トイレ(おしっこ)の調子が悪いのよー☆
何か思い当たるふしがある?
あと、火照ったり、口が乾いたりする。
それなら清心蓮子飲が良いかもね。
みなさん、こんにちは!
漢方薬剤師の玄(@gen_kanpo)です。
頻尿や排尿障害での相談で有名なのが八味地黄丸です。
この漢方薬は膀胱を管轄する五臓の腎(陽)を補う漢方薬です。
腎の力は年齢と共に低下するため、高齢者の頻尿に良く使います。
でも、頻尿になるのは年齢だけの問題ではありません。
疲れや精神的なストレスで悪化するタイプもあります。
そんな時に活躍するのが清心蓮子飲(せいしんれんしいん)。
最近では、ドラッグストアでも清心蓮子飲の製品を見かけます。
この清心蓮子飲は特徴を掴んでいないと、効果が薄い漢方薬の代表だと思っています。
そこで、今回は「きちんと体質を診ないと効果薄い漢方薬:清心蓮子飲」特徴について解説していこうかと思います。
- ストレス、疲れが気になる
- 体が乾燥傾向
- 頻尿、排尿が気になる
清心蓮子飲ってどんな漢方薬?
簡単に説明すると
体の気と陰を補うことで心(しん)の火(熱)を抑える漢方薬です。
清心蓮子飲が効くトイレの悩みは以下のような状態の人です。
- 胃腸の不調、過労やストレスなどで気や陰を消耗。
- 精神の中枢の心(しん)に火がつき(心火上炎)、心腎不交(心火の亢進・腎水の不足)になる。
- 精神の中枢である心に火がつくことで不眠、多夢、焦燥感(脳は興奮状態)
- 陰虚のため熱感、口渇、喉の乾燥
- 気虚のため、疲れやすい、元気が出ない(体は疲れてる)
- 心腎不交+小腸の「清濁必別」が失調→排尿困難、遺精がおこる
中医学の心(しん)とは精神活動の中枢です。
脳の機能と関係が深く、心熱とは交感神経の異常な亢進とも考えることができます。
清心蓮子飲が得意なトイレのトラブルは、過労やストレスが慢性化することで脳が興奮状態になり排尿機能に不具合が出ている状態です。
この清心蓮子飲は胃腸の疲れやストレスで自律神経が乱れ、排尿障害や不眠、火照りに有効な漢方薬です。
ポイントとしては精神の中枢である五臓の心の熱を去り、気と陰を補うところ
トイレの悩みだけの漢方薬じゃないのね!
出典の和剤局方には以下のように書かれています。
心中に常にわずらわしさ、イライラがあり、思慮労力に困り、憂愁し抑うつ、小便が白く濁り、あるいは尿中に混濁物があり、夢遊病、射精で痛み、便に血が混じる、あるいは酒色過度に困り、上が旺盛で下が虚し、心火が炎上、肺金克(肺と心は相克の関係)を受け、口舌は乾燥し、消渇をなし、不安感、四肢の重ダルさ、男子は尿のトラブル、婦人の帯下(おりもの)赤白、及び病後に気が収斂せず、腸は外に浮き、五心煩熱(手足+心部が熱を持つ)するものを去る。
薬性は温平 冷やしもせず、温めもせず 常服すれば心を清め神を養う 精を秘し、虚を補う 脾胃を滋潤し、気血を調順する。
※超意訳
「薬性は温平」となっていますが、少し冷やす構成となっています。
ただ、原典では水で冷やして服用することになっているところを考えても「体の熱を去る」ことを考えて作られた処方と言えます。
気陰両虚の状況なのでベースが疲労感と体の弱い熱症状(虚熱)を感じる人に有効な漢方薬です。
一般的な効能効果は残尿感や頻尿、排尿痛ですが、固執しなくても良いと考えます。
使い方によっては皮膚、メンタルなどにかなり応用範囲が広い構成になっている思います。
構成生薬
≪生薬名≫ | ≪効能・効果≫ |
---|---|
蓮子 | メイン生薬 心の熱を去り、腎を養う 体液の漏れを防ぐ |
黄芩 | 蓮子の補助 清熱瀉火 |
地骨皮 | 蓮子の補助 清熱涼血 |
麦門冬 | 陰を補う 体液を滋潤する |
人参 | 補気 津液も補う |
黄耆 | 補気 体の機能を促進 |
茯苓 | 利水 気持ちを落ち着かせる(安神) |
車前子 | 利水 |
(炙)甘草 | 補気 体を潤す 薬性の調和 |
全体的に心の熱(火)を冷まし、気と陰を補う構成になっています。
メインの生薬は蓮子(れんし)、ハスの種子です。
心(しん)と腎を養い体から体液が漏れるのを防いでくれます。
陰を補う処方は胃腸に重い傾向がありますが、人参、茯苓、炙甘草は四君子湯の構成生薬(−白朮)であり、脾胃が弱い人(脾気虚)でも使いやすいです。
また、胃腸の負担が多い地黄を含まないので六味丸などで胃もたれする人にも使いやすいです。
よく使う症状
体力中等度以下で,胃腸が弱く,全身倦怠感があり,口や舌が乾き,尿が出しぶるものの次の諸症:残尿感,頻尿,排尿痛,尿のにごり,排尿困難,こしけ(おりもの)
厚生労働省 薬局製剤指針より引用
疲れやすく、口渇がある
これは気陰両虚の症状。
清心蓮子飲は気と陰を補う処方となっているので疲れやすく、熱症状がある場合に有効です。
この時の熱症状は虚熱なので、高熱や喉の痛みのような実熱ではありません。
お布団に入るとじんわり暑い、粘膜の乾燥などの症状です。
陰虚になるとイライラしたり、睡眠の質が低下するので寝つきが悪かったり、中途覚醒する人にも有効です。
※イライラが顕著な場合は四逆散などの方が有効
四君子湯に近い処方構成も含まれるので元気がない、疲れやすい、無気力、手足がだるい、食欲不振などの症候を伴う人でも使いやすいです。
残尿感、頻尿、排尿痛
神経質体質の排尿トラブルに使うことが多いです。
脳が興奮状態になり自律神経が緊張、交感神経が過度に優勢となり膀胱の緊張と弛緩が失調するため、残尿感や排尿障害が起こりやすくなります。
排尿痛でも使用しますが、激痛よりも弱々しい痛みに使用します。
細菌感染ではない原因不明の膀胱炎「間質性膀胱炎」ではとても活躍します。
間質性膀胱炎は気と陰が不足しやすい40~70歳代の女性に多い傾向です。
「尿の悩みで神経質になる」「気になるから更に尿のトラブルが起きる」
このような悪い流れのときに検討します。
注意すべき点
体の気と陰を補う体に優しいタイプの清心蓮子飲ですが、注意点もあります。
体の熱を去る処方
方向としては体を冷やすタイプの漢方薬です。
胃腸が冷えやすい、極端に弱いタイプの人は単独での使用は注意しましょう。
清心蓮子飲は虚熱に対する漢方薬なので強く冷やすことは無いので気にしすぎなくてもOK.
どんな排尿痛や残尿感に使えるわけじゃない
散々説明してきた通り、清心蓮子飲に有効なトイレのトラブルはストレス、神経過敏など緊張性の排尿障害。
- 腎機能が低下→八味丸、六味丸
- 冷えて頻尿→牛車腎気丸、八味丸
- 急性の膀胱炎→猪苓湯、竜胆瀉肝湯
上記のような状況ではあまり効果がない事があります。
排尿痛や残尿感は「膀胱炎」でも起こる可能性があります。
膀胱炎は何らかの原因で膀胱が炎症をしている状態。
急性の膀胱炎の原因は主に細菌感染が挙げられます。
この場合は清心蓮子飲よりも竜胆瀉肝湯や猪苓湯が適しています。
※細菌感染が原因ではない間質性膀胱炎では清心蓮子飲が活躍する場面が多いです。
また、冬など冷えて頻尿になるタイプは八味丸や牛車腎気丸のほうが適しています。
虚熱を去る清心蓮子飲は適していません。
まとめ
今回は気と陰を補う漢方薬「清心蓮子飲」を解説しました。
応用範囲が広くちょっと複雑な漢方薬ですが覚えておくととても便利です。
今回の内容を簡単にまとめると
清心蓮子飲は気と陰を補い心火を抑える漢方薬
【よく使う症状】
- 疲れやすく口渇がある
- 残尿感、頻尿、排尿痛
【注意すべき点】
- 体の熱を去る処方
- どんな尿障害にも良いわけじゃない
なんだか体も楽になった気がする!
異病同治(いびょうどうち)だね!
体調良くなったから今日は徹夜するぞー☆
それ一番ダメなやつや!