心の養生とは?東洋医学に学ぶ、今日からできるメンタルケア

みなさん、こんにちは!
漢方薬剤師の玄(@gen_kanpo)です。
最近、メンタルや「心」に関する漢方相談が増えていると感じています。
背景には、仕事上の不安や世界情勢の不安定さなど、先の見えにくい状況があるのかもしれませんね。
さらに、SNSやインターネットの普及により、不安や不満の声に触れる機会も増えました。
知らず知らずのうちに、心が消耗している方も少なくない印象です。
日々、心身の不調に悩む方と向き合う中で、私はあらためて「心のケア(心の養生)」の重要性を実感しています。
東洋医学では古くから、「心と体は切り離せないもの」と考えられてきました。
そこで今回は、心の養生とは何か?そして、現状や今日から実践できるポイントを整理していきます。
- 心が疲れやすい
- ストレスを受けやすい
- ストレスで体の不調が現れる
心の不調はなぜわかりにくい?「いつもと違う」を見る視点


心の不調は、血液検査や画像診断など客観的な検査値に現れません。
※ストレスが原因で起こる身体症状が出ることもある
外から見てもわかりにくく、本人ですら気づかないことがあります。
そのため、重要なのは「結果」ではなく、普段と比べた変化です。
具体的には、
- 食欲や睡眠の変化
- 表情や声のトーン
- 反応・作業ミスの増加
心の不調から起こる反応
① 身体的反応
頭痛や胃腸の不調、動悸、睡眠の乱れなど、体の症状として現れるものです。
これらは自覚しやすく、「いつもと違う」と気づきやすい傾向があります。
② 心理的反応
不安感、気分の落ち込み、イライラ、焦燥感など、心の状態として現れるものです。
本人も体感はしていますが、「気の持ちよう」「自分が弱いからだ」と考えてしまい、対処が難しくなりがちです。
ときに自虐的・否定的な認知へと傾くこともあります。
③ 行動的反応
遅刻やミスの増加、人付き合いを避ける、表情が乏しくなるなど、行動の変化として現れるものです。
これは本人よりも、周囲の人のほうが先に気づくことが少なくありません。
症状に気づくためには、自分の感覚だけでなく、家族や同僚など周囲からの指摘や変化のフィードバックも大切になります。
【プレゼンティーズム】
近年注目されているのがプレゼンティーズムです。
これは「出勤しているが、本来のパフォーマンスが出ていない状態」を指します。
日本の研究では、精神的不調によるプレゼンティーズムは、
医療費よりも大きな経済損失を生んでいると報告されています。
心の養生は、個人だけでなく社会全体の課題でもあります。
心が乱れると体も乱れる


東洋医学では「心身一如(しんしんいちにょ)」という考え方があります。
これは、心と体は切り離せない一体のものだという思想です。
心と体は常に相互に影響し合っており、どちらか一方だけが不調になることは基本的にありません。
心が乱れれば体に影響が現れ、体が弱れば心もまた不安定になります。
この考え方は、西洋医学では「心身相関」と表現されます。
近年の医学研究でも、心理的ストレスが自律神経やホルモン、免疫系に影響を与えることが明らかになっています。
具体的には…
- ストレスで胃腸の調子が悪くなる
- 不安が続くと眠れなくなる
- 緊張で肩こりや頭痛が出る
このように、体の不調は単なる身体の問題ではなく、心からのサインであることも少なくありません。
症状だけを切り離して考えるのではなく、「最近どんなストレスがあったか」という視点も大切になります。
よくご相談を受ける、心身の関連が強い症状をいくつかご紹介します。
■ 過敏性腸症候群|器質的異常がなくても起こる不調
過敏性腸症候群(IBS)は、内視鏡検査や血液検査では明らかな異常が見つからないにもかかわらず、
腹痛、下痢、便秘、腹部膨満感などの症状が慢性的に続く疾患です。
特徴的なのは、ストレスや緊張が強くなると症状が悪化し、
反対にリラックスできる環境では改善しやすいという点です。
腸は「第二の脳」とも呼ばれ、自律神経の影響を非常に強く受けます。
ストレス過多の状態では交感神経が優位になり続け、腸のぜん動運動や分泌機能が不安定になります。
中医学では、この状態を「気滞(きたい)」と捉えることが多く、
気の巡りが滞ることで腹部症状や張り感、痛みが起こると考えます。
実際に「気持ちが張りつめるとお腹も張る」「不安になるとすぐ下痢をする」といった訴えは少なくありません。
■ 緊張性頭痛|脳に異常がなくても起こる頭痛
緊張性頭痛は、脳そのものに器質的な異常があるわけではなく、
精神的ストレスや持続的な筋緊張によって起こる頭痛です。
長時間の緊張状態が続くと、首や肩周囲の筋肉が硬くなり、血流が低下します。
その結果、頭を締めつけられるような鈍い痛みが生じます。
緊張性頭痛の特徴は、リラックスすると症状が和らぎやすい点です。
心の緊張がほどけると、体の緊張も緩み、血流が改善するためです。
一方で、「重い病気なのではないか」という不安が加わると、そのストレス自体がさらに筋緊張を強め、痛みを悪化させることもあります。
逆に、医師から「重大な異常はない」と説明を受けて安心すると、頭痛が軽くなることも珍しくありません。
今日からできる「心の養生」


では、どのように対策していけばよいのでしょうか。
外からくるストレスや緊張がなくなれば理想的ですが、現実にはそれはなかなか難しいものです。
だからこそ大切なのが、心を守るための養生です。
心の養生とは、完璧を目指すことではありません。
乱れたら整える。その繰り返しが、心と長く付き合っていくためのコツです。
無理をせず、できることからひとつずつ。
少しずつ取り入れていきましょう。
まず「変化に気づく」
心の養生で最も大切なのは、小さな変化に気づくことです。
いつもと違うサインを、見逃さないこと。
心の不調は、自分でも周囲でも気づきにくいものです。
そのため、「気づいたときには悪化している」ということも少なくありません。
だからこそ大切なのは、「いつもと違う」を放置しないこと。
小さな違和感の段階で立ち止まることが、心を守る第一歩になります。
五臓の「心」は君主の官|喜びは気をゆるめる


中医学で「心(しん)」は君主の官とされ、精神活動を統括する中心的な存在です。
心には「こころ」の意味と「心臓の機能」としての意味があります。
この心と同じ五行説の「火」に属するのが「喜」の感情です。
感情との関係では「喜則気緩(きそくきかん)」と考えられています。
これは、喜びや楽しいという感情は安心感は気をゆるめる、という意味です。
無理に前向きになる必要はありません。
ほっとできる時間や、安心できる瞬間を持つこと自体が心の養生になります。
趣味や没頭できることを作るのは心の養生としてはとても大切です。
また、人の迷惑をかけていないなら他人の「好き」をバカにしたり、否定しないようにしましょうね。
精神的に依存できる先があると人は安心する
人は誰でも、心を預けられる相手や場所があると安心します。
- 話を聞いてくれる人
- 弱音を吐ける相手
- 医療機関や相談窓口
精神的な依存先を持つこと自体は、決して悪いことではありません。
ただし、一つに依存しすぎないことも大切です。
例えば、相談の時間に区切りをつけるなど、距離感を意識する工夫も必要です。
そうしないと、無意識のうちに依存が強くなってしまうことがあります。
また、愚痴を聞いてもらったときは、きちんと感謝を伝えましょう。
話した側は楽になりますが、聞く側には少なからず負担がかかっています。
結果的にどちらにとっても良い関係とは言えなくなってしまいますよ。
運動は心にも効く|コルチゾールと気の巡り


適度な運動は、ストレスホルモンであるコルチゾールを低下させることが分かっています。
【コルチゾール】
ストレスを受けたときに副腎から分泌されるホルモン。
血圧や血糖値を上昇させ、身体を緊急事態に備える働きがある。
慢性的に分泌が続くと、免疫機能の低下や胃潰瘍などのリスクを高めることがある。
東洋医学的にも、運動は気の巡りを良くする重要な養生法です。
イライラしたり、鬱々としたときは気が滞ってる証拠。
滞ってるに対しては巡らすことが養生の基本です。
運動というとトレーニングジムやランニングをイメージする方も多いですが、簡単なものでOK!
逆に、激しい運動は交感神経を亢進させてしまう可能性があるため、コルチゾールの消費を目的とした運動は「有酸素運動」が適しています。
- 散歩
- 軽い体操
- ストレッチ
これらのような激しい運動でなくても、十分な効果があります。
軽度のメンタル不調は「頑張る」より「休む」が優先
軽度のメンタル不調の段階では、無理に頑張るよりも、まず休むことが重要です。
東洋医学でも、過労やストレスが続くと気血が消耗し、
- 気力が湧かない
- 不安感が強くなる
- 物事を前向きに考えにくくなる
といった状態が起こると考えます。
心の養生でまず大切なのは、これ以上消耗しない状態をつくることです。
厚生労働省の指針では、健康診断やストレスチェック等によりメンタルヘルス不調が認められる労働者に対し、事業者は医師の意見を聴いた上で、労働時間の短縮、勤務負荷の制限、あるいは休業(休養)といった適切な就業上の措置を講じることが必要とされています。
これは、不調の改善だけでなく、再発防止を図るための重要な対応として位置づけられている
上記の指針からも分かるように、国は仕事などによるメンタル不調に対して、まずは無理を続けるのではなく、医師の意見を踏まえたうえで労働時間の短縮や勤務負荷の軽減、必要に応じて休業(休養)を取ることを重要な対応として示しています。
心の養生の基本は「睡眠」|休息が足りないと心も回復しない
心を休ませるうえで、最も基本となるのが睡眠です。
多くの研究で、睡眠不足や睡眠の質の低下が、
- 自律神経の乱れ
- 免疫機能の低下
- 疲労感や集中力の低下
- 不安感・イライラの増加
につながることが示されています。
また、睡眠には脳と心を整理する重要な役割があります。
- 日中に学習・経験したことを脳に定着させる
- 情報を整理し、必要なものと不要なものを仕分けする
- つらい出来事に伴う感情の強さを和らげる
つまり睡眠は、単に体を休める時間ではなく、心の疲れをリセットし、翌日に持ち越さないための大切な時間もあります。
東洋医学的に見ても、睡眠不足は気血の消耗につながり、気力の低下や精神的不安を招きやすくなります。
心が少し疲れていると感じたときは、栄養、サプリメントなどで「何かを足す」よりも、まずはしっかり眠ることを意識してみましょう。
まとめ

心の養生とは、特別なことをすることではありません。
小さな乱れに気づき、整えることを繰り返すこと。
それが、心と体を長く保つための基本になります。
今回の内容を簡単にまとめると
心の健康は自分や周りの人からも認知しにくい。
「あれ?」という違和感を放置しないようにする
- 心と体は一体であり、ストレスは身体症状として現れる
- 「心」は精神活動を統括し、安心や喜びは気をゆるめる
- 心の支えを持つことが大切
- 運動と睡眠が養生の基本軽い不調では「頑張る」より「休む」を優先する











