みなさん、こんにちは!
漢方薬剤師の玄(@gen_kanpo)です。
朝晩の冷え込みが強くなる冬、この時期に特によく聞く体の不調の一つがこむら返りです。
突然の激しい痛みで目が覚めた経験のある方も多いのではないでしょうか?
今回はこむら返りとは何か、その原因や対策を中医学と現代医学の両面から解説します。
- こむら返りになりやすい
- 芍薬甘草湯を常用している
- 体が冷えやすい
こむら返りとは?
こむら返りは、ふくらはぎや足の筋肉が突然収縮し、痙攣を起こす症状のことです。
医学的には「筋痙攣(筋肉のけいれん)」と呼ばれますが、ふくらはぎ以外の部位でも起こることがあります。
【特徴的な症状】
- 突然の激しい痛み
- 筋肉の硬直
- 症状は数秒から数分間続く
- 痙攣後に筋肉痛が残ることも
こむら返りが起きやすい時間と状況
こむら返りは特定の時間やシチュエーションで起きやすい傾向があるとされます。
1. 夜間や明け方
就寝中や明け方は、血流が低下しやすい時間帯です。
寒さや脱水により筋肉が硬直し、痙攣が起こりやすくなります。
特に冬の明け方はよく起こるシチュエーションです。
2. 運動後や運動中
運動中の汗による電解質の喪失や、運動後の筋肉疲労が原因で筋肉が過剰に収縮しやすくなります。
スポーツをする人は経験があるかと思います。
3. 長時間同じ姿勢でいるとき
デスクワークや長距離移動などでは血流が滞り、筋肉が酸素不足に陥ることでこむら返りが発生しやすくなります。
4. 高温多湿の環境
暑い環境での発汗によるミネラル不足が、筋肉の調節機能を乱す要因となります。
ときに近年の夏は非常に暑いので注意が必要です。
5. 飲酒後
アルコールを摂取すると利尿作用により水分と電解質が不足しやすくなります。
すると筋肉の働きに悪影響を及ぼします。
6. 妊娠中
妊娠後期には、血流の圧迫や栄養の偏りにより筋肉の収縮バランスが崩れることがあります。
中医学的には「血虚」が関係してきます。
7. 高齢者
加齢による筋力低下や電解質バランスの乱れが、こむら返りの原因となることが多いです。
中医学的には「腎虚」関係してきます。
なぜ冬に多いのか?
冬に「こむら返り」が多くなるにはいくつかの原因があります。
- 冷えによる血行不良
- 筋肉が収縮しやすい環境
- 水分不足やミネラルバランスの乱れ
冬は汗をかくことが少ないため、水分摂取も減りがちです。
しかし、冬場でも脱水になることがあります。水分を摂りすぎると体が冷える原因になりますが、必要な量をしっかり補うことが大切です。
こむら返りが起きやすい人は、自分に合った適切な水分量を意識してみましょう。
中医学的には「寒凝血瘀」が関係してきます。
中医学的な原因と対策
肝の血虚
中医学では「肝は筋を主る」とされ、肝の血が不足すると筋肉が十分な栄養を受け取れず、痙攣(けいれん)しやすくなります。
血虚の状態は「こむら返り」以外でも以下のような症状として現れることが多いです。
- まぶたのピクピク
- 肌荒れ、抜け毛
- 爪が割れる
- 不安感や不眠
対策と養生法
血虚に対しての一番の養生は早寝を心がけること。
中医学で血(けつ)は夜間に作られるとされます。
夜更かしは血を消耗させます。
夜間の目の酷使も血虚を悪化させる要因です。
血が作られない+消耗が激しい=血虚が悪化する
血虚傾向の人は夜ふかししないで早く寝ることを心がけましょう。
食材で血を補う食材としてはレバー、うずら、黒豆、黒米、プルーン、人参、トマト、枸杞、紅茶など、赤や黒の食材がオススメです。
改善しない場合は必要に応じて漢方薬「芍薬甘草湯」を活用します。
腎虚や加齢、過労
腎は生命力の源であり、加齢や過労が腎の力を低下させる「腎虚」の状態に陥ると、筋肉の正常な働きが阻害されます。
特に腎陽虚(腎虚+体を温める力の不足)がある場合、冷えとともにこむら返りが起こりやすくなります。
- 腎精不足→健忘、ふらつき、性欲減退
- 腎は骨を主る→足腰が重だるい(腰膝酸軟)、痛み
- 腎は耳と二陰に開竅→排尿トラブル、遺精、耳鳴り
- 腎の華は髪→白髪、脱毛
腎虚の人は上記のような症状も現れます。
対策と養生法
慢性的な過労は腎虚の悪化要因なので体を労ることが大事です。
また、筋力や骨の弱りも逆算的に腎虚の原因のため、適度に運動したり筋力トレーニングをすることも大事です。
食材としては黒ごま、くるみ、山薬など、腎を補う食材を取り入れましょう。
五行説で腎は「水」属する臓です。水の色は黒!黒豆、海藻類など黒い食材を選んでいきましょう。
漢方薬では「八味地黄丸」や「牛車腎気丸」など腎陽虚の処方を検討します。
冷えと血行不良(寒凝血瘀)
寒さで血流が滞る「寒凝血瘀」の状態も、こむら返りの原因になります。
この場合、ふくらはぎや足元を温めて血流を改善することが大切です。
対策と養生法
かかと上げ運動をなど行い、ふくらはぎのポンプ機能を活性化させましょう。
冷えやむくみ、脚のだるさを軽減できます。
入浴などで体を温め、全身の血流を促進させることも大事。
それでも改善しない場合は体質に応じて血行を改善する漢方薬(活血剤)を選びます。
西洋医学的な原因と対策
現代医学では、こむら返りは以下のような要因で起こるとされています。
- ミネラル不足
- アミノ酸不足
- 脱水
特にマグネシウムやカリウム、カルシウムの不足が関与します。
マグネシウム豊富な食品(ナッツ、ほうれん草など)を摂取しましょう。
アミノ酸不足が疑われる場合、寝る前にBCAA製剤を取り入れると良いです。
肝硬変では、肝臓のアミノ酸代謝が乱れ、筋肉に必要な栄養が不足します。
特に分岐鎖アミノ酸(BCAA)が減少し、筋肉のエネルギー供給が不十分になることで、筋肉の収縮バランスが崩れ、こむら返りが起こりやすくなります。
また、肝硬変では体内のミネラルバランスも乱れるため、このこともこむら返りを引き起こす要因となります。
運動後や飲酒後にこむら返りが起きやすい理由の一つが脱水です。
特に飲酒は利尿作用で体内の水分が減少するため脱水に注意が必要。
飲酒後にこむら返りが起きやすい人は寝る前にコップ一杯の水を飲む習慣をつけましょう。
まとめ
今回は高齢者や冬場に多い「こむら返り」について解説しました。
養生や漢方薬を適切に活用すると防ぐことができるので参考にしてみてくださいね。
今回の内容を簡単にまとめると
【こむら返りの中医学的原因】
- 肝血虚(肝は筋を主る)
- 寒凝血瘀(冷えて血行不良)
- 腎陽虚(加齢や過労)
【対策と養生】
- 冷え対策:足元を温め、かかと上げ運動を定期的に行う
- バランスの取れた食事:血や腎を補う食材、マグネシウムを含む食品を積極的に摂る
- 適度な水分補給:寝る前に常温または温かい水を一杯飲む(過度な水分補給は冷える原因)
冷えや血行不良も大きな原因じゃ!漢方薬に頼るのも良いが、養生も考えないとな!