
寝汗もかくし。イライラもするし加味逍遙散かしら??
他の原因もあるかもね。陰虚(いんきょ)による熱かもしれないよ。
みなさん、こんにちは!
漢方薬剤師の(@gen_kanpo)です。
夜に体がのぼせたり、寝汗をかくことはありませんか?
その原因の一つに 「陰虚(いんきょ)」 があります。
特に更年期の女性や、年齢を重ねた方によく見られる症状です。
そんな時に活躍するのが 知柏地黄丸(ちばくじおうがん) です。
今回はこの「のぼせ・ほてり」に活躍する漢方薬「知柏地黄丸」について詳しく解説していきます。
- 体が火照る
- 手足が熱い
- 年齢を重ねて疲れを感じる
- 更年期の症状に悩んでいる
知柏地黄丸ってどんな漢方薬?


簡単に説明すると、
腎陰虚(じんいんきょ)による火照り・のぼせに用いる漢方薬 です。
出典の医宗金鑑の巻三には
知柏地黄丸は、六味地黄丸に 知母・黄柏 を加えた処方であり、両尺の脈が旺盛(=相当活発な火性を示す脈状)、陰虚火動(陰が不足し、火が動きやすい状態)などの症状を治す。特に 午熱骨痿(昼間や午後の熱感、骨の虚弱)、そういった火旺の症状を抑えるため、水を壮えさせて、陽(=過剰な熱)を制する ※超意訳
このようなことが書かれています。
この陰虚による熱症状の特徴としては
- イライラを伴う
- 夜になると悪化する
- 寝汗が出る
- 口や喉の渇き、舌の乾燥
などが挙げられます。
この熱は「虚熱(きょねつ)」と呼ばれます。
体を冷やしたり潤したりする陰(いん)が不足したために生じる熱で、午後になると体がほてる、寝汗、骨の奥が熱い感じなどが特徴です。
これに対して「実熱(じつねつ)」とは、細菌感染や炎症などによって強い熱が生じる状態を指します。
例えば扁桃炎で高熱が出る、関節が腫れて赤く熱をもつ、といった症状です。
一方で、熱の邪気に侵された「実熱(じつねつ)」の場合は、黄連解毒湯 や 白虎加人参湯 などを使います。
構成生薬
| 地黄(じおう) | 滋陰・補血の代表生薬 体の潤いを養い、血を補ってほてりや乾燥を改善する |
|---|---|
| 山茱萸(さんしゅゆ) | 補肝腎・固精の作用 腎を強めて体力低下や汗のかきすぎを防ぐ |
| 山薬(さんやく) | 補脾肺腎の要薬 消化機能を助け、体力を底上げしつつ腎もサポートする |
| 沢瀉(たくしゃ) | 利水滲湿の働く 余分な水分を排出し、むくみやのぼせを改善する |
| 茯苓(ぶくりょう) | 健脾利水の生薬 胃腸を整え、余分な水分をさばいて心身を落ち着ける |
| 牡丹皮(ぼたんぴ) | 清熱涼血・活血の作用 血行を促し、のぼせやイライラを鎮める |
| 知母(ちも) | 清熱・滋陰の働く 体の熱を冷まし、乾燥やほてりを和らげる |
| 黄柏(おうばく) | 清熱燥湿・解毒の作用 体内の余分な熱を取り除き、炎症やほてりを鎮める |
六味丸に 知母・黄柏 を加えた構成です。
この2つの生薬はともに体の余分な熱を去る作用があります。
知母は「潤す」性質、黄柏は「乾燥させる」性質を持ち、このバランスよって余分な熱だけを下げる働きをしています。
六味丸との関係
知柏地黄丸は、六味丸(ろくみがん) をベースにした処方です。
– 六味丸 … 腎気虚の基本処方。成長・発育・生殖をつかさどる腎のエネルギーを補う
– 八味地黄丸 … 六味丸+桂皮・附子(体を温める生薬)で「腎陽虚(冷えタイプ)」に対応
– 知柏地黄丸 … 六味丸+知母・黄柏(体の熱を去る生薬)で「腎陰虚(ほてりタイプ)」に対応
よく使う症状


体力中等度以下で,疲れやすく胃腸障害がなく,口渇があるものの次の諸症:顔や四肢のほてり,排尿困難,頻尿,むくみ 厚生労働省:薬局製剤指針より引用
顔や四肢の火照り
メインで使う症状です。
前述の通り知柏地黄丸は虚熱に対して有効な漢方薬。
特に年齢を重ねた時や、熱病の後などに現れやすい 陰虚による火照り に有効です。
女性の更年期に多い ホットフラッシュ にも効果的な場合があります。
【加味逍遙散や桂枝茯苓丸との違い・併用について】
加味逍遙散や桂枝茯苓丸も「のぼせやホットフラッシュ」に活用されます。
加味逍遙散は「気の巡りを整え、ストレスや自律神経の乱れに伴う症状を和らげる」ことを得意とする逍遥散に熱を去る山梔子、牡丹皮を加えた処方。
一方、桂枝茯苓丸は「血の滞り(瘀血)を改善し、下腹部の張りや月経痛、のぼせなどを和らげる」ことに用いられます。
どちらも女性に使われる機会が多い処方ですが、その働きには違いがあります。
- 気の停滞が中心で強いイライラ・不安・疲れやすさが目立つ方には加味逍遙散
- 血の滞りが中心で下腹部痛・経血異常・顔のほてりが目立つ方には桂枝茯苓丸
が適しています。
また、症状によっては知柏地黄丸と併用することもあります。
陰虚に「気」と「血」からも働きかけることで、より幅広い不調に対応できるのが特徴です。
ただ、漢方薬を組み合わせる場合は体質や症状を深く観察することが大切です。
自己判断ではなく専門家に相談することをおすすめします。
腎虚の症状
六味丸をベースにしているため、腎虚の症状にも対応します。
具体的には
- 頻尿、排尿困難
- 腰痛、ひざの痛み
- 体の疲れ
これらに 火照りの症状が加われば知柏地黄丸の適応 となります。
注意すべき点


体を冷やす処方
知柏地黄丸は体の陰を補い、熱を冷ます処方です。
そのため、実熱の漢方薬程ではないですが、冷えやすい人は慎重に選びましょう。
陰虚火旺が明確でない場合は、まず 六味丸 から試すのが安心です。
胃腸への負担
冷やす性質の生薬に加え、メイン生薬の地黄は、ベタベタして消化に負担をかける性質があります。
※このベタベタが陰を補うのには良い
胃腸が弱い人は、
- 食後に服用する
- 胃腸を助ける漢方薬を併用する
- 他の処方を選ぶ
といった工夫が必要です。
胃腸は体のエネルギー工場!
私は胃腸の調子を落としてまで飲む漢方薬はないと思っています。
きっと良い漢方薬を紹介してくれます。
まとめ


今回は腎陰虚の火照りに使う漢方薬「知柏地黄丸」を紹介しました。
更年期の火照りや寝汗、年齢を重ねたときののぼせに悩む方に覚えておきたい漢方薬です。
今回の内容を簡単にまとめると
陰虚の虚熱は睡眠不足や慢性的なストレスが悪化要因だから注意しようね。
気をつけるわ!
「のぼせ・ほてり」には漢方薬も効果的ですが、日々の養生も欠かせません!
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