だいぶ良いんだけとダルさが残っているのよ。
みなさん、こんにちは。
漢方薬剤師の玄(@gen_kanpo)です。
病後や術後に体力が回復しないことありますよね?
こんな時に最適な漢方薬があります。
その名も『十全大補湯(じゅうぜんたいほとう)』
いかにも元気になりそうな名前でしょ?
そう!とっても元気になっちゃう漢方薬なのです。
もちろん、病後や術後じゃなくても元気にない人にオススメですよ!
そこで今回は元気をつける漢方薬の代表薬『十全大補湯(じゅうぜんたいほとう)』について解説していこうかと思います。
- 病後、術後になかなか回復しない
- 疲労がたまってる
- 貧血気味
十全大補湯ってどんな漢方?
簡単に説明すると
気血を補い体を温める漢方薬です。
「十全」という意味を辞書で引いてみると…
「少しも欠けたところがないこと。十分に整っていて、危なげのないこと。また、そのさま。万全。」
と書いてあります。
十全大補湯とは『万全(十分)に大きく補う』漢方薬と考えることが出来ます。
出典の『太平恵民和剤局方』には
【男女ともに使え過労や病気で食欲体力を失ったときで】
- たまに発熱、体が痛む
- 顔色が悪く、足に腰に力が入らない
- 憂鬱な気分
- 呼吸困難・咳
- 体がおっくう
※超意訳
こんな風に書いてあります。
大病後や慢性疾患の後に「気血、陰陽、表裏、内外の全てが虚したとのを補う」処方とされています。
その後の体力回復などに頻用される漢方薬だよ。
構成生薬
生薬名 | 効能 |
---|---|
人参 | 補気・胃腸を元気にする(四君子湯) |
白朮 | 補気・不要な水をさばく(四君子湯) |
茯苓 | 補気・不要な水をさばく(四君子湯) |
(炙)甘草 | 胃腸を元気する。薬性の調和。(四君子湯) |
(熟)地黄 | 体潤し、血を補う(四物湯) |
当帰 | 血を補い、血行をあげる(四物湯) |
芍薬 | 血を補う、筋肉を和らげる(四物湯) |
川芎 | 気血の流れを改善・止痛(四物湯) |
黄耆 | 補気・補血を強化する |
桂皮 | 体を温める |
補気薬(気を補う)の代表方剤である四君子湯(しくんしとう)と補血(血を補う)代表方剤である四物湯(しもつとう)がベースです。
とってもいい処方なんだけど製品になってないんだ。
ここに身体を温める桂皮と補気を強める黄耆を加え、大棗と生姜を除いた構成になっています。
良く使う症状
体力虚弱なものの次の諸症:病後・術後の体力低下,疲労倦怠,食欲不振,
ねあせ,手足の冷え,貧血
厚生労働省 薬局製剤指針より引用
疲れやすい人(女性)
十全大補湯は疲れやすく、貧血傾向の女性にぴったりな漢方薬です。
もちろんダメではないのです。
ただ、女性は生理などの関係で「血」が不足しやすいです。
補気、補血の両方ができる十全大補湯は疲れやすく、冷えやすい女性にピッタリの処方です。
もちろん男性でも貧血などの血虚の所見がある場合はOKです。
術後・病後の体力低下
大病・手術では大量の気血を消耗します。
補気・補血が両方できる十全大補湯は術後・病後の体力低下にとても有効な漢方薬です。
手足の冷え(虚証)
古典にはさほど温めないと記載されていますが、個人的には冷え性の人に向いた処方だと思っています。
十全大補湯はほとんどが温性の生薬で構成されています。
そして肉桂(桂皮)が入ることでその温性がさらに強まり冷え性の改善に役立ちます。
ただどんな冷えにも有効ではありません。
十全大補湯が得意なのは虚証の冷え!
特に気血が不足した冷えです。
大きい手術や病後に体力が落ちた時の冷えなどは最適です。
逆に
- 寒いところに行った
- 冷たい飲食物を食過ぎた
- 風邪をひいて寒気がする
貧血
内容がかぶりますが血虚の人に有効。
十全大補湯は処方内に四君子湯(胃腸の機能を改善する漢方薬)を含むので補血薬を単独で使用するより胃腸の負担が少ないです。
注意すべき点
とても便利な十全大補湯ですが注意点もあります。
胃腸弱の人は注意
四君子湯を含み胃腸の負担は少なめですが注意は必要。
胃腸が極端に弱いタイプには当帰、地黄の補血薬が負担になってしまう場合があります。
服用後、胃が重くなったり、下痢をする人は他の漢方薬にしましょう。
体を温める処方
十全大補湯は体を温める漢方薬なので
- ひどい皮膚炎
- ほてり
- 寝汗
このような症状がある人には向かないです。
注意しましょう。
まとめ
病後、術後の体力回復や疲労に大活躍の十全大補湯。
簡単にまとめると
- 気血を両方補うことができる
- 病後・術後の体力回復に有効
- 男性よりも女性向き
- 冷え性向き
- 胃腸が弱い人は注意する
体が充実すると心も落ち着くよ!