こんなときはカゼ薬の代表「葛根湯」だね!
そのタイプのカゼに葛根湯は逆効果の可能性があるよ!
今の症状には【銀翹散(ぎんぎょうさん)】がいいかもね!
みなさん、こんにちは!
漢方薬剤師の玄(@gen_kanpo)です。
みなさんは、カゼを引いたときどんな漢方薬を選びますか?
葛根湯、麻黄湯などが有名ですよね。
カゼといっても様々なタイプがあります。
有名な葛根湯は寒さの邪気が風に乗って襲ってくる「風寒(ふうかん)タイプ」に有効な漢方薬です!
体を温め、発汗することで風寒の邪気を追っ払う漢方薬です。
カゼには「風熱(ふうねつ)」というタイプも存在します。
このタイプは文字とおり体に熱の邪気が入り込んでいる状態。
喉の痛みが強く、高熱、口が乾くという症状が出ます。
さて、このタイプに「葛根湯で温め、発汗してもよいでしょうか?」
ちょっと疑問に思いますよね。
そんな風熱タイプのカゼに有効なのが、今回説明する【銀翹散(ぎんぎょうさん)】
葛根湯など風寒タイプのカゼ薬とワンセットで覚えておくと緩和できる症状の幅が広がります。
是非覚えていってくださいね。
- よくカゼをひく
- カゼは喉から始まる
- 葛根湯がよく効かない
銀翹散ってどんな漢方薬??
簡単に説明すると
風熱の邪に侵されて起こる高熱、のどの痛みなどのカゼに使う漢方薬です。
風熱の邪とは風邪(ふうじゃ)+熱邪
- 風寒のカゼが発展して起こる
- 直接、風熱の邪に侵される(暑い時期に多い)
この2つのパターンがあります。
熱の邪に侵されるので「高熱、のどの痛み、黄色い痰、頭痛、発汗」などの症状が出ます。
ただ、風熱は風邪(ふうじゃ)も一緒に襲って来ています。
風邪は毛穴を開かせたり、一般的なカゼ症状を引き起こすため、弱い寒気なども現れます。
風寒との違いをまとめると
このような違いがあります。
銀翹散はこのような風熱の邪に侵されて現れる、高い発熱、汗をかく、弱い寒気、のどの痛みなどに有効な漢方薬です。
出典の温病条弁(うんびょうじょうべん)には
太陰病(カゼが体内深くに入り込んでいる状態)をなし、脈緩ならず緊ならずして動数、あるいは両寸独り大、尺膚熱し、頭痛み、微悪風寒、身熱し自汗し、口渇き、あるいは喝っせずし、咳し、午後に熱が甚だしいものは温病という
太陰風温、温熱、温疫・冬温、初起の悪風寒には桂枝湯
ただ、熱し悪寒せず、口喝するものは銀翹散を使う
※超意訳
このように書かれています。
この条文はカゼの種類が風寒ではないことを示しています。
脈が動数(脈が早い)は熱病を意味します。
風寒のカゼで傷寒(寒気の強いカゼ)なら緊(尖った感じの脈)になるはず、中風と呼ばれる弱いカゼなら緩(一呼吸に四拍)になるはずです。
温性の邪気(風・熱)の特徴は体上部から現れます。
そのため、口鼻から侵入し五臓の肺を犯します。
条文中の両寸というのは症状が体の上部にあることを指し、「尺膚熱し」というのは肺に熱があることを意味しています。
五臓の肺は鼻やのどに関与しているため咳嗽、喉の痛み、口喝などの症状が現れます。
このタイプのカゼの時に葛根湯や麻黄湯など発汗させる漢方薬を飲むと悪化する可能性があるので注意が必要です。
似たように咽喉乾燥する者は発汗すべからずともいわれます。
構成生薬
≪生薬名≫ | ≪効能・効果≫ |
---|---|
金銀花・連翹 | 清熱解毒(熱毒を去る) |
薄荷 | 辛涼解表(風熱を去る) |
牛蒡子 | 辛涼解表、喉の炎症を抑える、去痰、止咳 |
荊芥 | 去風解表(風邪を取り除く) |
淡豆豉 | 疏散解表 |
(淡)竹葉 | 精心除煩 清熱(上焦) |
芦根 | 清熱生津 ※日本の処方には含まれない |
桔梗 | 利咽 去痰 鎮咳 |
甘草 | 清熱解毒 抗炎症 |
「銀・翹」は金銀花・連翹を意味しており、この2味の清熱薬が君薬(メインの生薬)になります。
その他もほとんどの生薬が体の熱を去る生薬で構成されています。
金銀花、薄荷、淡豆豉、牛蒡子は辛涼解表薬です。
またの名を「発散風熱薬」といいます。
これらの生薬は風熱の邪気が、まだ体内奥深く入り込んでないときに使います。(風熱表証)
全体で体表面の熱を去り、風熱の邪気を追っ払う構成になっています。
【熱病が進展する段階】
衛(体の浅い部分、肺や体表面)
↓
気(衛よりも深い部分、まだ体の正気が残っている状態)
↓
営(熱が更に深く入り込んでいる。精神症状も現れる)
↓
血(熱病の最終段階。出血などが起こる)
熱病は「衛→気→営→血」と進展していきます。
銀翹散は衛分の代表的な漢方薬です。
現在、日本の処方では同名でも芦根が入ってないものが主流です。
また、銀翹散をもとに作った処方では解熱作用が強い羚羊角(レイヨウカク)を含むものがあります。
よく使う症状
かぜによるのどの痛み・口(のど)の渇き・せき・頭痛
高熱のカゼ
銀翹散は高熱タイプのカゼ、感染症に有効な漢方薬です。
特徴は悪寒<発熱
風熱タイプのカゼは熱邪の影響で高熱になる傾向が多いです。
ウイルス性の感染症の初期で高熱の場合は銀翹散を検討します。
(同じウイルス性でも悪寒が強い場合は麻黄湯や麻黄附子細辛湯を使います。)
「あれ?喉の調子が‥」くらいのタイミングで飲めると良いですよ。
喉の痛み
風熱の邪は口、鼻から侵入するため口喝やのどの痛みが出やすくなります。
銀翹散には多くの清熱解毒作用がある生薬を含むので、咽喉の痛みに良く効きます。
注意すべき点
一緒にチェックしていきましょう!
風寒のカゼ薬使い分け
前述の通り風寒のカゼと間違えないように使いましょう。
風寒のカゼでは風<寒の場合は無汗、風>寒なら有汗になります。
風熱の場合は汗をかくことが多いです。
寒熱は逆のことすると悪化する可能性もあるので注意しよう!
わからなかったら専門家に相談することをオススメします。
体を冷やす漢方薬
ここまで説明しきた通り、銀翹散は体の熱を去る漢方薬です。
銀翹散はカゼ薬なので、ずっと服用する人は少ないと思います。
ただ、冷えやすい、胃腸が弱いタイプは注意しましょう。
まとめ
今回は漢方薬の世界では葛根湯よりもよく使うカゼ薬【銀翹散】について解説してきました。
この漢方薬を知っているだけで、カゼ対策のバリエーションが増えるので覚えておきましょう。
今回の内容を簡単にまとめると
銀翹散は風熱の邪気によるカゼに良く効く漢方薬
【よく使う症状】
- 高熱のカゼ
- のどの痛み
【注意すべき点】
- 風寒の症状と間違えない
- 体を冷やす漢方薬
〇〇という症状には✕✕という決めつけは危険だから注意しましょうね。