ドラッグストアや病院に行くのも恥ずかしいし玄先生なんとかしてーー。
ひどい状態なら病院に行くべきだけど、軽そうだから「乙字湯」で様子見てもいいかもね。
みなさん、こんにちは!
漢方薬剤師の玄(@gen_kanpo)です。
痔になったことありますか?(私はあります)
痔って…人に相談しにくいですよね?
ドラッグストアでは相談しにくいためか漢方薬局では相談されることは少なくありません。
一般的には外用薬で対処することが多いのですが、漢方薬には飲む痔の薬があります。
そこで、今回は相談しにくい痔の漢方薬「乙字湯(おつじとう)」について解説していこうかと思います。
- 痔の症状がある
- 痔の薬を探している
- 便秘気味
乙字湯ってどんな漢方薬?
簡単に説明すると
便秘傾向の人向けのいぼ痔、切れ痔の漢方薬です。
痔に対しては紫雲膏など外用の漢方薬も使いますが、今回の乙字湯は飲み薬になります。
出典の「叢桂亭医事小言」には
痔で、脱肛し激しく痛み、あるいは下血して、あるいは前陰が痛痒いものを治す。
※超意訳
こう書かれています。
この「叢桂亭医事小言」は黄門様で有名な水戸藩の侍医・原南陽先生が書いた本。
乙字湯は戦の野営中に体を冷やし瘀血が生まれたものを治療するために考えられたとされています。
この処方が考えられたのは江戸時代中期から後期にかけてとされています。
当時は現代ほど防寒着などの発達していません。
戦争では作戦によっては何時間も同じ姿勢でいることを余儀なくされる状況もあったと考えらえます。
冷え+同じ姿勢=滞りやすい(瘀血が出来やすい)
この様な状態を改善するために作られた処方と考えられます。
※とは言え後述しますが、冷えの人は少し注意の処方です。
現代においてもデスクワークが多い人は「冷えやすい」「同じ姿勢」という状況があると思います。
痔があり「血の滞り」がありそうな人は「乙字湯」が選択肢に入ってくるかと思います。
この「叢桂亭医事小言」には他にも戦陣によく使われる処方をとして、甲乙丙丁(コウオツヘイテイ)と名を持つ薬があります。
今回の乙字湯以外にも
- 甲字湯→打ち身・打撲傷
- 丙字湯→メンタル疾患
- 丁字湯→胃腸障害
戦中に起きそうな処方を考えていたとされています。
構成生薬
≪生薬名≫ | ≪効能・効果≫ |
---|---|
当帰 | 補血活血 潤腸 |
柴胡 | 昇提(しょうてい)作用 少し清熱(黄芩と組み合わせで効果アップ) |
黄芩 | 清熱燥湿 肺大腸系の熱を去る |
甘草 | 諸薬の調和 |
升麻 | 昇提(しょうてい)作用 |
大黄 | 清熱 活血(強力) |
元の処方は上記から当帰を抜いて大棗、生姜を加えたものです。
当帰が入ることで血に対してのアプローチが強化され皮膚の修復などを改善することができます。
また、当帰にも便を柔らかくする作用があります。(潤腸作用)
- 大黄・黄芩→清熱を強化
- 大黄・当帰→活血を強化
柴胡・黄芩は小柴胡湯でも使われている消炎の組み合わせです。
黄芩は肺大腸経の熱を去るので痔の患部の炎症に有効です。
柴胡・升麻の組み合わせは補中益気湯でも使われる組み合わせで「昇提(しょうてい)」作用が期待できます。
昇提(しょうてい)作用→「落ちている物を引き上げる作用」
よく使う症状
体力中等度以上で,大便がかたく,便秘傾向のあるものの次の諸症:痔核
(いぼ痔),きれ痔,便秘,軽度の脱肛厚生労働省 薬局製剤指針より引用
痔核(いぼ痔)、切れ痔、軽度の脱肛
メインで使う症状です。
不要な湿熱と血がたまっているタイプに有効。
条文にに書いてある通り「陰部・肛門の痒み」に応用されることがあります。
※適用になっていないので使用したい場合は専門家に相談
便秘
シンプルに便秘にも有効です。
注意すべき点
胃腸が弱いタイプ
胃腸が弱い人は要注意。
便秘は痔の悪化要因ですが、排便回数が増え刺激で痔が悪化する人もいます。
乙字湯を飲む事で排便回数が増える人は要注意です。
また、清熱の生薬を多く含むので胃腸が冷える人は要注意です。
まとめ
痔の内服で使うことができる乙字湯。
外用剤と組み合わせると更に効果的です。
今回の内容をまとめると
乙字湯は便通が硬い人に有効な痔の漢方薬
【よく使う症状】
- 痔核(いぼ痔)・切れ痔
- 便秘
【注意すべき点】
- 胃腸を冷やす(下痢に注意)
でも便秘改善の食事や運動なども取り入れていかないとダメだよ!