休み専用の漢方薬ってあるの〜?(首をつんつん)
休みのほうが都合が良い場合が多いんじゃ。(首をツンツン)
みなさん、こんにちは!
漢方薬剤師の玄(@gen_kanpo)です。
捻挫や打撲などの外傷をした場合は整形外科や接骨院に行くと思います。
東洋医学では針やあん摩で治療するのが有名ですよね。
意外かもしれませんが漢方薬にも外傷に対応するものがあります。
外傷をしてから数年後に起こりうる後遺症の予防のために漢方薬を飲むこともあります。
※骨の異常を確認するため病院には行ってくださいね!
そこで、今回は気血を強烈に気血を流す「通導散(つうどうさん)」という漢方薬について解説していきます。
- 打ち身や打撲になった
- 瘀血傾向のタイプ
- 便秘気味
通導散ってどんな漢方薬?
簡単に説明すると
瀉下作用を利用した強烈な駆瘀血薬(血流改善)です。
瀉下:大便で不要なものを排除すること(下痢させる)
漢方一貫堂医学という流派では「瘀血証」というタイプに使う処方です。
瘀血とは血が滞ってできる病理産物で、二次的に病の原因になります。
外傷以外でも気虚、気滞、冷え、熱症状など何らかの原因「血が滞る」と発生します。
瘀血を去る漢方薬は沢山ありますが通導散は強力な部類に入ります。
出典の万病回春には
打撲の損傷が極めて重く、大便、小便がでなくなり、これは瘀血がなくなっていない。下腹部が張り、上腹部は気が突き上げ、悶え苦しみ死にそうな人に使う。
まずはこの薬を服用して瘀血、死血を下して去る。その後に補剤を飲んだほうが良い。
その人の虚実によって量を加減する。少し下痢する程度がよい。妊婦や子供は禁止。
※超意訳&短縮
この様なことが書かれています。
少し内容を見ていくと、
「損傷が極めて重い」
緊急時に飲むことがわかる内容ですね。
この処方が作られた頃は仕事が肉体労働が多く、戦争なども多い時代です。
今よりも外傷が起こる頻度が高いと考えられます。
外科手術の技術も未発達であった点からも交通事故にあったときの全身打撲のような時に使っていたと推測できます。
「下腹部から気が突き上げ、悶え苦しみ死にそうな人」
これは気の滞りの症状。
気が滞り本来の動きをせず、逆流するために「気が突き上げ悶え苦しい」という症状がでます。
通導散の中には「大承気湯」という処方が含まれます。
この大承気湯の「承」という字は「受ける」「うけたまわる」という意味があります。
本来、下に行くべき気をちゃんと下に「受ける(ようにする)」役割をします。
そのため、精神不安やイライラ胸苦しい、お腹が張る、便秘などの気の停滞(気滞)を改善します。
通導散は大承気湯を含む処方なので瘀血だけでなく気滞もあるタイプにも有効です。
現代で使う場合は外傷はもちろん、気血のめぐりを強力に改善する作用を応用して内科、及び婦人科の領域で使われることが多いです。
構成生薬
≪生薬名≫ | ≪効能・効果≫ |
---|---|
大黄 | 胃腸の熱と瘀血を便で去る(大承気湯) |
芒硝(硫酸ナトリウム) | 大黄のサポート(大承気湯) |
枳実 | 気のめぐりよくする(大承気湯) |
厚朴 | 気のめぐりを良くする(大承気湯) |
当帰 | 軽い血流改善と血と温を補い作用が強くなりすぎないようにする |
陳皮 | 気のめぐりをよくする 胃の動きを改善 |
木通 | 湿をさり利尿を促す |
紅花 | 瘀血を去り痛みを止める |
蘇木 | 瘀血を去る(古い瘀血に有効) |
甘草 | 調和 脾胃を元気にする |
「通導散」という名前は通し導くという意味があるとされます。
生薬は理気、活血、利水と気血津液(水)の滞りを去る構成です。
※主に活血
メインの生薬「大黄」は下痢で瘀血と湿熱を去る生薬。
大黄、芒硝ともに寒性。(妊婦に禁忌)
大黄は熱を大便と一緒に瘀血、湿熱を去る生薬です。
芒硝は冷やしながら潤して便通をつけます。
乾燥しすぎず、潤ししすぎない組み合わせで瀉下薬によく使われます。
瘀血を去る生薬には作用の特徴により「活血・化瘀・破血」と分類できます。
通導散の中の紅花や蘇木は強力に血をめぐらす破血の生薬です。
そして、大黄、芒硝、枳実、厚朴(大承気湯)で気のめぐりを改善します。
「補」の生薬をあまり含まず、「瀉」の生薬が中心の構成です。
よく使う症状
体力中等度以上で,下腹部に圧痛があって便秘しがちなものの次の諸症:月経不順,月経痛,更年期障害,腰痛,便秘,打ち身(打撲),高血圧の随伴症状(頭痛,めまい,肩こり)
厚生労働省 薬局製剤指針より引用
「気と血がめぐっていないタイプ」がポイントです。
瘀血の人はアザができやすい、舌裏の血管(舌下静脈)の怒張などの特徴があります。
食欲が旺盛で、肥満気味、熱証、イライラタイプによく使います。
外傷(打ち身、打撲)
出典通りに外傷に使います。
外傷が起きたらなるべく早く服用すると良いとされます。
同じ瀉下で瘀血を去る処方に桃核承気湯や桂枝茯苓丸があります。
上記の2つも外傷に使いますが、通導散には古い瘀血を去るとされる「蘇木」と「紅花」が含まれます。
そのため…
- 桃核承気湯、桂枝茯苓丸→比較的新しい瘀血
- 通導散→古い瘀血
と言われています。
「昔の事故の後遺症」などは通導散の方が良いかもしれません。
万病回春に書いてある通り効果を出すなら「多少の下痢する程度の量」が丁度よいとされます。
コレは特に外傷の初期です。
瘀血なる前に素早く服用して「下痢と一緒に出しておう!」考えです。
月経不順、月経痛
月経不順や月経痛に有効です。
「瘀血」が原因のという大前提がつきます。
月経不順や月経痛には様々な原因があるので注意しましょうね。
気滞血瘀は月経痛、月経不順は
- 経血に血の塊がある
- 経血の色が黒っぽい
- 月経前に痛みが強い(激痛が多い)
- 月経前にお腹(胸)が張る
この様な特徴があります。
生理の後半に弱い痛みが続く、生理後にぐったりするような時は血虚の可能性もあるので注意して使いましょう。
便秘
瘀血が原因の便秘に有効です。
これは簡単に言うと血行不良による便秘です。
「出産や手術後は瘀血を生じる」
特に女性に多く、産後に便通が悪くなる場合は検討しても良いです。
「女子は血をもって本となす」
女性は血が元担っているという意味です。
女性の不調は血虚、瘀血などが影響を及ぼします。
産後に冷やしたり、過度に疲れると気血のめぐりが悪くなり瘀血ができやすくなるので注意です。
また、悪露がしっかり出きらないと瘀血になります。
注意すべき点
上手に使えば有効な通導散ですが強力な瀉下作用を有しているの注意して使いましょう。
子供、妊婦さん虚弱者には禁忌
瘀血と瀉下の作用が強いので子供、妊娠の可能性がある人、虚弱者には使用しないようにしましょう。
特に妊娠されている方は流産の可能性があります。
血の滞りは「エネルギー不足」からも発生します。
虚弱者か単独で使用すると体の虚を助長する可能性があるので注意が必要です。
冷え体質
通導散は熱証タイプの瘀血に有効です。
逆に言えば冷えタイプには不適な漢方薬です。
温める生薬を含みますが大黄、芒硝は強力に冷やします。
冷え体質の人が単独で使う場合は注意しましょう。
まとめ
今回は外傷でも使える瘀血の漢方薬「通導散」について解説していきました。
今回の内容をまとめると
通導散は瀉下作用を利用した強烈に駆瘀血薬(血流改善)。
【よく使う症状】
- 外傷(打ち身・打撲)
- 月経不順、月経痛
- 便秘
【注意すべき点】
- 子供、妊婦さん、虚弱者
- 冷え体質の人