ちんぴ):気の巡りを整え、胃腸をサポートし、痰の改善にも
このように、人参養栄湯は気血を補う基本の力に加え、虚弱からくるさまざまな不調に幅広く対応する処方として設計されています。
日本の有名な浅田宗伯先生は
十全大補湯に比べれば、遠志(オンジ)・陳皮・五味子が入っているため、脾(消化吸収を主る)と肺(呼吸・免疫を主る)をしっかり支える力が強い。
この処方は、特に肺と大腸が虚弱で下痢しやすい状態を想定して作られていて、三因病(肺と大腸が弱る代表的な病気の一つ)に効果的。
つまり、多くの病気に幅広く使える処方として推奨される。
※超要約
と言っています。
よく使う症状

体力虚弱なものの次の諸症:病後・術後などの体力低下,疲労倦怠,食欲不振,ねあせ,手足の冷え,貧血
病後・術後の体力回復
急性期にも使えますが、慢性化した虚弱状態に特に有効。
東洋医学では手術は「血(けつ)」を大量に消耗するとされ、術後の疲労やメンタルの不調は「気血両虚」と捉えます。
生理後に精神不安や倦怠感を感じる方にも応用可能です。

寝汗・自汗
人参養栄湯は、気虚による汗トラブルにも良い処方です。
ただ、この汗には注意が必要。
特に「暑くもないのに寝汗が出る」タイプに。
黄耆と五味子の組み合わせで「気を補い、汗を引き締める」働きをします。
※暑がりで汗をかくタイプ(実熱傾向)には不向きです。
構成に「熟地黄(=地黄)」が入っているため、軽い陰虚に傾いた体質にはある程度対応可能です。
ただ、音性の生薬(経皮など)も多いため、本格的な陰虚体質には六味地黄丸などの方剤が向くことが多いです。

手足の冷え・貧血に
人参養栄湯は、補気・補血を基本とした処方で、特に血虚による手足の冷えや貧血傾向のある方に適しています。
桂皮の温める作用も加わることで、冷えによる不調を内側から改善していきます。
また、補血により肌や髪に栄養が行き届き、皮膚の乾燥やくすみ、髪のパサつきや抜け毛といったトラブルの改善にもつながります。
『勿誤薬室方函口訣』という本には「血を補えば毛髪も潤う」との記載があり、肌・髪の健やかさは血の充実と密接に関わることが書かれています。
注意すべき点

胃腸がめちゃくちゃ弱い人は注意!
人参養栄湯には当帰・地黄などの「胃腸に重たい補血薬」が含まれます。
理気薬・健胃薬(陳皮や茯苓など)もバランスよく含まれますが、極端に胃腸が弱い方は、四君子湯や六君子湯などからスタートした方が無難です。

まとめ

今回は、慢性疲労にも有効な「人参養栄湯(にんじんようえいとう)」について紹介しました。
慢性的な心身の疲れに悩んでいる方は、ぜひ検討してみてください。
今回の内容を簡単にまとめると
人参養栄湯は八珍湯がベースの「慢性疲労」に使う漢方薬!
【よく使う症状】
病後・術後の体力低下/疲労倦怠/食欲不振/寝汗/手足の冷え/貧血
【注意すべき点】
胃腸がとても弱い人は注意
どっちも大事にしましょうね。