私はよく効いたわよ!
みなさん、こんにちは!
漢方薬剤師の玄(@gen_kanpo)です。
頭痛や目眩(めまい)には様々な原因があります。
近年多いのは、気圧の変動、雨天時に悪化するタイプ。
この時に活躍するのが「半夏白朮天麻湯(はんげびゃくじゅつてんまとう)」です。
日本人の体質にあった素晴らしい漢方薬ですが、どんな頭痛やめまいにでも効果があるわけではありません。
そこで、今回は頭痛やめまいに活躍する半夏白朮天麻湯について解説していこうと思います。
- 雨が降ると体調が悪い
- 頭痛やめまいがある
- 胃腸が弱い
半夏白朮天麻湯ってどんな漢方薬?
簡単に説明すると
元々、胃腸が弱いタイプで体に水の滞りが起きている時の頭痛やめまいによく使う漢方薬です。
この処方には、胃腸の機能を改善する六君子湯(甘草を除く)が含まれています。
胃腸が弱く、冷たい飲食物が好きで、高温多湿な環境で生活している日本人に多いタイプの漢方薬です。
元々、胃腸が弱かったり、食生活が乱れたり、ストレスが多いことで脾気虚(消化器系の機能低下)になります。
脾気虚では、全身の気の巡りを調整する肝の陰(落ち着かせる性質)を滋養できなくなり、肝気が暴走し、肝風内動が起こり、めまいや頭痛につながることがあります。
また、脾胃(≒胃腸)は体内のエネルギー(気血津液)の生成と水分代謝の調整を担っています。
中医学では、水分代謝は脾で受け入れ吸収、肺で全身に巡らせ、腎で排泄すると考えられています。
脾胃は「運化を主る」といわれ水分代謝の入り口です。
脾胃に水がたまると体が浮腫み、下痢や吐き気が出ることがあります。
これは、水分代謝が悪い状態が続くと発生するネバネバした痰飲(たんいん)が原因とされます。
痰飲+脾気虚による肝風内動=頭痛やめまい
このタイプの頭痛やめまいは、気圧の低下などの天候の影響を受けやすく、痛みは帽子をかぶったような感じで重く、酸痛(重だるい痛み)を伴い、吐き気もしばしば出ます。
この時に活躍するのが半夏白朮天麻湯です。
半夏白朮天麻湯は出典がいくつかあり、日本の処方で採用されているのは、有名な補中益気湯を作った李東垣(りとうえん)の脾胃論が出典です。
李東垣は補土派と呼ばれ、胃腸をとても大事にする流派の人です。
※「脾胃」は五行説で「土」に属する
条文は少し長いので超意訳&短縮すると
眼の前が暗く頭がふらつき、気持ち悪い、精神的にも不調で体は山のように重い。
手足が冷たく、横になることができない。
頭痛が激しい時は脾の経絡に痰が詰まっているので半夏でないと治療できない。
眼の前が暗く頭がふらつくのは天麻でないと治療できない。
このようなことが書いてあります。
大前提として「元々、胃腸が弱く…」という部分があるので胃腸が弱い人の頭痛やめまいに対して有効なことがわかります。
構成生薬
≪生薬名≫ | ≪効能・効果≫ |
---|---|
半夏 | 水分代謝を促す 痰(ネバネバを去る) |
白朮、蒼朮 | 水分代謝を促す(白朮は胃腸を強める作用あり) |
茯苓 | 胃腸を強め水分代謝を促す |
沢瀉 | 腎、膀胱の熱を去り水分代謝を促す |
天麻 | 平肝 鎮静、鎮痙作用 |
人参 | 胃腸を強め消化能力を改善 |
黄耆 | 胃腸を強める |
乾姜 | 胃腸を温める 血行促進 |
陳皮 | 胃腸の動きを改善 半夏の補助(化痰) |
黄柏 | 温性生薬の調整 腎、膀胱の熱を去る |
麦芽、神麹 | 消化を助ける |
生姜 | 胃腸を温め吐き気を止める |
メイン生薬は鎮静、鎮痙作用のある天麻です。
平肝側風薬といって肝の乱れによる内風を鎮める効果があります。
メインは天麻ですが、全体としては「不要な水抜く」「胃腸を元気にする」「消化を助ける」生薬で構成されています。
痰飲に対しての基本処方である二陳湯(半夏・陳皮・茯苓・甘草)、脾胃を元気にする四君子湯(人参、白朮、茯苓、−甘草)が構成生薬の中に含まれます。
※二陳湯+四君子湯=六君子湯
甘草が含まれないのは「潤す」性質がを抜きたかったらと考えられます。
同じような理由で水の偏在を解消する五苓散にも甘草は含まれません。
標:表面的に出ている症状→痰飲が原因のめまい、頭痛
本:原因となっている症状→脾気虚
標と本のどちらも治療できるように構成されています。
よく使う症状
体力中等度以下で,胃腸が弱く下肢が冷えるものの次の諸症:頭痛,頭重,立ちくらみ,めまい,蓄膿症(副鼻腔炎)
厚生労働省 薬局製剤指針より引用
めまい、頭痛
メインで使う症状です。
半夏白朮天麻湯が効果がある頭痛、めまいは、
「普段から胃腸の調子が悪い+不要な水が溜まった」タイプです。
特に「普段から胃腸が弱い」というのはポイントです。
普段から疲れやすかったり、すぐに下痢や食欲不振が出やすい人が頭痛やめまいが出たら検討してみましょう。
個人的には「ぐるぐる回転性のめまい」「吐き気をともなう頭痛(めまい)」の時は選択候補にあげます。
体質があえばメニエール病などにも応用されます。
このタイプは舌の白い苔がべったり付いていることが多いので気になる人は鏡でチェックしてみましょう。
また、体内に不要な水があると、外の湿度に影響を受けやすくなるため、低気圧や梅雨時期に悪化するタイプに有効です。
注意すべき点
日本人の体質にあった使いやすい漢方薬ですが、どんな症状にも使って良いわけではありません。
どんな頭痛でも良いわけじゃない。
当然ながらどんな頭痛やめまいにも有効ではありません。
めまいや頭痛の多くは「何かが原因で頭部に気血がめぐらない」時に起こりやすいです。
血(けつ)が滞るタイプ、足りないタイプもいれば、気が滞るタイプもいます。
半夏白朮天麻湯は脾気虚(エネルギー不足)と不要な水です。
「痛み方は?」
「どんな時に症状が出るのか?」
これらをチェックして自分に会った漢方薬を選ぶようにしましょう。
体を乾燥させる構成
半夏白朮天麻湯は体の不要な水を抜く生薬が多く構成されています。
これらの生薬は体の潤いも抜いてしまう場合があるので、血虚、陰虚など潤いが不足するタイプは注意しましょう。
具体的には、
- 体が乾燥しやすい
- 爪や髪が弱い
- 体がほてりやすい
血虚や陰虚の頭痛やめまいというのも存在します。
体質にあっていないと逆効果です。
まとめ
今回は頭痛やめまいよく使う「半夏白朮天麻湯」について解説しました。
梅雨時期や雨天時に体調が悪い人は参考にしてみて下さい。
今回の内容をまとめると,
半夏白朮天麻湯は胃腸が弱く不要な水が溜まっているタイプの頭痛、めまいに良く効く漢方薬。
【注意すべき点】
- どんな頭痛やめまいにでも効果あるわけではない
- 体を乾燥させる漢方薬
「毎日飲んだくれて」胃腸に不要な水が溜まっている黄老師には良い漢方薬なのね。
胃腸が弱いのに「毎日飲んだくれて」更に胃腸が弱っているタイプには良いよ。(熱症状が出てたらダメ)