みなさん、こんにちは!
漢方薬剤師の玄(@gen_kanpo)です。
- 思い悩んで食欲が低下
- 驚いて気が動転
こんな経験はありませんか?
病気の原因は外からやってくるものもありますが、内側からにじみ出てくるものもあります。
それが【七情】です。
外から来る邪への対策も大事ですが「敵は内にあり?」メンタルケアも大事ですよ。
今回はこの感情と体に起こす影響「七情(内傷)」を解説していきます。
- 感情が高ぶりやすい
- 他人の感情に振り回される
- 感情で体調が悪化する
七情内傷
中医学では病気になる原因を3つの因子で考えます。
- 外因→人体の外からくる病因
- 内因→人体の中にある感情が猛烈なったもの(七情)
- 不内外因→それ以外(飲食物、疲労など)
七情この内の内因になります。
具体的には喜・怒・憂・思・悲・恐・驚の七つの感情のことを指します。
この感情たちはけっして悪者ではありませんよ。
人間らしい生活をするには無くてはならないものです。
通常のレベルの問題ないですが「突然」「強烈」「長期にわたり」感情の刺激を受けると限度を超え、体の調子を崩す原因となります。
コレが「七情内傷(しちじょうないしょう)」です。
気血や臓腑の動きが乱れたり、消耗してしまいます。
感情によって影響を及ぼす臓腑や違うとされます。
喜び(楽しい)
忙しい現代人にとって大事にしたい感情です。
「気則気緩」→喜べばすなわち気は緩む
喜び(楽しみ)が影響するのは五臓の心。
五臓の心(しん)は意識や精神活動の中枢の臓です。
楽しいことがあるとホッコリするように適度な喜び(楽しい、嬉しい)は気を緩めて精神の緊張を和らげてくれます。
心は別名「君主の官」
※君主とはお殿様や王様
君主がご乱心だと国の政治がめちゃくちゃになります。
大事な「喜」も度が過ぎると心気を緩めすぎてしまい…
不眠や動悸などの症状が出やすくなります。
さらに続くと精神不安やハイテンションなどメンタルにも影響するので注意しましょう。
楽しいこととは言え「過ぎたるは猶及ばざるが如し」です。
【笑い(喜び)には免疫を高める可能性がある?】
「漫才や新喜劇で笑ったあとは免疫に関わるNK(ナチュラルキラー)細胞が正常化する」
という研究もあるそうです。
病気やストレスがあると「笑い(≒喜び)」が少なくなりがちです。
ツライ時こそ積極的に楽しい事や笑いに触れていきたいですね。
怒り
現代人が高ぶりやすい感情です。
春に強く出やすい感情とされます。
過度な怒りは五行説で春と同じ「木」に属する肝に悪影響をあたえます。
肝は別名「将軍の官」外邪と戦うための謀略を考える臓です。
「怒」は外敵から自分を守る大切な感情です。
外敵になりうる刺激が多い現代日本では高ぶり過ぎに注意が必要です。
「木」が伸びやかに成長するように肝も抑圧を嫌う性質があります。
「怒則気上(どそくきじょう)→怒りは気を上げる
- 血を貯える→蔵血作用
- 気血の流れを調整する→疏泄(そせつ)作用
過度な怒りは肝の疏泄と蔵血作用が失調。
エネルギー(気)の調整機能が乱れ「気血」を逆流させてしまいます。
具体的には目が血走る、頭痛、眩暈などの症状が出やすいです。
また「脾(消化器官)」は「肝」の助けをかりて消化吸収をおこなっています。(疏泄機能の一部)
- 過度に助ける→過食、胃酸過多、食欲増進
- 助けなくなる→胃もたれ、胃痛
上記のような胃腸の不調も出やすいです。
肝は自律神経や生理なども調整しています。
生理の乱れやPMSがひどい人は日頃からアンガーマネジメントをしておくと良いですよ。
思う
「思い込む」や「考え過ぎる」ということです。
五行説の「土」に属し長夏(夏のあと1か月)に敏感になりやすい感情です。
※日本では梅雨時期と考えてOKです。
「思則気結」→思えばすなわち気は結ぶ
過度な思い悩みは脾(≒胃腸)の気を滞らせます。
胃腸の動きが悪くなり食欲不振や便秘、胃の膨満感など「張る(≒結ぶ)」症状が多くなります。
動くと楽になったり、何かしている時は気にならないというのも特徴的です。
脾胃は後天的にエネルギー(気血津液)を作る場所。
胃腸の動きが悪い状態を放置すると疲労や精神不安などの二次的な不調を招きます。
- 早く寝る
- 好きな音楽を聴く
- 集中できることを増やす
物理的に考える時間を少なくするのも大事です。
特に夜は思慮過度で不眠になる人もいます。(特に特に日曜日の夜!!)
考える時間を少なくするためにも早めに寝ちゃいましょう。
悲しみ
「悲」(憂)の感情は秋に出やすい感情です。
「悲則気消」→悲しめばすなわち気消す
過度な悲しみは肺の気を消耗します。
肺は皮毛などを主り体表面を防御する働きがあり、
- 自汗(暑くないのに汗)
- 風邪をひきやすい
- 意気消沈
- 疲れやすい
などの症状が出やすいです。
季節の変わり目の秋は「陽→陰」の時期なのでただでさえ体は疲れやすいです。
悲則気消+季節の変わり目=めちゃ疲れる
秋じゃなくても疲れやすい人、風邪(かぜ)を引きやすい人は過度な悲しみからは離れましょうね。
SNSやテレビの悲しいニュースなどの受動ストレスにも注意です。
気を失う、失いそうなら補うことを意識しましょう。
養生の基本である睡眠や胃腸の調子を大切に!
ハイキング、登山などで自然のパワーを吸収するのも良いですよ!
「悲」と「憂」は似ている感情で一緒にされる事が多いです。
憂は心が鬱々として楽しめないことを言います。
「思」とも似ている感情なので過度になると脾も傷つけるとも言われています。
恐れ
冬に敏感になる感情その1「恐」
冬の臓「腎」は「精」という体の根幹を主る物質を貯える「蔵精作用」があります。
「恐則気下」→恐るればすなわち気は下る
過度な恐怖は腎のエネルギー(気)を下げてしまい「精」が漏れ出してしまいます。
精が漏れ出す具体的な症状としては失禁・早漏・脱毛・歯が抜ける、流産などがあります。
驚き
冬に敏感になりやすい感情その2は「驚」です。
「驚則気乱」→驚けばすなわち気は乱れる
「驚いて気が動転する」というように過度な驚きは五臓の腎と心が乱します。
- 腎が乱れると記憶力減退、集中力低下
- 心が乱れると動悸、不眠、パニック
という症状がおこりやすいです。
近年、人を驚かすテレビ番組(ドッキリ)がありますが上記のように過度な驚きは心身にダメージを残します。
多少なら良いかもしれませんが真似しすぎないように気をつけましょうね!
【恐と驚の違い】
- 「恐」は予測している物事に対しての感情
- 「驚」は予測できないことが突然発生した時の感情
まとめ
今回は中医学での病の原因「七情」について解説しました。
自分や周りの人がいつも決まった感情に悩まされていたら参考にしてみてくださいね。
今回の内容をまとめると
【七情内傷】
喜・怒・憂・思・悲・恐・驚の七つの感情が過度に刺激を受けると限度を超え不調の原因になる。
- 喜則気緩→喜べばすなわち気は緩む
- 怒則気上→怒ればすなわち気は上る
- 思則気結→思えばすなわち気は結ぶ
- 悲則気消→悲しめばすなわち気は消える
- 恐則気下→恐るればすなわち気は下る
- 驚則気乱→驚けばすなわち気は乱れる