私に良く効く漢方薬を半分あげても良いかしら?
そして、子供の特徴を考慮した漢方薬を選ぶことが大事だよ。
大人と違うの?
みなさん、こんにちは!
漢方薬剤師の玄(@gen_kanpo)です。
「漢方薬は大人だけ?」
いえいえ、漢方薬局には子供の相談も多いですよ。
症状は様々で夜泣きや胃腸や頭痛、女の子だと生理痛などの相談が多いように感じます。
最近はお子さんも受験などストレスにさらされることが多いです。
(子供も色々お疲れです。)
じゃあ!
「大人の漢方薬の量を減らしてあげればよい?」
実はそう簡単なものでもありません。
量的にはそれでOKなのですが、子供には「東洋医学的な子供の特徴」を考慮する必要があります。
そこで、今回は【東洋医学的】子供の特徴と漢方薬について解説していきます
- 子供の調子が悪い
- 子供に漢方薬があまり効かない
- 子供の体質改善していきたい
子供は小さい大人じゃない
子供は「小さな大人」ではありません。
大人と同じ食養生や治療はしてはいけないと考えます。
教育の分野でも同じことが言われており、フランスの思想家・ルソーの考えが有名です。
ルソーの考えは社会性や教育についての話ですが、東洋医学的にも「子供は小さい大人」ではありません。
大人と同じ症状だからと「自分の漢方薬を半分あげる」様なことをすると症状が悪化する恐れがあります。
純陽
漢方の世界では子供は「純陽の体」といわれます。
よく「火の玉」とも表現されます。
子供は生命力が旺盛で動きは活発、体温が高く、陽気の塊で生命力にあふれグングン成長していきます。
子供は大人よりも漢方薬や針治療の効き目も反応も早く、風邪(かぜ)位なら、むやみにお薬を飲ませるよりも衣食住を上手にコントロールしていくだけで治っていきます。
「火の玉」とも称される子供は熱の症状が出やすいです。
子供って急に高熱になったり、湿疹などの炎症症状も出やすいですよね。
湿疹、あせも、ニキビなどの皮膚の炎症が出やすい子は、外気の温度、湿熱を生む食べ物、ストレスなど熱を生む要因を排除してあげましょう。
現代人は冬でも冷たい飲食物を好み、夏は冷房をつけるので冷えている子供が多いです。
冷たいジュースやアイスは胃腸を冷やして機能を低下させます。
重なると痰飲(不要なベタベタ)として身体に定着し局所で熱を生む原因になります。
稚陰稚陽
「稚」は幼稚園や稚魚、稚拙などに使われる漢字です。
おさない。わかい。いとけない。また、おさない者。という意味があります。
稚陰稚陽とは「陰」も「陽」のどちらもが幼稚(未発達+成長段階)でバランスが崩れやすい状態です。
【陰陽の違い】
- 陰(物質的):筋肉、内臓 など
- 陽(機能的):エネルギー、体力、気力、体温 など
特に子供は体温が高く陽気も充実しています。
陰陽が未発達なのですぐに高ぶったり(イライラ、高熱)、減少(体力低下、落ち込み)したりします。
成長であふれる陽気を維持するために、陰を補う必要があります。
陰の補給は睡眠と食事が大事です。
子供が「よく寝る」「すぐにお腹が空く」のは陰陽のバランスを取るためです。
食事と睡眠は大事にしましょう!
内蔵が未発達
子供は内臓(東洋医学では五臓)が未発達です。
具体的には、
- 肝が高ぶりやすい
- 脾胃が弱りやすい
- 肺は弱く感染症にかかりやすい
- 腎が不足してる
肝が高ぶりやすい
どんどん成長する子供は陽気が旺盛です。
ただ、それをコントロールする肝が未発達ためすぐに高ぶってしまいます。
「子供は陽気が旺盛+コントロールする肝が未発達」
ちょっとした事で気が高ぶり、イライラ、癇癪(かんしゃく)を起こします。
夜泣きや疳の虫なども子供の特有の症状です。
大人の場合は強めの気を抑える、巡らせる漢方薬を使うこともあります。
子供の場合は内臓の未発達の部分や稚陰稚陽を考慮し、巡らせるだけでなく「補う漢方薬」を合わせることが多いです。
色々な事に敏感のため、睡眠不足や親がイライラしてると影響を受けます。
漢方薬も大事ですが、環境作りを優先しましょう。
親もメンタル状態も大事になりますよ。
脾胃(≒胃腸)が未熟
子供は脾胃(消化器官)が未発達なのですぐに下痢や便秘になってしまいます。
子供は成長にエネルギーを使います。
成長をするうえで飲食物、消化吸収する脾胃(≒胃腸)の重要性は大人以上です。
※大人も大事ですよ。
脾胃は体に必要な「気血津液」を作るために重要な場所です。(後天の本)
胃腸の不調から慢性疾患になる子供は多いです。
これは、漢方あるあるの話ですが、胃腸の調子が良くなると皮膚炎や頭痛など他の不調が改善することがあります。
大人と違い、子供は自分で飲食物をコントロールすることが難しいです。
お父さん、お母さんがコントロールしてあげましょうね。
とても大事な指標になります。
腎のエネルギーが不足している
子供は腎のエネルギーが不足しています。
「腎」は、成長、発育、生殖に関する働きをし、生命力の元と考えられるため「先天の本」と呼ばれます
腎に関連する脳、骨、歯などは小さい子供ほど未発達です。
古典・黄帝内経(こうていだいけい)には
「女性は7の倍数」「男性は8の倍数」の年齢の時に節目を迎え、体に変化が訪れるとかかれています。
これは腎のエネルギー(生命エネルギー)から見た体の変化とされます。
- 男性は24歳で男性としての体が出来上がり32才がピーク
- 女性は21才で女性として身体が出来上がり28歳がピーク
後天的なエネルギー(食べ物から得るエネルギー)によって多少の違いがありますが、10代は腎のエネルギーは発展途上です。
そう思うと、子供に対して腎を補いたいところ。
ただ、「補腎(ほじん)」の漢方薬や食材は胃腸に重い傾向にあります。
大人に良い漢方薬や食材でも胃腸が未発達な子供にとっては逆効果のこともあります。
脾胃が未発達な子供は理に補腎しない。
「腎は先天の本、脾は後天の本」
脾胃(≒胃腸)を大事にすると腎のエネルギーを補うことができます。
消化がよくバランスの取れた食事を心がけましょう。
子供は肺が弱りやすい
子供は感染症にかかりやすく、皮膚疾患が出やすいです。
これは五臓の肺が弱いことが原因の1つ。
肺は防御の気「衛気」を体表面に分布する役割をしています。(宣発機能)
衛気が上手に分布されないと、風邪(かぜ)をひきやすかったり、腠理(汗が出る穴)の調節が上手くいかず汗が出すぎたり、逆に汗が出なくなります。
また、「肺は皮毛を合す」ともいわれます。
皮毛とは皮膚や体毛などの体表面のことを指します。
肺が弱ると皮膚の症状が悪化しやすいです。
肺の強化にも胃腸が大事です。
肺と脾(≒胃腸)は母子の関係(相生関係)
脾胃を強くすると肺も強くなります。
風邪を引きやすい子供は消化の良い食事を心がけましょう。
胃腸を整え、肺を強くするのを培土生金(ばいどせいきん)と言います。
睡眠が大事
大人も同じですが子供にとって睡眠はとても大事です。
どんなに良い漢方薬を飲んでも睡眠が少ないと効果は薄いです。(大人も同じですよ)
睡眠時間の目安としては
- 幼児期:10時間~13時間
- 小学生:9時間~11時間
- 中学生:高校生:8時間~10時間
このくらいの時間が理想とされます。
「とれてますか?」
最近は子供も塾など忙しいですよね。
小学生でも23〜24時まで起きているという話を聞きます。
睡眠が不足(陰が不足)すると、あふれる陽気を抑えることができずイライラしやすくなります。
また、陰とは物質的(筋肉、骨など)意味があるので発育が遅くなることもあります。
上手にバランスを取るようにしましょうね。
子供に漢方薬を飲ませるコツ
子供の特徴を考慮すれば漢方薬は心強い味方になります。
気になる症状がアレば専門家に相談してみましょう。
何か飲ませるコツなどあるのかしら?
子供に飲ませる場合は煎じ薬や錠剤よりもエキス顆粒(細粒)が飲みやすいです。
もちろん飲める子はそのままでもOKです。
飲ませにくい場合は「ハチミツ」に混ぜるのをオススメしています。
※一歳未満はハチミツでボツリヌス菌に感染する恐れがあるので禁忌です。
エキス顆粒をハチミツと白湯に溶かしてスプーンで口にもっていくとすんなり飲めます。
白湯の量はお好みですが、少なめの方が飲みやすいと思います。
ハチミツは漢方薬の原料にもなります。
八味丸や桂枝茯苓丸など「〜丸」とつく漢方薬はハチミツで丸剤に形成されています。
薬膳的にもハチミツは脾胃を元気にする働きがあるとされます。(甘味は脾胃を元気にする)
お腹が弱い子とも相性が良いです。
まとめ
今回は子供と漢方薬との付き合い方について解説していきました。
子供の体質をよく考えてお薬を選べると良いと思います。
今回の内容をまとめると
基本的には色々と未発達な部分を考慮しなくちゃイケないのね。
漢方薬も良いけど環境つくりと睡眠や胃腸の部分が大事だね。
親がイライラしたりするのも注意ですよ。
そうだ!今日は親子で仲良くご飯でも作ろうかしら?