女性にオススメの漢方薬

乾燥の原因は血虚?血を補おう!補血の基本薬【四物湯】

玄先生
玄先生
今日は四物湯を解説していきます。
黄老師
黄老師
補血の基本処方じゃの。
玄先生
玄先生
そうですね。
それだけに学んでおくと色々役に立ちますね。
そして注意点もありますね。
黄老師
黄老師
そうじゃな。
ワシは単独では飲めんぞ。
玄先生
玄先生
あ!そうだった。

みなさん、こんにちは!
漢方薬剤師の玄(@gen_kanpo)です。

今回のテーマは補血薬の基本薬【四物湯(しもつとう)】

基本と書いてあるくらいなので色々な漢方薬のベースになっている処方です。

覚えておくと便利です。

血について知りたい人はこちらの記事を確認しましょう。

【中医学基礎】血ってなんだろう?中医学・漢方の世界でよく耳にする『血(けつ)』 西洋医学とは少し違った独自の考え方があります。 今回はその違いと中医学独自の『血』の考えを解説していきます。...
玄先生
玄先生
この記事がオススメの人
  • 貧血気味
  • 女性
  • 皮膚・爪・髪が弱い

四物湯ってどんな漢方?

どういう漢方?

簡単に説明すると

血を補う(補血)基本処方です。

基本処方の為、四物湯は補血を必要とする色々処方のベースになっています。

当帰飲子・十全大補湯・温経湯・温清飲・婦宝当帰膠など有名な処方の骨格となっている漢方薬です。

出典の和剤局方には

体内外の気を調節し,気血を栄養する。女性器につながり生理を主る経絡が虚し,生理が不調で痛みがあり,不正出血,経血に血の塊が混じる,妊娠しても体が冷え,養生法が無い,胎動が安定せず,下血が止らず,産後の体の弱りに乗じ寒さの邪が体内で悪さをし,悪露がしっかり出ず,下腹部が堅くなり痛み,熱かったり寒かったりするのを治す。
※超意訳&少し短縮

実際はここまで万能かは使い手次第ですが、婦人病に対して応用範囲が広いのがよくわかる文です。

単独で使うこともあるのですが、他の漢方薬と組み合わせることのほうが多い処方です。
すでに合わせてある漢方薬もあり有名なところだと、加味逍遙散合四物湯、猪苓湯合四物湯などがあります。

これらは

  • 肝火上炎+血虚→加味逍遙散合四物湯
  • 猪苓湯での陰血の消費を防ぐ→猪苓湯合四物湯

として使われます。
加味逍遙散や猪苓湯に四物湯を足すことでを効き目を良くしたり、副作用の防止につながります。

ちなみに

  • 十全大補湯(補気+補血)=四君子湯+四物湯+黄耆+桂皮
  • 温清飲(補血+清熱)=四物湯+黄連解毒湯
  • 芎帰膠艾湯(補血+止血)=四物湯+阿膠+艾葉+甘草
玄先生
玄先生
名前に出てなくても色々な処方に隠れているんだよ。
黄老師
黄老師
四物湯は芎帰膠艾湯から生薬を引いたと考える人が多いな。

構成生薬

≪生薬名≫≪効能・効果≫
当帰血を補う 血を流す 補血>活血
川芎血を流す 気も流す 痛み止め
芍薬補血 収斂作用
熟地黄補血 補腎

その名の通り4つの生薬で構成された漢方薬です。

すべて血にアプローチする生薬で構成されています。

地黄は補血に非常に優れた生薬です。
また、補腎作用もあるため腎精にも働くことができ、精と血を同時にアプローチする事ができます。
血と精の関係は【精血同源】といわれ互いに補う関係です。

当帰は補血薬の代表なのですが軽い活血(血の流れを改善)作用もあります。

川芎は活血に優れた生薬です。
川芎は『血中の気薬』といわれ気の流れも改善する事が出来きます。

玄先生
玄先生
血は自分の力では動けないから気の力をかりています。
黄老師
黄老師
だから補血の処方でも気を流す生薬(川芎)も必要なんじゃよ。

芍薬は軽く体を冷やして温性に傾かないようにし、収斂作用で脈外に血が漏れないように調整してくれています。

全体的に補血と活血、収斂とがバランスよく構成されています。

補血だけだと滞り、活血(血の滞りを去る)だけだと出血に繋がってしまいます。
それらを起こさないように絶妙な組み合わせになっています。

よく使う症状

合っている


血が足りない血虚全般に使うことができるので応用範囲は広いです。
特に毎月、生理で血を失いやすい女性にとっては様々な不具合を治してくれます。

女性の聖薬なんて呼ばれたりもします。

玄先生
玄先生
その中で私が良く使う症状を解説していきます。

生理不順

どんな生理不順でも良いわけではありません。

適応は血虚が原因の生理不順です。

具体的には

  • 経血が少ない・すぐに終わる
  • 生理が遅れる
  • 生理後半に生理痛が痛む
  • 生理後にぐったりする

これらの症状は血虚が原因の場合が多いので、四物湯及び四物湯を含んだ漢方薬がオススメです。

経血が多いや生理前半に生理痛が重いなど逆のパターンは対応する漢方薬が違うので注意しましょう。

また、血は精神活動の基本物質なので足りなくなると不安感や不眠の原因になります。
生理中や生理の後に不安感が強くなる人はオススメ。

玄先生
玄先生
イライラタイプではなく落ち込みタイプです。
そして症状が強い場合は他の処方も検討しましょう。
ちゃんと寝れていますか?虚弱体質の人の不眠、不安感に【帰脾湯】 みなさん、こんにちは! 漢方薬剤師の玄(@gen_kanpo)です。 『体が疲れ...

貧血症状

西洋医学の『血液(けつえき)』と中医学の『血(けつ)』はイコールではありませんが、同じ意味をもつ部分も多いです。

そのため、

  • ふらつき
  • 立ちくらみ
  • 倦怠感
  • 顔色が悪い

などの一般的な貧血症状にもよく効きます。

玄先生
玄先生
上記の症状は血虚以外でも起こるから鑑別が大事です。

産後・流産後の回復

出産や流産は気血を失います。
そして産後には授乳が待っています。

中医学では母乳は血と考えられています。
出産で大量の血を失ったり、もともと血虚の人は授乳することで血をさらに失います。

すると

  • 疲労倦怠感
  • 不安感
  • 母乳の出が悪い

この様な状態が生まれます。

産後は血虚になりますが、それと同時に気虚・血瘀・気滞にもなりやすいです。
症状によっては補血だけでなく他の治療も必要になってきます。

玄先生
玄先生
これを同時に出来るのが芎帰調血飲第一加減だね。
産後にオススメ漢方【きゅう(芎)帰調血飲第一加減】の効能効果 みなさん、こんにちは! 漢方薬剤師の玄(@gen_kanpo)です。 「出産後の...

乾燥症状

潤す作用があるので皮膚・髪・爪・目などの乾燥症状に使います。
皮膚で痒みが強い場合は当帰飲子がおススメです。

黄老師
黄老師
当帰飲子も四物湯がベースと考えおるの。
玄先生
玄先生
ジュクジュクしていたり、真っ赤になるタイプの皮膚炎に単独使用は逆効果だよ。

また、髪は中医学では『血余(けつよ)』といわれ、爪は蔵血作用を有する『肝』に属します。
四物湯を服用していくと髪がパサつく、爪がもろいなども改善していくことがあります。

効能効果にはありませんが便秘に応用することも多いです。
当帰には便を柔らかくする作用(潤腸作用)があり弱い便秘なら四物湯で改善することがあります。

黄老師
黄老師
産前産後で下剤を使いたく無い時などとても便利じゃよ。

注意すべき点

胃腸に重い

当帰・地黄といった補血の生薬は胃腸に負担がかかる人がいます。
(人によっては芍薬・川芎も)

胃腸が弱い人は単独で飲むのは避けておきましょう。

血を作るのは脾胃(胃腸)が中心なのでせっかく補血しても胃腸を壊したら台無しです。

そういう人はまずは脾胃を治すことも大事です。

黄老師
黄老師
これは四物湯を含む他の漢方薬にもいえるな!
胃腸が心配な人は必ずチェックじゃ。

温める作用は強くない

全体的に温性の生薬で構成されていますが、積極的に温める生薬は含んでいません。

効能効果に『冷え』という記載がありますがコレは血行不良による冷え。

そのため冷えが強い場合は桂皮や附子を含む漢方薬と併用することも多いです。

玄先生
玄先生
矢数道明先生の臨床応用漢方処方解説にも『血熱を冷ます』という記載もあります。
服用して冷える様なら注意しましょう。

https://gen-kanpo.com/hie

まとめ


色々な漢方薬の基本になっている『四物湯』

理解を深めると他の漢方薬の使い方も変わってきます。
また婦人病の症状に使うことが多いので女性にとっては覚えてくと便利です。

簡単にまとめると

四物湯は血を補う漢方薬(補血薬)の基本。

【よく使う症状】

  • 生理不順
  • 貧血症状
  • 産後・流産後の体力回復
  • 乾燥症状

【注意すべき点】

  • 胃腸に重い場合がある
  • 温める作用はそこまで強くない
玄先生
玄先生
量を調整すれば四物湯飲めるんじゃないですか?
黄老師
黄老師
そうじゃな。
人によって加減をするのも漢方の醍醐味じゃからな。
玄先生
玄先生
それでもダメなら脾の漢方薬もあわせましょう!
黄老師
黄老師
そうじゃな。
合方も漢方の醍醐味じゃ…
っていうかワシの体調に四物湯いる?
玄先生
玄先生
あっ!(いらないや!)
ABOUT ME
漢方薬剤師 玄
✅資格:国際中医師 | 薬剤師 | ✅漢方相談歴10年以上✅胃腸重視の診断が特徴。✅健康や中医学の情報を『楽しく面白く』発信中。 お気に入りにするとあなたの生活の質がちょっぴり向上するかも!