これだけ暑いとこんな風にもなっちゃうよね!
みなさん、こんにちは!
漢方薬剤師の玄(@gen_kanpo)です。
さぁ。今年も暑い夏がやって来ましたね!
夏バテになっていませんか?
夏になると
- 食欲不振
- 疲労倦怠感
- 体重減少
- 下痢
この様な症状が流行ります。
そして、これら夏の症状に効く西洋薬は少ないです。
一時的に症状を和らげる事ができても、根本治療に至らないケースが多いです。
そこで漢方薬が大活躍!
「夏バテ」と呼ばれる症状に対しての良薬があります。
その代表処方が今回解説する
「清暑益気湯(せいしょえっきとう)」
いかにも夏に聞きそうな名前でしょ!
近年の暑い夏に知っておかない手はありませんよ。
そこで、今回は夏バテの切り札「清暑益気湯」について解説していきます。
- 夏バテになりやすい
- 夏が苦手
- 普段から胃腸が弱い
清暑益気湯ってどんな漢方薬?
簡単に解説すると、清暑益気湯は名前の如く
暑さを清め、益気(気を増やす)する漢方薬です。
でも、症状があっていれば夏じゃなくても使っていいんじゃよ!
具体的には夏の暑さによる
- 食欲不振
- 下痢
- 倦怠感
このような、いわゆる夏バテと呼ばれる症状に有効です。
出典は李東垣の『内外傷弁惑論』
現在、日本で採用されているのは李東垣先生の処方をもとに改良した清暑益気湯を使用しています。
名前に益気湯という様にジャンルとしては補剤(エネルギーを補う漢方薬)に属します。
清暑益気湯の特徴①体冷やす
清暑益気湯は暑さを清める漢方薬なので体を冷やす性質があります。
基本的に気を補う漢方薬は「体を温める」生薬が中心になることが多いです。
これは気を作る脾胃が冷えに弱いため。
補気する漢方薬で「体を冷やす」のは珍しいです。
これは、夏のために考案された処方であるので当たり前なのですが、実際の現場では
- 気が足りない
- 体がほてる
夏以外でも、この様な症状に遭遇することがあります。
複数の漢方薬を併用できるなら良いですが、単味でしか使えない場合はとても便利です。
清暑益気湯の特徴②生脈散を含む
清暑益気湯には気陰両虚(体を潤し、元気にする)の代表処方「生脈散(しょうみゃくさん)」という漢方薬が含まれています。
この漢方薬も大量に汗かく夏に大活躍。
夏の暑さで失った気と陰(体液)を補うことができます。
また、中医学的には脱水症状の予防にも使用することができるので、治療と予防の両方に応用することができます。
生脈散は「体を冷やす」作用はなく、「気と陰を補う」漢方薬です。
- 熱症状が強いときは清暑益気湯
- 熱中症の予防や熱症状が少ない場合は生脈散
このように使い分けることが出来ると、酷暑の夏を乗り切るヒントになります。
構成生薬
≪生薬名≫ | 《効能》 |
---|---|
人参 | 体を元気にし、潤す |
黄耆 | 体を元気にし、不要な水分を抜く |
白朮 | 胃腸を調え、余分水分を抜く |
当帰 | 補血、体を潤す |
麦門冬 | 体を潤す |
陳皮 | 胃腸を調える |
五味子 | 体液の漏れを防ぐ |
甘草 | 体を元気にする。薬性を調和する |
黄柏 | 体を冷やし余分な湿気を去る |
全体の構成として
- 元気をあたえる
- 体を潤す
- 胃腸を調える
- 体を冷やす
この様な生薬がバランスよく配合されています。
清暑益気湯には白朮や陳皮といった胃腸の動きを調える生薬が含まれます。
また、潤す生薬と不要な水分を排出する生薬がバランスよく構成され、食欲不振や水分の取りすぎによる下痢にも対応する事ができます。
ちなみに…
同名の処方:清暑益気湯(王氏)には西瓜翠衣という生薬が含まれます。
これは西瓜(スイカ)の皮。
スイカは清熱、解暑、止渇、利水、解酒と清暑益気湯に「近い」作用がある食べ物です。
清暑益気湯が手に入らないときはスイカを代用しても良いかもしれませんね。
よく効く症状
体力虚弱で,疲れやすく,食欲不振,ときに口渇などがあるものの次の諸症:暑気あたり,暑さによる食欲不振・下痢,夏痩せ,全身倦怠,慢性疾
患による体力低下・食欲不振 厚生労働省 薬局製剤指針より引用
夏バテ
夏の暑さが原因の疲労感や食欲不振をともなう症状にとても有効です。
元気をつけ胃腸の働きを助けるので
- 体重減少
- 疲労倦怠感
- 食欲不振
- 下痢
こんな時にも有効な漢方薬です。
また、上記の通り失った体液(陰)も補給でき体を冷やす作用があるので夏バテの広い範囲で使用することが出来ます。
補中益気湯を使いたいけど温めたくない時
「補いたいけど冷やしたい!」
こんな時もあります。
基本的に補気補血の漢方薬は体を温めるものが多いです。
炎症がある人は温めると症状が悪化することがあります。
清暑益気湯は補・冷・潤がバランスよくはいっているので、炎症を悪化させたくないけど元気をつけたいときに有効です。
注意すべき点
補中益気湯とうまく使い分ける
清暑益気湯は潤し、元気をつけ、体を冷やす漢方薬。
単純に元気をつける処方であれば補中益気湯の方が効能は上です。
- ほてり
- 口渇
- 汗
このあたりの熱と燥の状態を見極めるようにしましょう。
体を冷やす作用は強くない
清暑益気湯でしっかり冷やす(清熱)生薬は黄柏だけ。
そのため、炎症をとったり、冷やす作用は黄連解毒湯や白虎加人参湯に劣ります。
急性期で熱症状が強い時は上記の様な漢方薬の方がよいでしょう。
夏バテにも種類がある
夏バテというのは決まった定義がなく「夏に起こる不具合」の総称で使われることが多いです。
もちろん、暑さが原因で起こる不具合なら清暑益気湯が有効です。
ただ、最近では
- 冷房のかけすぎ
- 冷たい飲食物の取りすぎ
- 水分の取りすぎ
このような事が原因で胃腸の機能が低下。
気血を作ることができず、夏バテになる人も多くいます。
前述したとおり清暑益気湯は
- 体を冷やす
- 体を潤す
- 胃腸を元気にする
このような漢方薬です。
体を冷やし、潤すことで悪化する人もいますので注意しましょう。
- もともと胃腸が弱い人は【補中益気湯】
- 本来は胃腸が強いけど冷たい物を飲食物をとりすぎた人は【藿香正気散】
「夏バテ=清暑益気湯」ではありません。
適切な漢方薬を選べるようにしましょう。
夏バテで使うポイント
- 熱中症が少し慢性化し胃腸障害まで発展
- もともと胃腸の弱い人が、炎天下で大量に汗をかき体液を失い熱感、口渇の症状がでる
まとめ
夏バテ対策にオススメな漢方薬「清暑益気湯(せいしょえっきとう)」
これからの夏は暑くなりそうなので使い方を知っておくととても便利です。
簡単にまとめると
清暑益気湯は暑く大量に発汗し気と陰を失ったときに有効な漢方薬
- 冷やしながら元気をあたえる
- 体を潤す
- 不要な汗を止める
- 胃腸を整える
- どんな夏バテにも有効というわけではない
まぁ元気になってよかった!
(ちょっとウザいけど)