喉の痛みと、腫れてるっぽい。
みなさん、こんにちは!
漢方薬剤師の玄(@gen_kanpo)です。
急な喉の痛みやイガイガは、夏でも冬でも多いですよね。
最近は、冷房のつけっぱなしにしないと暑すぎるので、夏でも喉の不調の相談が増えてきました。
そんなとき、漢方の選択肢に挙がるのが「桔梗湯(ききょうとう)」。
市販薬としても手に入りやすいので便利です。
そこで今回は、喉のトラブルに使われるこの漢方薬「桔梗湯」について、詳しく解説していきます。
- すぐに喉が痛くなる
- 喉の痛みの常備薬を探している
- 他の漢方薬を飲んでいる
桔梗湯ってどんな漢方薬?

簡単に説明すると
喉の炎症を鎮め、扁桃炎などを治療する漢方薬です。
構成はたった2種類。
「桔梗」と「甘草」というシンプルな組み合わせで、炎症や去痰に配慮されています。
出典となる『傷寒論』『金匱要略』には
『傷寒論』:少陰病(病が奥深く入り込んでいる)になって二三日たって、咽の痛む人には甘草湯を与えるべし。治らない場合は桔梗湯を与える
『金匱要略』:咳して胸満し、悪寒で体は震え、脈は数(はやい)、咽は乾燥して渇せず、時に濁唾の腥臭(せいしゅう)痰を出し、長い間に膿を吐する証を肺癰(はいよう)といい、桔梗湯を用いる
※超意訳
「甘草湯(甘草だけの漢方薬)で治らない咽喉の痛みは、膿がたまって悪化している可能性があり、排膿作用のある桔梗が入った桔梗湯を使ったほうがいい」と考えられていたわけです。
腥臭(せいしゅう)=生臭いにおいの痰が出る、というのは化膿が進んでいる状態で、現代では抗生物質での対象になる様な症状です。
構成生薬
生薬名 | 主なはたらき |
---|---|
桔梗(ききょう) | 去痰、排膿、薬効を上部に届ける |
甘草(かんぞう) | 抗炎症、薬性緩和 |
たった2種類のシンプルな処方。
桔梗(ききょう)は宣肺・去痰・排膿・咽喉部の鎮痛作用をもち、上焦(特に肺・咽喉)に薬効を導く性質があります
現代薬理学的には、抗炎症・抗アレルギー・去痰・鎮咳・免疫調節作用などが報告されている。
甘草(かんぞう)は緩急・調和・解毒・抗炎症を目的に配合される代表的生薬。
薬性が諸薬の性質を緩和しつつ補助し、組成全体のバランスを整える働きがあります。(今回は抗炎症の方で使われている)
現代薬理では、グリチルリチンによる抗炎症・抗アレルギー・抗ウイルス作用が確認されています。
一般的に生薬が多い処方はマイルドに、少ない処方はシャープに効くと言われます。
よく使う症状

体力に関わらず使用でき,のどがはれて痛み,ときにせきがでるものの次の諸症:扁桃炎,扁桃周囲炎
厚生労働省 薬局製剤指針より引用
扁桃炎・扁桃周囲炎
桔梗が膿や痰を排出する作用を持ち、甘草が抗炎症と鎮痛を補助します。
とくに腫れや化膿が目立つような急性症状に向いています。
【桔梗湯の使い方のちょっとした工夫】
口に含み、白湯でゆっくり溶かしながら飲むのがおすすめです。
なるべく薬液が患部(喉)に長くとどまるようにすると、より効果的です。
桔梗湯は本来、内服用の漢方薬ですが、喉の炎症が強い場合には「うがい」と併用して使う方法も紹介されています。
私自身、喉の腫れや痛みがつらかった際に、ぬるま湯で溶かした桔梗湯で数回うがいをしてから飲む、という使い方を試してみます。
すると、喉の奥がすっと落ち着く感覚があり、思った以上に効果を実感できました。
もちろんこれは、正式な使い方ではありません。
個人の判断で「うがいのみに使う」ことにはリスクもあるため、特に妊娠中・授乳中・小児の場合は、医師または薬剤師に相談されるのが安心です。
痛みが強い場合は銀翹散も選択肢
桔梗湯はシンプルな構成で、去痰や排膿に優れていますが、清熱解毒薬(連翹、金銀花)などは含まれていません。
そのため、炎症が強い・発熱がある・風邪症状が重い場合は、清熱薬や辛涼解表薬を含む「銀翹散」などを選ぶ方がよいでしょう。

咳(痰が多い場合)
→ 去痰+抗炎症のコンビで有効ですが、鎮咳生薬を含まないため、咳そのものに対してはやや限定的です。

注意すべき点

偽アルドステロン症に注意!
甘草の過剰摂取は「偽アルドステロン症」を引き起こすことがあります。
①偽アルドステロン症とは?
血圧を上げるホルモンが増えていないのに、高血圧・むくみ・カリウム喪失などの症状が出る状態。
甘草やグリチルリチン酸を多く含む薬剤により引き起こされます。
こんな症状が出たらすぐ相談!
- 手足のだるさ・しびれ・つっぱり感・こわばり
- 力が抜ける感じ
- こむら返り、筋肉痛
②長期での使用に注意
桔梗湯は使いやすい処方ですが、甘草の含有量が多いことに注意。
メーカーによっては、1日あたり3gの甘草を含む場合があります。
これは漢方薬の中でもトップクラスの多さです。
甘草含有量ランキング(参考)
1位:芍薬甘草湯(6g)
2位:甘麦大棗湯(5g)
3位:桔梗湯など(3g)
③他の漢方薬との併用も注意!
よく聞かれるのが、葛根湯との併用。
でも、葛根湯(ツムラの医療用)には1日あたり2gの甘草が含まれています。
桔梗湯(3g)と併用すると、1日5gになってしまい、これはかなりの量。
短期であっても注意して使いましょう。
必要に応じて、溶かした桔梗湯で「うがい(してから服用)」をするのも効果的です。
この方法だと成分が直接喉の粘膜に触れるので、少量で即効性を感じやすくなります。
まとめ

今回は、扁桃炎や咽喉の炎症によく使われる漢方薬「桔梗湯」についてご紹介しました。
今回の内容を簡単にまとめると
桔梗湯は喉の痛み・腫れに使える漢方薬
- 桔梗(去痰・排膿)+甘草(抗炎症)のシンプルな構成
- 甘草の量が多いため、長期使用や併用には注意
- 「うがい・うがいをしてから飲む」を使うのもおすすめ
最近は夏でも冷房で喉を傷めるから、うがいなども大事だよ!