下痢気味でお腹痛い。
みなさん、こんにちは!
漢方薬剤師の玄(@gen_kanpo)です。
体が冷える⇔不要な水がたまる
この悪循環は漢方相談の現場でよく出会います。
この時に活躍するのが真武湯(しんぶとう)です。
あまり有名ではないですが非常に優秀な漢方薬です。
ぜひ覚えていってくださいね。
- 体が冷える
- 下痢しやすい
- 浮腫みやすい
真武湯ってどんな漢方?
簡単に説明すると
冷えと水分代謝を改善する漢方薬です。
水分代謝に関わる脾(胃腸)・腎が冷えることにより不要な水が溜まると様々な症状が出ます。
真武湯は脾・腎を温めることで水分代謝を改善する処方です。
出典の傷寒論には
※超意訳
- 風邪の初期で、汗をかいたが治らず、発熱、胃の辺りに動悸、めまい、ふるえがあり倒れそうな人は真武湯で治す。
- 少陰病という邪が深く入り込んでしまったときに2.3日たってもよくならず、4.5日後に腹痛、尿の出が悪い、手足が重だるく痛む、下痢する人は水が溜まってる、咳をして尿が出るまたは出ない人、吐き気がある人は真武湯で治す
真武湯は②の条文に書いてある少陰病の代表処方です。
少陰病とは邪が体表面から内部に侵入している状態です。
そのため真武湯は
- 高齢者
- 体力虚弱者
- 慢性の冷え
- 水分代謝が衰えている
などに応用し使われることが多い処方です。
①の条文は風邪の初期に発汗をし過ぎたために体を温める陽気が失った状態と考えられています。
体力がある人でも風邪の治療を間違えるといきなり少陰病になることもあるから注意です。
真武湯は別名【玄武湯】
これは中国の四方を守る守護神の名前が由来です。
玄武は北を守る守護神
五行説では北は腎・水を同じ仲間です。
玄武も水をつかさどる神なのでこの名前がつけられたとされます。
構成生薬
≪生薬名≫ | ≪効能・効果≫ |
---|---|
附子 | 体を温め水分代謝を上げる |
茯苓 | 胃腸に不要な水が溜まらないようする |
白朮 | 胃腸に不要な水が溜まらないようする |
生姜 | 附子の働きを助ける |
芍薬 | 附子の効能を体の奥に届ける 腹痛を治す |
附子・生姜を含む処方になるので温める作用はとても強いです。
特に脾(胃腸)、腎の冷えに良いとされています。
ここに利水薬の茯苓・白朮が加わり全体的に体を温め水分代謝を上げる処方構成になっています。
芍薬の意味は本によってまちまちなのですが
- 温め過ぎの予防
- 痙攣(けいれん)を去る効果
- 附子の効能を奥にもっていく
このような意味合いで構成されていると考えられています。
よく使う症状
【適応症】
体力虚弱で、冷えがあって、疲労イ卷怠感があり、ときに下痢、
腹痛、めまいがあるものの次の諸症:
下痢、急・慢性胃腸炎、胃腸虚弱、めまい、動悸、感冒、むくみ、湿疹・皮膚炎、皮膚のかゆみ
三和製薬HPより引用
冷え性
高齢者の慢性的な冷えに使うことが多いです。
同じ使い方をする漢方薬で有名な『八味地黄丸(八味丸)』があります。
とても良い処方なのですが胃腸に負担がかかるのがネックです。
真武湯には胃腸をととのえる生薬が含まれるので胃腸が弱く八味丸が使えない時にとても便利に使うことができます。
下痢
冷えて慢性的になった下痢に使います。
特に明け方の下痢(五更泄瀉)がある人にはとても良く効きます。
同じ下痢で有名な漢方に五苓散があるけどあちらは太陽病というもう少し病位が浅いときに使われる処方です。
間違えないようにね。
むくみ
水分代謝が衰えて起こるむくみに使います。
などと言いますが、真武湯が効くのは『陰水』のタイプです。
飲みすぎよりも体が弱って水分代謝が悪いタイプの人に有効です。
風邪(感冒)
こじれた風邪や寒気が非常に強い風邪に応用することがあります。
ちょっと専門的に書くと
真武湯が良く効く『少陰病』は葛根湯や麻黄湯が良く効く太陽病と表裏の関係。
太陽病の治療が上手くいかないといきなり少陰病に入ってきてしまうことがあります。
また、虚弱の人はいきなり邪が奥に入り込んできてしまうことがあります。
そのような時も真武湯をよく使います。
邪が奥に入り込んでいるので症状としては発熱よりも寒気が強い場合になることが多いです。
同じ意味で麻黄附子細辛湯もよく使いますがこちらは水に対するアプローチは弱いです。
下痢やむくみの症状があるなら真武湯を選ぶようにしましょう。
- 邪が体表面にある時→葛根湯、麻黄湯など
- 邪が体内に侵入→真武湯、麻黄附子細辛湯など
注意すべき点
温める・乾かす作用が強い
附子が含まれる処方なので温める作用が強いです。
そして利水作用もあるので
- ほてり
- 乾燥肌
- 便秘
- 動悸
などがある人は十分に注意しましょう。
妊婦さんなども注意しといたほうがベター。
服用したい場合はきちんと相談してからにしましょう。
寒冷蕁麻疹(じんましん)なら使います。
まとめ
寒い時期や虚弱者に便利な漢方薬【真武湯】
使い方を覚えておくと(特に冬場に)とても強力な味方になってくれます。
簡単にまとめると
体を温め水分代謝をあげる漢方薬
【よく使う症状】
- 冷え性
- 下痢
- 浮腫み
- こじれた風邪
【注意すべき点】
- 体を温める・乾かす作用が強い(附子剤)
でも、どうしてそんなに冷えたり浮腫んだろうね~?
寒いのに薄着で冷たい物ガンガン飲んでたからかな!
ちなみにオールで飲んでたよ☆