ここは腰痛についてみっちり説明せんとな!
みなさん、こんにちは!
漢方薬剤師の玄(@gen_kanpo)です。
若い頃は、腰痛の存在さえあまり意識することはないかもしれません。
しかし、年齢を重ねるにつれて、慢性的な腰の痛みに悩む方が増えてきます。
人によっては日常生活や仕事に支障をきたすこともあり、腰痛は現代人にとって避けて通れない病気のひとつです。
漢方薬局でも、
「一日中座りっぱなしで痛みが悪化した」
「冷えや疲れで腰が重だるい」
といった腰痛のお悩みが多く寄せられています。
そこで今回は、中医学の視点から腰痛をどのように捉え、どのように分類するのかを解説していきます。
自分の症状に合ったケアを見つけるための参考にしていただければ幸いです。
- 腰痛で悩んでいる
- 座っていることが多い
- 梅雨時期や寒い時期に腰が痛む
腰痛について
日本では腰痛に悩む人口が約2800万人といわれており、特に40代から60代の世代で多くみられます。
これは実に2人に1人が腰痛を抱えている計算になります。
また、日本人の約8割が生涯で一度は腰痛を経験するともいわれています。
2023年の国民生活基礎調査によると、自覚症状のランキングでは男女ともに1位が「腰痛」、2位が「肩こり」という結果でした。
こうした背景には、座り仕事の増加やスマートフォンの使いすぎによる姿勢の悪化が原因として挙げられます。
腰痛は今や「国民病」といっても過言ではありません。
中医学における腰痛
中医学では腰痛をどのように考えるか解説します!
中医学における腰痛は、単なる腰回りの骨や筋肉の問題だけではなく、外からやってくる邪気(外邪)や臓腑(内臓)のバランスが関わる症状として捉えられます。
特に腰は「腎の府」とされ、五臓の腎の機能やエネルギー(腎気)が腰の健康に深く関与していると考えられています。
腰痛もこれら不通則痛と不栄則痛で痛み方や治療法に違いが現れます。
風寒
急性期に起こる腰痛。(実証)
急に寒くなった日や、寒いところで発症しやすいのが風寒の腰痛です。
ひきつるような痛み、冷えると悪化するのが特徴。
風寒の邪気は一般的なカゼの原因になる邪気なので、頭痛や鼻水、悪寒など伴うことが多い。
風寒は背中の風門(両肩甲骨の間)というツボから侵入するとされます。
そのため、腰痛に加えて背中~首ののこわばりや痛み、後頭部の頭痛を伴うことがあります。
代表的な漢方薬はカゼで有名な葛根湯などを使用します。
※葛根湯は長期で使う処方ではないので注意しましょうね!
【養生】
- 防寒+防風
- 三首(首、手首、足首)や背中など冷えの侵入経路を守る
- 体を守る気が不足しないようにする(免疫を落とさない)
風寒湿痺
急性または慢性に生じる腰痛です。(実証)
風寒と同じように温めると痛みが軽減します。
また、寒い日、雨天時、気圧が下がると悪化するのが特徴です。
- 寒邪が強い場合は痛みが強く固定性(痛痺)
- 湿邪が強い場合は痛みは強くないが重だるい(着痺)
- 風邪が強い場合は遊走性で痛みが増減する(行痺)
このタイプは邪気が複合しているので、どの邪気が強いかで治療法が変わります。
代表処方としては五積散や桂枝加朮附湯、疎経活血湯などを症状によって使い分けます。
慢性化して気血も不足した場合は独活寄生丸など検討します。
【養生】
- 雨や雪で濡れたままでいない
- 高湿度の時は除湿器も使う
- ベタベタした性質の食事を避ける(内湿は外湿を呼ぶ)
瘀血
血のめぐりが悪くなり起こる腰痛です。(実証)
瘀血は様々な原因で起こります。
ずっと同じ姿勢が続いたり、姿勢が悪いのは瘀血ができる要因です。
また、外傷や外傷の後遺症なども瘀血が関係します。
外傷のような急性症状の場合は腫れる、痛みが強い傾向にあります。
その他の特徴としては夜間痛みが増す、痛みが固定通であるなどが挙げられます。
漢方では活血薬(瘀血を去る薬)を中心に治療していきます。
急性期:桃核承気湯、通導散(下剤を含むので注意)
慢性期:桂枝茯苓丸、折衝飲など
ストレスが絡んだ気滞血瘀タイプには血府逐瘀丸など
ギックリ腰も瘀血が原因とされています。
ギックリ腰は起きてすぐに強力な活血剤(桃核承気湯や通導散)を飲むと治りが良いとされます。
【養生】
- 外傷の予防(ストレッチ、準備運動)
- ずっと同じ姿勢でいない(外傷初期は安静にしている)
- 生活、仕事の場で姿勢を正す
外傷予防や血流改善の養生を取り入れていきましょう。
湿熱
体内の熱と湿が滞り、炎症や腫れを引き起こす腰痛です。(実証)
体格が良く痰湿が溜まっている人や夏場、梅雨時期に多いとされます。
痛みの特徴としては腰が熱っぽく、腫れるような感覚がある。動かすと痛みが増す傾向にあります。
湿熱タイプは舌の苔が黄色く厚い傾向にあります。
鏡でチェックして黄色い苔がベッタリついていたら注意しましょう。
代表漢方薬は越婢加朮湯や竜胆瀉肝湯などが挙げられます。
【養生】
- 食べ過ぎ飲み過ぎに注意する
- ベタベタした性質(肥甘厚味)を避ける
内側に湿がたまっていると外の湿気の影響を受けやすくなるんじゃよ。
腎虚
高齢者に多い腰痛がこの【腎虚の腰痛】です。
腎虚は名前の通り虚証の腰痛に分類されます。
鈍痛が長く続くのが特徴。
その他にも腎虚になると足腰が重だるい(腰膝酸軟)、腰部の無力感なども起こりやすくなります。
古典には「腰は腎の府」という記載があります。
府は集まるところという意味があります。
腰と腎は関係が深く、腎が弱る(腎虚)と腰痛につながります。
腎虚の増悪因子は冷え、過労、過度な恐れ、驚き(恐則気下・驚則気乱)などが挙げられます。
腎にためられているエネルギーは体の根幹のため、他の部分でも不調を放置すると腎は虚していきます。
- 腎虚だと外邪、瘀血の影響を受けやすい
- 外邪、瘀血を慢性的に放っておくと腎虚になる
このように、どのような腰痛にも腎の働きが関係していきます。
腰痛が慢性化してきた場合は腎虚を考慮しましょう。
特に腎は冷えに対して弱い臓なので多くの腰痛は冷えで悪化します。
代表的な漢方薬は腎を補う独活寄生丸や牛車腎気丸、八味丸などを使います。
【養生】
- 体を冷やさない
- 腎を補う黒い食材(黒豆、黒ゴマなど)
- 適度な運動で骨刺激を与える(腎は骨を主る)
まとめ
今回は中医学における腰痛について解説していきました。
今や腰痛は国民病ともいえる状況です。
漢方薬や養生を駆使して腰痛対策をしましょう。
今回の内容を簡単にまとめると
ただ、現代人には瘀血なども関係してくるからしっかりと判別しないと痛い目を見るぞ!