月経痛に効くって書いてあったのに!
効能効果みたら良く効きそうなのに…
ピッタリ当てはまると良く効く漢方薬だよ!
みなさん、こんにちは!
漢方薬剤師の玄(@gen_kanpo)です。
今回テーマは婦人薬の要『当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)』
とても良い漢方薬なのですが、漠然と使われがちの処方です。
キチンと体質にあって使っている人か少ない印象です!
女性にオススメの漢方薬になりますのでぜひ覚えていってくださいね!
- 貧血気味な人
- 生理不順気味
- 体が浮腫む
当帰芍薬散ってどんな漢方薬?
簡単に説明すると
補血と利水が出来る婦人の代表薬です。
とても応用範囲が広い漢方薬です。
特に婦人科領域で色々な応用をされています。
出典は3世紀の初めに医聖と称される張仲景(ちょうちゅうけい)によって書かれたといわれている『金匱要略(きんきようりゃく)』です。
医学書として今でも重要視されているよ!
金匱要略には
婦人妊娠中に絞るような痛みの腹痛がある場合は当帰芍薬散で治す
※超意訳
この様に書いてあります。
ここで注意したいのは腹痛には色々原因があり、当帰芍薬散が治すのは妊娠中に胎児に大量のエネルギー(血)を取られてしまうことが原因の腹痛です。
ちょっと専門的になるから簡単に考えると『胎児に栄養を取られて胃腸の機能が低下』だと思ってね!
【肝脾不和(かんぴふわ)】
脾と肝は五行説では相克の関係です。
脾(胃腸)は肝の力をかりて消化吸収などの生理作用をコントロールしています。
ただ、何らかの原因で肝の気が鬱滞すると脾を強く刺激してしまいます。
すると
- 腹痛
- 下痢
- おなかの張り
この様な症状が現れます。
また、この症状は脾(胃腸)の弱さがあると更に出現しやすくなります。
金匱要略の内容は、
- 脾胃(胃腸)が弱く気血を作るのが不十分
- 胎児に大量の血をとられる
- 肝血が低下
- 肝の気を抑えることが出来ない
- 肝が脾を強く刺激
- 腹痛が生じる
この様な流れだと考えられています。
妊娠中は無理しちゃダメね!
やはり基本は胃腸(脾)だよ!
これ以外にも『腹痛』の原因があるから見極めは大事!
構成生薬
生薬名 | 効能 |
---|---|
当帰 | 補血、活血←血を補い動かす |
芍薬 | 補血柔肝←肝の血を補う |
川芎 | 疏肝理気←気血の流れを改善 |
白朮 | 健脾利水、安胎←胃腸を整え余分な水を抜く。胎児を安定させる。 |
茯苓 | 健脾利水←胃腸を整え余分な水を抜く。 |
沢瀉 | 利水←茯苓、白朮より強い水抜き |
メーカーによっては白朮→蒼朮
蒼朮には健脾、安胎作用はありません。その分、体の余分な水をさばく作用は蒼朮が優れています。
選ぶときは自分の体調に合ったものを選べるようにしましょう。。
特に安胎作用を期待する場合は白朮の物を選ぼう!
よく使う症状
体力虚弱で,冷え症で貧血の傾向があり疲労しやすく,ときに下腹部痛,
頭重,めまい,肩こり,耳鳴り,動悸などを訴えるものの次の諸症:月経
不順,月経異常,月経痛,更年期障害,産前産後あるいは流産による障害
(貧血,疲労倦怠,めまい,むくみ),めまい・立ちくらみ,頭重,肩こ
り,腰痛,足腰の冷え症,しもやけ,むくみ,しみ,耳鳴り厚生労働省 薬局製剤指針より引用
金匱要略では妊娠中の腹痛に対する漢方薬として紹介されていますが、現代では非常に多くの症状に応用されています。
特に婦人で血虚タイプには非常に便利な処方です
古典の使い方はあくまで参考に!
現代の効能効果を守って服用しましょうね!
血(けつ)が不足している
≪当帰芍薬散≫は血(けつ)を補う基本処方
≪四物湯≫
当帰 芍薬 地黄 川芎
の地黄以外を含みます。
そのため
- 貧血
- めまい、たちくらみ
- 生理不順(遅れるタイプ)
等にはよく使います。
浮腫みやすい
「白朮、茯苓、沢瀉」の利水薬が特徴的。
これは利水の代表処方≪五苓散≫の中の3味。
その為、浮腫みに対してとても効果的です。
当帰は下痢する可能性があるのですが、白朮、茯苓は健脾作用もあるので胃腸が弱いタイプにも使いやすいです。
当帰芍薬散は五苓散と四物湯を合わせて少し加減した処方とも考えることが出来ます。
産前産後の障害に
前述したように当帰芍薬散は『産前産後の障害』に使用することができます。
産前→胎児に血を
産後→出産で大量の血を
産前産後は血を失いやすいです。
補血+利水+安胎
妊娠中に多い『浮腫み』の要となる処方です。
その他のも妊娠中の腹痛、冷え、貧血症状にも使われることが多いです。
生理痛・下腹部痛
ここが間違えやすいところ。
当帰芍薬散はどんな生理痛にも効きやすいわけではありません。
≪当帰芍薬散≫が有効な生理痛は血虚があるタイプです。
(メイン生薬の当帰は補血>活血)
生理痛で一番多い『気滞血瘀(生理前に激痛タイプ)』には効果が弱いです。
当帰芍薬散で効くのは『気血虚弱(生理後にしくしく痛いタイプ)』
冷えがある(弱い)
これも多少限定的な効能。
当帰芍薬散は散寒薬や助陽薬といった体を積極的に温める生薬は含みません。
ですが補血+利水の作用で弱い冷えにはとても有効。
注意すべき点
応用範囲が広く比較的使いやすい≪当帰芍薬散≫
ただ闇雲に使えばよいわけではありません。
ストレスが強いタイプ
肝脾不和には使用するできますが
「強いストレス」にはあまり向いていません。
<気の巡りを改善する生薬が「川芎」のみなのでこのタイプは素直に「柴胡」を含む処方がよいでしょう!
胃腸が極端に弱い
白朮、茯苓の健脾作用で胃腸に優しい処方ですが「当帰」が胃腸に重い人はいます。
胃腸弱のタイプでどうしても≪当帰芍薬散≫を使用したい場合は「六君子湯」「平胃散」などを併用しましょう。
冷えが強い
もちろんダメ!っと言う訳では無いです。
冷えに有効なのですが温めるのは作用は弱め。
浮腫がないタイプで四肢が冷える、下腹部が冷えるような人は散寒薬の入った処方の方が良いです。
あくまで浮腫があり軽い冷え性位まで!
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まとめ
《当帰芍薬散》は婦人が領域で頻用されるだけあり応用範囲の広くとても便利な処方です。
簡単にまとめると
【適した症状】
- 血虚の症状
- 浮腫む
- 産前産後の不具合
- 軽い生理痛
- 冷え体質
【注意すべき点】
- ストレスが強い
- 強い冷え(ほかの処方が推奨)
- 胃腸が極端に弱い
だけどキチンと使えるととっても良く効く漢方薬だよ!