僕の体質には合わないみたいで、頭痛がしてきちゃうんだ!
苓甘姜味辛夏仁湯(りょうかんきょうみしんげにんとう)がいいよ!
僕に効くのかな?
みなさん、こんにちは!
漢方薬剤師の玄(@gen_kanpo)です。
春に気になる症状といえば「花粉症」ですよね。
最近では温暖化の影響もあり、症状が現れる時期が早まっているようです。
漢方薬を使った花粉症の治療は、「眠くならない」「口が乾きにくい」といったメリットがあり、私の薬局でも多くのご相談をいただいています。
しかし、漢方薬は体質に合ったものを選ぶことが大切です。
体質に合わないものを選んでしまうと、効果が十分に得られないだけでなく、逆に不快な症状を招くこともあります。
特に、発汗を促すタイプの漢方薬が苦手な方には、花粉症に使われる「〇〇湯」が適さない場合があります。
そこで注目したいのが、今回ご紹介する「苓甘姜味辛夏仁湯(りょうかんきょうみしんげにんとう)」です。
少し舌を噛みそうな名前ですが、この漢方薬は覚えておくと春先とても便利ですよ!
- 花粉症がつらい
- 花粉症の漢方薬で熱感が強い
- 水分代謝が悪い
苓甘姜味辛夏仁湯ってどんな漢方薬?
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簡単に説明すると
体が虚弱で、不要な水分が体にたまりやすい人に向けた咳や気管支喘息、鼻水のための漢方薬です。
身体の水分代謝が乱れる「水飲(すいん)」に用いられる処方で、特に「寒飲(かんいん)」と呼ばれる冷えによるサラサラした分泌物が多い場合に効果を発揮します。
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小青竜湯と苓甘姜味辛夏仁湯の違い
苓甘姜味辛夏仁湯は、「小青竜湯の虚証版」とも言われる漢方薬です。
小青竜湯は、発汗と利水作用を持つ生薬が特徴で、体の冷えや余分な水分を短期間でスッキリ取り除く漢方薬ですが、虚弱な方には体への負担が大きいことがあります。
一方、苓甘姜味辛夏仁湯は、発汗作用を抑え、利水作用で体の水分代謝を促進する処方。
小青竜湯では負担がかかってしまうような体質の人に適しています。
出典の『金匱要略(きんきようりゃく)』には次のように記されています。
「(苓甘五味甘草湯をベースに)余分な水分がたまって咳が止まらず、むくみが出ている場合は、杏仁を加えて処方します。ただし、麻黄を使うと血虚の人には痺れなどの副作用が出るため使用しません。
この場合、苓甘五味甘草湯に乾姜、細辛、半夏、杏仁を加えた処方(苓甘姜味辛夏仁湯)を用います。
※超意訳
苓甘姜味辛夏仁湯が向いている人
この処方は、いわゆる「小青竜湯の裏の薬」とも言われています。咳やアレルギー性鼻炎などで小青竜湯を使いたいけれど、頭痛や逆上せ、胃腸障害を引き起こしやすい方に適しています。
また、以下のような症状や体質の方にも検討されます
- 他の麻黄剤(葛根湯など)を服用すると、のぼせ・動悸・手足の痺れなどの副作用が出たことがある
- 冷えによるサラサラの鼻水や咳が慢性化
- 虚弱で水分代謝が悪い
構成生薬
≪生薬名≫ | ≪効能・効果≫ |
---|---|
茯苓 | 水湿を排出し、脾を補う。体内の余分な水分を解消 |
甘草 | 薬の作用を調和し、他の薬の効果を引き出す。抗炎症ぐ |
乾姜 | 温め、寒邪を追い払う |
五味子 | 肺を補い、咳や喘息を緩和 |
細辛 | 寒邪を取り除き、気血をめぐらす。鼻水・鼻詰まりに |
半夏 | 痰湿を取り除き、咳を止める |
杏仁 | 咳を止め、痰を排出 |
小青竜湯から桂枝、麻黄、芍薬が抜かれ、茯苓と杏仁が加わったものが苓甘姜味辛夏仁湯です。
構成生薬のうち、甘草、乾姜、細辛、五味子、半夏は小青竜湯と共通しています。
小青竜湯の麻黄、桂皮(けいひ)、芍薬(しゃくやく)に代わり、茯苓と杏仁が加わっています。
よく使う症状
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貧血、冷え症で喘鳴を伴う喀痰の多い咳嗽があるもの。
気管支炎、気管支喘息、心臓衰弱、腎臓病
ツムラ苓甘姜味辛夏仁湯の効能効果より引用
薄い痰の咳
苓甘姜味辛夏仁湯は水分代謝が悪く薄い痰がたくさん出る咳に有効な漢方薬です。
これはカゼや季節の変わり目に見られる、寒気があり、湿が原因で起こる痰が絡む咳です。
特に痰が薄くサラサラしていて、喉に詰まるような感じがすることが特徴です。
花粉症・アレルギー性鼻炎
苓甘姜味辛夏仁湯が一番活躍するのはアレルギー性鼻炎や花粉症です。
季節の変わり目に花粉やアレルゲンが原因で引き起こされる鼻水、くしゃみ、鼻づまり、喉の痛みなどに活躍します。
特に冷えや湿気が体内に滞ることが原因となって症状が悪化する場合に、苓甘姜味辛夏仁湯が効果的です。
最近は花粉の飛散量が年々多く、一年を通してあらゆるアレルゲンが増加しており、慢性鼻炎に悩む方も少なくありません。
そんな中、長期服用が向かない小青竜湯よりも、苓甘姜味辛夏仁湯が活躍する場面が多くなっています。
注意すべき点
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温め、乾燥させる処方
苓甘姜味辛夏仁湯は乾燥した咳には不向きの処方です。
苓甘姜味辛夏仁湯は湿気や冷えが原因で出る咳に効果がありますが、乾燥した咳や肺の乾燥による咳には適していません。
乾燥した咳には、麦門冬湯や滋陰降火湯など、肺を潤し、乾燥を改善する処方が効果的です。
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また、苓甘姜味辛夏仁湯は温める処方です。
乾姜や細辛が体を温め、寒気や湿を取り除きますが、体が乾燥し逆上せるタイプ(陰虚タイプ)の人の使用は注意が必要です。
寒気があるなら小青竜湯
小青竜湯は強い解表作用を持ち、桂枝や麻黄を使って風寒を体外に追い出すことで、寒気や湿が原因の症状を改善します。
これにより、風寒表証(寒さの邪気がまだ体表面にいる初期)のカゼや鼻づまり、悪寒に効果的です。
発汗を促進し、寒気を解消するため、体力がある場合に特に効果を発揮します。
一方、苓甘姜味辛夏仁湯は、発汗作用が少なく、茯苓で水分代謝を促進し、体内の冷えや湿を取り除きます。
体力が弱っていて発汗を避けたい場合に適しており、風寒を解表する小青竜湯とは異なり、体内の水分バランスを整える方向で作用します。
悪寒があり、無汗の場合は小青竜湯のほうが素早く風寒と湿を追い出してくれます。
まとめ
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今回は花粉症の季節に活躍する苓甘姜味辛夏仁湯について解説してきました。
今回の内容をまとめると
苓甘姜味辛夏仁湯は麻黄を含まないサラサラ鼻水、痰が多い咳に有効な漢方薬
【よく使う症状】
- 薄い痰がたくさん出る咳
- 花粉症、アレルギー性鼻炎
【注意すべき点】
- 温める・乾燥させる
- 寒気がないなら小青竜湯
【小青竜湯との違い】
- 小青竜湯: 麻黄(まおう)、桂皮(けいひ)など発汗作用が強い
- 苓甘姜味辛夏仁湯: 茯苓と杏仁を使い、温める作用を控えめにして、呼吸器系や水分代謝に特化
苓甘姜味辛夏仁湯なら頭痛も起きなくて鼻水も止まったよ!
でも、この処方が効くということは、普段から水分代謝が悪い可能性があるよ。
胃腸に負担をかけたり、冷たい飲み物の飲み過ぎは注意しましょうね。