皮膚の漢方薬

慢性炎症やアトピー性皮膚炎に【温清飲】

青さん
青さん
なんだか皮膚がカサカサするわ。
玄先生
玄先生
あらあら。
他にはどんな症状があるの?
青さん
青さん
掻くと血が出たり、生理前にのぼせたりするわ。
玄先生
玄先生
なるほどね。
もう少し詳しく聞いてから判断するけど温清飲(うんせいいん)なんかいいかもね。
青さん
青さん
温清飲?

みなさん、こんにちは!
漢方薬剤師の玄(@gen_kanpo)です。

「皮膚炎の漢方薬は難しいです!」(ドーン!!)

皮膚炎の症状は様々でジュクジュクした浸出液が出るタイプもあればカサカサの乾燥タイプもいます。

慢性の皮膚炎では炎症と乾燥が同時に起こり、

乾燥を解消することを優先すべきなのか?
炎症を鎮めることを優先すべきなのか?

とても悩ましい問題です。

こうした状況でよく用いられる処方の一つが「温清飲(うんせいいん)」です。

この漢方薬は皮膚炎治療の基本となるものであり、婦人科の疾患などでも効果を発揮します。
今回は、この「温清飲」について詳しく解説していきたいと思います。

玄先生
玄先生
この記事がおすすめの人
  • 湿疹、皮膚炎が慢性化している
  • 婦人科系のトラブルを抱える
  • 体がのぼせる

温清飲ってどんな漢方薬?

どういう漢方?

簡単に説明すると

血虚+熱症状(血熱)に対する漢方薬です。

本来、血虚体質の人が興奮や炎症性の疾患を悪化させたときに有効な漢方薬とされています

血虚とは栄養不良の状態を指し、木で例えると乾燥した木のような状態です。
この状態は火が付きやすく、イライラなどの症状が現れ、自律神経の乱れや熱症状、精神疾患につながることがあります。

出典は万病回春(1590年ごろ)には

月経が乱れていたり、豆汁のように赤黒く、色々な色が混じったり、顔色が黄色くなったり、臍周りが刺すように痛んだり、寒気と熱感が交互にやってきたり、子宮出血が止まらない状態を治す

※超意訳

この様に書かれています。
本来はこのように婦人科の漢方薬として使われていました。
現在では皮膚科で使うことが多いと思います。

後述しますが温清飲は四物湯と黄連解毒湯をあわせた漢方薬です。

四物湯(温補養血)は補血や皮膚の潤い、婦人科疾患に有効な漢方薬です。
黄連解毒湯(清熱瀉火)は清熱や抗炎症効果があり、精神興奮を抑える効果があります。

玄先生
玄先生
温清飲は、清熱と補血の攻補兼施の処方であり、内を温め外を清す」という意味で名付けられたそうです。
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派生する漢方薬が多い

森道伯先生が作った一貫堂医学の解毒症体質に四物黄連解毒湯がベースの漢方薬をよく使います。

四物黄連解毒湯=四物湯+黄連解毒湯+連翹+甘草+薄荷

解毒症体質とは、当時の結核にかかりやすい体質であり、炎症を起こしやすく慢性化しやすい特徴があります。

  • 幼少期:柴胡清肝湯
  • 青年期:荊芥連翹湯
  • 成人期:竜胆瀉肝湯※同名の内容が違う処方あり

温清飲が慢性炎症に対して有効な事がこの部分からもわかります。

各処方とも、外界からの刺激で炎症を起こしやすいアレルギー体質やアトピー性皮膚炎などの症状や体質改善にもよく応用されます。

構成生薬

≪生薬名≫≪効能・効果≫
当帰補血 活血
川芎活血 理気
芍薬補血 平肝 止血
地黄補血 滋陰
黄連中焦の熱を去る
黄芩上昇の熱を去る
黄柏下焦の熱を去る
山梔子三焦の熱を去る

四物湯(当帰、川芎、芍薬、地黄)
黄連解毒湯(黄芩、黄柏、黄連、山梔子)

この2つの処方の合わせた処方になります。

四物湯で内を温め、黄連解毒湯で外の熱を清す(冷やす)という組み合わせになっています。

四物湯は補血活血作用で、月経を調整し、鎮痛や鎮静効果があり、体を温めたり肌を潤す働きがあります。
清熱解毒の黄連解毒湯は三焦(上焦、中焦、下焦)の火を瀉し、消炎・解熱・鎮静・止血・の作用があり、
体の熱感や炎症を緩和します。

黄連解毒湯の抗炎症作用は切れ味が良く炎症の強い皮膚炎に有効な漢方薬です。
ただ、体を乾燥させる恐れがあり、長期的な使用には適さないことがあります。

玄先生
玄先生
四物湯と組み合わせにより、熱性と寒性のバランスが調整され、長期的な服用に適する処方となります。
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よく使う症状

おすすめ

体力中等度で,皮膚はかさかさして色つやが悪く,のぼせるものの次の諸症:月経不順,月経困難,血の道症,更年期障害,神経症,湿疹・皮膚炎 厚生労働省 薬局製剤指針より引用

温清飲は広い応用範囲を持ち、精神科、皮膚科、婦人科領域で有効です。
特に「血虚+熱症状」が主な使用ポイントです。

慢性炎症の症状によく使います。

婦人科(月経不順、更年期障害など)

温清飲は、本来は不正出血の症状に使用されていました。
黄連解毒湯に含まれる清熱成分も含んでおり、のぼせや熱症状にも効果があります。

青さん
青さん
冷えのぼせなんかにも良いかもね。

四物湯は血を補う作用があり、黄連解毒湯は熱を取り除く作用があります。
そのため、生理前に火照る感じや更年期のホットフラッシュなどの症状にも応用されることがあります。

中医学の血(けつ)は精神安定物質の側面があります。
四物湯によって血を補うことで精神的な安定を促すと考えられています。
また、イライラや熱症状を黄連解毒湯によって緩和することができます。

四物湯による血の補給と黄連解毒湯によるイライラや熱症状の改善は、生理期間や更年期などの神経症状にも有効なアプローチとされています。

玄先生
玄先生
イライラが顕著な場合は四逆散などの漢方薬と組み合わせることもあります。
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皮膚炎

温清飲を一番活用するのが皮膚科の疾患、具体的には慢性湿疹やアトピー性皮膚炎の治療です。

皮膚炎と一言で言っても症状が色々ですよね?
温清飲が有効な皮膚炎は皮膚が黒っぽく、カサカサしているタイプ
かゆみを伴い「掻いて血が出る」状態に有効です。

黄連解毒湯で抗炎症、四物湯の補血をすることで皮膚の再生を促す組み合わせです。
急性期の炎症よりも慢性化した状態に使いやすいです。

玄先生
玄先生
専門家は状態に応じて四物湯と黄連解毒湯の割合を変えたりします。

注意すべき点

便利な処方ですが注意すべき点もあります。

玄先生
玄先生
体質にあっているか確認しましょうね。

胃腸が弱い人には向かない

温清飲は胃腸が弱い人には注意が必要です。

脾胃(≒胃腸)の性質は土喜温燥(五行で土の性質の脾胃は乾燥と温かいを好む)
冷えとベタベタした性質を嫌います。

  • 黄連解毒湯=清熱(冷やす)
  • 四物湯=補血(ベタベタ)

胃腸が弱い人に使うと調子を崩すことがあります。

特に皮膚炎の人は注意が必要で、皮膚の原料を作るのは胃腸です。
材料工場である胃腸の機能が低下すれば「不良品の材料」ができてしまいます。

この「不良品の材料」がアレルギーや炎症の原因になることがあります。

慢性の皮膚炎の方にとっては、胃腸のケアも重要です。
胃腸が弱い人が温清飲を使用する場合は、胃腸の健康をサポートする漢方薬と併用するか、食事の直後に飲むなどの工夫が必要です。

玄先生
玄先生
慢性皮膚炎の体質改善で補中益気湯や黄耆建中湯を使うのは脾胃を補うためだね。

まとめ

慢性炎症の基本薬となる温清飲の解説をしていきました。

アトピー性皮膚炎などの人は覚えておくと良い漢方薬です。

今回の内容をまとめると

温清飲は黄連解毒湯と四物湯をあわせた漢方薬で補血と清熱の性質を併せ持つ。

【よく使う症状】
熱症状をともなう婦人科の症状
慢性湿疹、皮膚炎

【注意すべき点】
胃腸に負担がかかる可能性がある

青さん
青さん
温清飲を飲んだら少し良くなってきたわ。
玄先生
玄先生
それは良かった。
でも、皮膚炎は食事やストレスなどでも影響するから養生も合わせてね。
青さん
青さん
はーい!
ABOUT ME
漢方薬剤師 玄
✅資格:国際中医師 | 薬剤師 | ✅漢方相談歴10年以上✅胃腸重視の診断が特徴。✅健康や中医学の情報を『楽しく面白く』発信中。 お気に入りにするとあなたの生活の質がちょっぴり向上するかも!