でも、あんまりメジャーじゃないですよね。
我々で知名度を上げていかねばな!
みなさん、こんにちは!
漢方薬剤師の玄(@gen_kanpo)です。
六味丸という漢方薬はご存知でしょうか?
「八味丸は知ってるよ!」という人が多いと思います。
この六味丸は高齢者や小児にとって大事な漢方薬です。
漢方薬の専門店には必ずあります。
(八味丸じゃ悪化してしまう症状もあるから!)
そこで、今回は「八味丸じゃないよ!六味丸」という内容で解説してきます。
八味丸との違いなども解説していくので最後まで読んでいってくださいね!
- 尿のトラブルがある
- 年齢の悩みがある
- 子供の症状で悩みがある
六味丸ってどんな漢方薬?
簡単に説明すると
腎のエネルギーを補う基本処方です。
有名な八味丸から体を温める附子(ぶし)と桂皮(けいひ)を抜いたものが六味丸です。
六味丸に附子と桂皮を足して八味丸を作ったのね。
- 八味丸:出典は西暦200年前後に書かれた金匱要略
- 六味丸:出典は宋の時代(西暦1100年くらい)に書かれた小児薬証直訣
このように六味丸の方が後に作られた漢方薬です。
六味丸は出典の名前からもわかるように「小児」の薬として考案されました。
子供は稚陰稚陽といって陰陽が未発達。
陽気が旺盛なりやすく、すぐに熱が出たりするので温める桂皮と附子を抜いたとされます。
出典の小児薬証直訣には
肝腎の不足、真陰の毀損、精血の枯渇、疲労して痩せ劣り、足腰が重だるい(腰膝酸軟)、何もしないのに汗、寝汗、水が溢れ痰となり発熱と咳、めまい、ふらつき、耳鳴り、夢精、血便、口喝が激しく水を多く飲むも尿出が悪い、失血失音、舌が乾燥しのどが痛い、虚火牙痛、かかとが痛い、下半身の瘍傷など症を治す
※超意訳
五臓の腎に貯められる精は人体の基本物質とされます。
腎のエネルギーが低下するということは免疫や基礎的なエネルギーの低下と考えれます。
五臓の腎は「先天の本」と呼ばれ父母から受け継いだエネルギーをためておく臓です。
父母からのエネルギーをうまく受け継げないと「腎虚」になります。
六味丸はこのような先天的な小児の腎虚に対して作られた漢方薬とされています。
昔は妊婦さんの栄養状況や出産の設備が整っていなかったので子供の腎虚が多かったと考えられます。
現代でも飲食の乱れや夜更かしなど、生活の乱れが続くと腎虚になりやすく六味丸を使う場面が多いです。
腎は他にも
- 水を主る→水分代謝の要、特に排泄
- 歯・骨に関わる→腎虚になると骨がもろくなる
- その華は髪→脱毛、白髪に関わる
- 精を蔵す→生命エネルギーを蓄える
- 耳に通じる→腎虚になると耳鳴り、難聴になる
- 生殖に関与する→不妊治療などに関わる
※精は腎に貯められるので腎精と称される
この様なことに関与しています。
「骨がもろくなる」「耳が遠くなる」など加齢に伴う症状は腎虚に関わることが多いです。
また、腎精が不足すると陽気を制約することができなるので、体の熱感やほてりの症状も出やすくなります。
六味丸で補うことで相対的に熱が生みやすい状況(陰虚)を改善できます。
ここで八味丸を使ってしまうと、熱が助長して悪化する可能性があるので六味丸が活躍します。
六味丸と八味丸を両方用意しておく必要があるんじゃな。
構成生薬
≪生薬名≫ | ≪効能・効果≫ |
---|---|
(熟)地黄 | 養血 腎を補う |
山茱萸 | 肝腎を補う 精が漏れるのを防ぐ |
山薬 | 脾胃を助け腎を固める |
牡丹皮 | 活血涼血 肝熱を去る |
茯苓 | 脾胃を補い不要な水を去る |
沢瀉 | 不要な水と熱を去る |
名前の通り6種類の生薬で作られています。
特徴なのが「三瀉三補」という構成。
- 三瀉:茯苓、沢瀉、牡丹皮
- 三補:地黄、山茱萸、山薬
メインの生薬(君薬)は養血、補腎の(熟)地黄。(精血同源)
山茱萸は肝腎を補い、山薬は腎と脾胃を補い、共に精が漏れ出るのを防ぎます。
沢瀉は水分代謝を上げ、不要な熱を去る効果。
牡丹皮は活血涼血で肝の熱をさり、茯苓は健脾利水で地黄による胃腸の負担を下げ、山薬の補助します。
足りないものを補い、不要なものを瀉す組み合わせです。
生薬の分量的には「三補>三瀉」補うことがメインの漢方薬になります。
人も漢方薬も!
【六味丸は基本処方】
- 腎陰虚:知柏地黄丸(六味丸+知母+黄柏)
- 腎陽虚:八味丸(六味丸+桂皮(枝)+附子)
- 肝腎陰虚:杞菊地黄丸(六味丸+枸杞子+菊花)
このようにほかの処方に派生するの覚えておくと便利です。
よく使う症状
体力中等度以下で,疲れやすくて尿量減少又は多尿で,ときに手足のほてり,口渇があるものの次の諸症:排尿困難,残尿感,頻尿,むくみ,かゆみ,夜尿症,しびれ
厚生労働省 薬局製剤指針より引用
尿の悩み、浮腫み(むくみ)
水を主る腎が衰えると尿のトラブル、浮腫みの症状が出やすくなります。
腎は尿を「排泄」「留める」両方の働きをしているので、衰えると頻尿と排尿困難どちらも起こます。
具体的には腎虚による
- 高齢者の頻尿、多尿、排尿困難
- 小児の夜尿症、頻尿 など
これらの症状によく使います。
高齢者の場合は陽虚の可能性があるので、冷えが顕著なら八味丸を使うようにしましょう。(小児の陽虚は少ない)
急性の膀胱炎も同じような症状が出るので、痛みの有無や尿の濁りなどを確認し見極めて使いましょう。
水分代謝の出口である腎が衰えると不要な水が停滞し体は浮腫みます。
六味丸は特に虚証の浮腫みにも有効です。
具体的には浮腫む部分を押し込んだ時に、跡が残る、下半身が浮腫む場合は虚証の浮腫みの可能性があります。
体のほてり(手足のほてり、口渇)
腎精が低下すると陽気の亢進を抑えることができず体が熱を持ちます。(虚熱)
これを腎陰虚(腎虚+陰虚)といいます。
腎を補う六味丸はこの腎陰虚にも活用します。
陰陽で「夜は陰の時間」
腎虚の症状に加えて、寝ている間に手足をお布団から出したい、盗汗(寝汗)をかく人は腎陰虚の可能性あり。
更年期障害の代表的症状ホットフラッシュも腎陰虚が関与する人もいます。
体質にもよりますが、ホットフラッシュでよく使う加味逍遙散に六味丸を組み合わせると良い場合が多いです。。
女性ホルモンのバランスが崩れる更年期は腎陰虚が大いに関わってきます。
腎虚による症状(小児の体質改善・加齢による症状)
前述のとおり六味丸は小児の漢方薬として作られました。
小児の様々な体質改善に応用されます。
腎は骨・歯・脳髄に関与しており、腎虚だと「五遅五軟」と呼ばれる症状が出やすくなります。
- 歯遅:歯の成長が遅い
- 行遅:歩行するのが遅い
- 髪遅:髪の成長が遅い
- 立遅:立ち上がるのが遅い
- 語遅:話始めるのがの遅い
そのほかにも五軟(頭軟・項軟・手足(脚)軟(四肢軟)・肌肉軟・口軟)
頭蓋骨、四肢、肌、口周りの弱さが出るとされます。
小児のこれらの症状が気になれば検討しても良いかもしれません。
また、年齢を重ねると腎のエネルギーが低下します。
「男性は8の倍数 女性は7の倍数の歳で体が変化する」
こんなCM聞いたことありませんか?
これは腎のエネルギーが変化する年齢とされています。
男性は32歳、女性は28歳がピークでそこからは腎のエネルギーが低下するといわれています。
※古典・黄帝内経(こうていだいけい)の話なので現代では必ずじゃない。
加齢に伴う腰膝酸軟などの足腰の症状、骨の症状、尿の悩み、髪の悩みなどは六味丸をベースにした処方を検討します。
注意すべき点
確認しておきましょうね。
脾胃に重い処方
メイン生薬の地黄は脾胃(≒胃腸)に負担のかかる生薬です。
食欲不振や下痢などの症状がある人は単独で使用するのは控えた方がよいです。
- 腎は先天の本
- 脾は後天の本
無理して六味丸を服用するよりも脾胃を大事にすることで腎を補うことができます。
すぐに結果は出にくい場合がある
成長、発育、生殖を主る腎のエネルギーはすぐには補えません。
時に腰をすえて治療していく必要があります。
1回2回飲んで「効果がない!」とならず、焦らず飲んでいきましょう。
できたら月単位で効果を評価できると良いと思います。
まとめ
高齢者や小児によく使う六味丸について解説しました。
若者でも生活が乱れると腎虚になってしまうので覚えておきましょう。
今回の内容をまとめると
六味丸は補腎の基礎薬
【よく使う症状】
- 尿のトラブル
- 体のほてり
- 腎虚の症状(小児の体質改善・加齢による症状)
【注意すべき点】
- 脾胃に重い処方
- すぐに結果が出ない場合がある
もっと有名になると良いな。
我々でもっと啓蒙活動していきましょう。