みなさん、こんにちは!
漢方薬剤師の玄(@gen_kanpo)です。
春はニキビや慢性鼻炎の相談が増えます。(特に冬に暴飲暴食をした人)
そのようなときに活躍するのが「清熱解毒薬」を含む漢方薬。
これらの漢方薬には、急性症状に使うものと慢性症状に使うものがあります。
今回は、慢性病に使いやすい 荊芥連翹湯(けいがいれんぎょうとう)について紹介します。
- ニキビができやすい
- 副鼻腔炎になりやすい
- 喉が痛くなりやすい
荊芥連翹湯ってどんな漢方薬?

簡単に説明すると
荊芥連翹湯は 温清飲(うんせいいん) をベースにした、慢性炎症に用いる漢方薬です。
出典の『万病回春』には、
「両耳腫痛スル者ヲ治ス、腎経風熱有ルナリ」(中耳炎などに)
「鼻淵(副鼻腔炎)、胆熱ヲ脳ニ移スヲ治スルナリ」(副鼻腔炎に)
と記されており、本来は 副鼻腔炎や中耳炎に使われていた処方です。
現在の荊芥連翹湯は、一貫堂医学を継承・発展させた 森道伯(もりどうはく)先生が改良したものとされています。
また、一貫堂医学では「解毒証」に使う処方とされ、青年期の解毒証体質の人に適応されます。
一貫堂医学 では、体質を大きく3つに分類します。
- 瘀血証(おけつしょう):血行が悪く、冷えや痛みが出やすい
- 臓毒証(ぞうどくしょう):内臓の機能が低下し、体調不良が続きやすい
- 解毒証(げどくしょう):体内に炎症が生じやすく、ニキビや皮膚炎になりやすい
荊芥連翹湯は 青年期の解毒証体質 に適応される処方です。
また、
- 柴胡清肝湯(さいこせいかんとう):幼年期の解毒証
- 竜胆瀉肝湯(りゅうたんしゃかんとう):成年期の解毒証
といった漢方薬も併用されることがあります。
荊芥連翹湯は、清熱解毒と養血を組み合わせた温清飲(黄連解毒湯+四物湯)がベースの漢方薬です。
温清飲に去風薬や排膿薬を強化しており、痒みや化膿性湿疹にも使いやすい処方です。

構成生薬
≪生薬名≫ | ≪効能・効果≫ |
---|---|
黄連、黄柏、黄芩、山梔子 | 清熱解毒 清熱燥湿(黄連解毒湯) |
当帰、芍薬、地黄、川芎 | 補血 血分(体の奥)まで清熱薬を届ける(四物湯) |
連翹 | 清熱解毒+排膿作用 |
荊芥 | マイルドな辛温解表薬 清熱薬と組み合わせることで抗炎症のバランスを取る |
防風・白芷 | マイルドな辛温解表薬 鎮痛(防風)通鼻(白芷) |
薄荷・柴胡 | 辛涼解表薬 発散・理気・咽喉の炎症軽減 |
桔梗、枳実 | 排膿 膿を出しやすくする(排膿散及湯:桔梗・枳実・甘草・芍薬) |
甘草 | 炎症を和らげ、他の生薬の調和をとる |
荊芥連翹湯は、「温清飲」+「排膿散及湯」+「去風・排膿薬」 を組み合わせた処方で、慢性症状に対して清熱解毒・養血・排膿の効果を発揮します。
ベースとなる温清飲(黄連解毒湯+四物湯)は、炎症を鎮めつつ血を補い、肌や粘膜の修復を助けます。
一方で、排膿散及湯(桔梗・枳実・甘草)の配合により、膿を排出しやすくする作用が強化されています。
四物湯は黄連解毒湯の抗炎症成分を血分(衛気栄血の順番で体の奥)に届ける。
さらに、荊芥・防風・白芷・薄荷・柴胡 などの去風・解表薬が含まれ、慢性炎症に伴う風邪(ふうじゃ)の影響を取り除き、かゆみなどの症状を改善しやすくしています。
また、連翹・山梔子などの清熱解毒薬が加わることで、腫れや化膿の抑制作用も強化されています。
- 短期で使う=生薬の種類が少ない漢方薬
- 長期で使う=生薬の種類が多い漢方薬
とされているよ!
よく使う症状

体力中等度以上で,皮膚の色が浅黒く,ときに手足の裏に脂汗をかきやすく腹壁が緊張しているものの次の諸症:蓄膿症(副鼻腔炎),慢性鼻炎,慢性扁桃炎,にきび 薬局製剤指針効能効果より引用
蓄膿症・慢性鼻炎
急性期にも使いますが、慢性化したときに特に有効です。
「黄色い鼻水がダラダラ出るorたまって出ない」
このようなときに排膿作用がある荊芥連翹湯が役に立ちます。

慢性扁桃炎
排膿に優れた荊芥連翹湯は、扁桃腺が腫れやすく、白い塊(膿栓)が喉にたまりやすい慢性扁桃炎に適しています。喉の違和感や軽い腫れが続くタイプに有効で、膿が溜まりやすい場合に特に効果的です。
急性期の強い炎症には銀翹散が向きますが、荊芥連翹湯は炎症を繰り返す慢性的な状態に適しています。

ニキビ
赤みが強く、化膿するニキビに有効です。
補血と清熱薬を有する荊芥連翹湯は、乾燥するけどオイリーな部分がある人にも◎
補血作用で新しい皮膚の再生を促す効果も期待できます。
炎症が強いときは清上防風湯や銀翹散と併用することもあります。
注意すべき点

体を冷やしやすい
黄連解毒湯がベースに入っており、柴胡や連翹などの炎症を鎮める生薬を含むため、比較的体を冷やす傾向があります。
四物湯が入るためマイルドにはなっていますが、冷えやすい人は注意しましょう。
胃腸が弱い人は注意
荊芥連翹湯は胃腸の弱い人は注意が必要です。
- 黄連解毒湯→胃腸を冷やす
- 四物湯→胃腸に負担がかかる
→胃腸が弱い人は慎重に使用し、補助的な漢方薬(平胃散など)を併用するのも◎
まとめ

今回はニキビや慢性鼻炎に有効な漢方薬「荊芥連翹湯」について解説していきました。
急性期にも使いますが、特に慢性的な炎症に悩んでいる方は、検討してみましょう。
今回の内容をまとめると
荊芥連翹湯は温清飲がベースの慢性炎症に使う漢方薬!
【よく使う症状】
- 蓄膿症・慢性鼻炎
- 慢性扁桃炎
- ニキビ(特に化膿性)
【注意すべき点】
- 体を冷やす傾向がある
- 胃腸が弱い人は注意が必要
でも、荊芥連翹湯が効くってことは炎症が起きているから養生も必要だよ!