イライラが原因?
それもあるけど、最近は胃腸の調子も悪く血圧も高いの。
なら釣藤散などが良いかもね。
みなさん、こんにちは!
漢方薬剤師の玄(@gen_kanpo)です。
頭痛のお悩みは一年を通して多い相談です。
中には血圧が上がってきてしまう人もいます。
そんな時に選択肢に上がる漢方薬が「釣藤散(ちょうとうさん)」です。
日本人の体質合った良い漢方薬なのですが「高血圧」というワードが一人歩きしているようにも感じます。
そこで今回は「高血圧というワードだけで使われがち:釣藤散」について解説していきます。
- 頭痛が慢性化している
- 血圧が高め
- 胃腸の調子が悪い
釣藤散ってどんな漢方薬?
簡単に説明すると
- 肝陽化風(かんようかふう)
- 脾胃気虚(ひいききょ)
- 風痰上擾(ふうたんじょうじょう)
これらが組み合わさった頭痛や高血圧症状に使う漢方薬です。
この漢方薬はちょっと複雑なんだ。解説していくね。
まずは【肝陽化風】という状態。
肝は五行説では木に属します。
同じ木に属するのは風。
①ストレスなどで肝の陰液が不足すると、肝陽を抑えることができなくなり、体内を上昇し体がほてってくる。
この状態が続くと体内に風が吹くとされます。これを内風と言います。※熱は風を生む
風は動かす性質。
めまいやふらつきの症状が出やすくなります。
そして【脾胃気虚】
脾胃は飲食物から体に必要な気血津液を作るエネルギー工場です。
暴飲暴食などで脾胃が弱るとエネルギーがうまく作れず不用品ができます。
②脾胃が弱く痰湿(体に不要なベタベタ)を生み出す。
この①②が相互に悪さをする。
※どちらが先でも起こりうる
①内風と②痰湿が重なり、上に昇り頭部で悪さするのが③【風痰上擾】
この状態によく使うのが釣藤散という漢方薬です。
要点をまとめると
胃腸があまり強くないタイプの、
- イライラ
- 虚熱による上半身(特に頭部)のほてり
- 口の渇き
- 不眠など
これらが随伴するような頭痛や高血圧症状に有効です。
出典の南宋時代に書かれたとされる本事方には、
肝に邪気が盛んのために起こった頭暈と神経症を治し,頭と目を清する
※超意訳
このようにシンプルに書かれています。
ちなみに…
似た処方に半夏白朮天麻湯があります。
半夏白朮天麻湯と違いは肝の症状があるかないか。
雨天時や梅雨時期に悪化しより痰湿+脾虚の症状が強ければ半夏白朮天麻湯
性格的にはクヨクヨしやすい人(脾胃の感情は思)
熱症状+肝鬱の症状があるようなら釣藤散の方が無難化と思います。
性格的にはイライラしやすい人(肝の感情は怒)
構成生薬
≪生薬名≫ | ≪効能・効果≫ |
---|---|
釣藤鈎 | ※君薬 平肝熄風:肝気を平にする |
防風 | 祛風 |
菊花 | 明目・平肝作用や祛風・清熱作用 |
石膏 | 清熱瀉火:上がった熱を清める |
半夏 | 化痰 |
陳皮 | 化痰 理気 |
人参 | 脾胃の機能を高める |
麦門冬 | 陰を補う 他の生薬の燥性を和らげる |
陳皮 | 胃腸の動きを改善 半夏の補助(化痰) |
茯苓 | 健脾利湿 下向きの方向性 |
生姜 | 脾胃を温め吐き気を止める |
甘草 | 脾胃を高める、薬性の調和 |
メインの生薬は釣藤鈎です。
亢進した肝の陽気を沈め、内風を去る効果があります。
この効能をもった生薬を平肝熄風薬といいます。
防風は釣藤鈎の補助。
半夏、陳皮、茯苓、生姜、甘草は不要なベタベタ(痰湿)を去る二陳湯の構成。
ここに人参が加わるので六君子湯(−白朮)に近い処方が含まれます。
六君子湯は日本人の体質にあった胃腸の漢方薬です。
脾胃の機能を高めてくれます。
石膏と菊花は亢進した肝陽の熱を去るために配合されています。
全体的に乾燥させる生薬が多いので麦門冬を入れることで燥性を和らげていると考えられています。
でも、胃腸が弱く、ストレスが多い日本人には有効な漢方薬だよ。
よく使う症状
体力中等度で、慢性に経過する頭痛、めまい、肩こりなどがあるものの次の諸症:
慢性頭痛、神経症、高血圧の傾向のあるもの
厚生労働省 薬局製剤指針より引用
六君子湯に近い構成のため胃腸が弱いタイプという前提を忘れないようにしましょう。
頭痛、肩こり、めまい
これらは肝陽化風の症状です。
特に顔がのぼせたり、イライラしやすい傾向の人に有効です。
ベースに脾気虚があるタイプに有効なので「痛い時だけ飲む」というよりも、継続して使用していくと良い思います。
他にも頭部の症状として耳鳴りなどに応用されます。
高血圧傾向
ココだけを切り取ると語弊があります。
釣藤散が有効な高血圧は「痰湿+肝陽上亢」タイプ。
顔などがのぼせ、舌にベタベタした苔がつく人は検討しても良いと思います。
痰湿は不要な水分のベタベタ。
脂肪やコレステロールもその一種と考えられます。
注意すべき点
体を冷やす処方
石膏・菊花など体の熱を去る生薬を含みます。
極単に冷えるタイプの人は注意しましょう。
とはいえ、胃腸が弱いタイプに作られた処方なので気にし過ぎなくてもOKです。
服用して冷えるようなら量を減らしたり、他の処方に変えるようにしましょう。
どんな高血圧でも良いわけじゃない
これは漢方あるある。
効能効果の「高血圧」部分だけを切り取ってしまうと大きな失敗をします。
高血圧には気滞や瘀血、痰湿なども関与してきます。
キチンと自信のタイプに合ったものを服用できるようにしましょう。
まとめ
今回は誤解されやすい漢方薬「釣藤散」について解説してきました。
最近はドラッグストアなどでも並んでいる漢方薬なので覚えておくと便利です。
今回の内容を簡単にまとめると
釣藤散は脾胃の虚証があり肝陽が亢進しているタイプの頭痛やめまいに有効な漢方薬
【よく使う症状】
- 頭痛、めまい、ふらつき
- 高血圧症状
【注意すべき点】
- 体を冷やす処方
- どんな高血圧でも良いわけじゃない
少し釣藤散を続けてみようかしら!
あと、肝陽を抑えるには肝陰の補充が大事です。