
月経痛に効くって書いてあったのに!
効能効果みたら良く効きそうなのに…
ピッタリ当てはまると良く効く漢方薬だよ!
みなさん、こんにちは!
漢方薬剤師の玄(@gen_kanpo)です。
今回テーマは婦人薬の要「当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)」
23番と言ったほうが、わかる人も多いと思います。
とても良い漢方薬なのですが、漠然と使われがちの処方です。
キチンと体質にあって使っている人か少ない印象です!
どの漢方にも言えますが、症状や体質にあっていないと効き目を実感しにくいです。
そこで、女性にオススメ「血」と「水」漢方薬「当帰芍薬散」を解説していこうと思います。
- 貧血気味な人
- 生理不順気味
- 体が浮腫む
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当帰芍薬散ってどんな漢方薬?


簡単に説明すると
血を補い、水分の巡りを整える女性の定番漢方薬です。
とても応用範囲が広い漢方薬です。
特に婦人科領域で色々な応用をされています。
出典は3世紀の初めに医聖と称される張仲景(ちょうちゅうけい)によって書かれたといわれている『金匱要略(きんきようりゃく)』です。
医学書として今でも重要視されているよ!
出典の金匱要略には
婦人妊娠中に絞るような痛みの腹痛がある場合は当帰芍薬散で治す
※超意訳
この様に書いてあります。
ここで注意したいのは腹痛には色々原因があり、当帰芍薬散が治すのは妊娠中に胎児に大量のエネルギー(気血)を取られてしまうことが原因の腹痛です。
ちょっと専門的になるから簡単に考えると『胎児に栄養を取られて胃腸の機能が低下』だと思ってね!
【肝脾不和(かんぴふわ)】
脾と肝は五行説では相克の関係です。

脾(胃腸)は肝の力をかりて消化吸収などの生理作用をコントロールしています。
ただ、何らかの原因で肝の気が鬱滞すると脾を強く刺激してしまいます。
すると
- 腹痛
- 下痢
- おなかの張り
この様な症状が現れます。
また、この症状は脾(胃腸)の弱さがあると更に出現しやすくなります。
金匱要略の内容は、
- 脾胃(胃腸)が弱く気血を作るのが不十分
- 胎児に大量の血をとられる
- 肝血が低下
- 肝の気を抑えることが出来ない
- 肝が脾を強く刺激
- 腹痛が生じる
この様な流れだと考えられています。
妊娠中は無理しちゃダメね!
やはり基本は胃腸(脾)だよ!
「腹痛」には他にも原因があるから見極めは大事です!
構成生薬
| 生薬名 | 効能 |
|---|---|
| 当帰 | 補血、活血←血を補い動かす |
| 芍薬 | 補血柔肝←肝の血を補う |
| 川芎 | 疏肝理気←気血の流れを改善 |
| 白朮 | 健脾利水、安胎←胃腸を整え余分な水を抜く。胎児を安定させる。 |
| 茯苓 | 健脾利水←胃腸を整え余分な水を抜く。 |
| 沢瀉 | 利水←茯苓、白朮より強い水抜き |
メインの生薬(君薬)は当帰。芍薬と共に血を補い巡らせ、筋肉の緊張や痛みを和らげ、肝の働きを整えます。
白朮は消化吸収を助け、不要な湿を除き、当帰の働きをサポート。
川芎は血流を促し月経を調整し、茯苓と沢瀉は利水・健脾で体内の余分な水分や湿をさばき、精神安定や泌尿器の調整にも寄与します。
メーカーによっては白朮→蒼朮
蒼朮には健脾、安胎作用はありません。その分、体の余分な水をさばく作用は蒼朮が優れています。
選ぶときは自分の体調に合ったものを選べるようにしましょう。。
特に安胎作用を期待する場合は白朮の物を選ぼう!
よく使う症状


体力虚弱で,冷え症で貧血の傾向があり疲労しやすく,ときに下腹部痛,頭重,めまい,肩こり,耳鳴り,動悸などを訴えるものの次の諸症:月経不順,月経異常,月経痛,更年期障害,産前産後あるいは流産による障害(貧血,疲労倦怠,めまい,むくみ),めまい・立ちくらみ,頭重,肩こり,腰痛,足腰の冷え症,しもやけ,むくみ,しみ,耳鳴り
厚生労働省 薬局製剤指針より引用
金匱要略では妊娠中の腹痛に対する漢方薬として紹介されていますが、現代では非常に多くの症状に応用されています。
特に婦人で血虚タイプには非常に便利な処方です。
古典の使い方はあくまで参考に!
現代の効能効果を守って服用しましょうね!
血(けつ)が不足している(貧血、めまい、たちくらみなど)
当帰芍薬散には血(けつ)を補う基本処方である「四物湯(当帰・芍薬・地黄・川芎)」の地黄以外を含みます。
そのため、血(けつ)の不足で起こりやすい
- 貧血
- めまい、たちくらみ
- 生理不順(遅れるタイプ)
これらの症状にはよく使います。
浮腫み(むくみ)やすい
当帰芍薬散は、四物湯とは異なり、白朮・茯苓・沢瀉の三味の利水薬を含んでいます。
これは利水の代表処方である五苓散の主要成分の一部にあたるため、むくみに対して非常に効果的です。
当帰には下痢を起こす可能性がありますが、白朮や茯苓には健脾作用があるため、胃腸が弱い方でも使いやすくなっています。
このことから、当帰芍薬散は五苓散と四物湯を組み合わせを、やや調整した処方と考えることもできます。
産前産後の障害に
薬局製剤指針の効能効果に示したように当帰芍薬散は「産前産後の障害」に使用することができます。
- 産前→胎児に血を与える
- 産後→出産で大量の血を失う、母乳で血を失う
※乳血同源という
当帰芍薬散は「補血・利水・安胎」の三つの作用を併せ持ち、妊娠中に多い「むくみ」の要となる処方です。
さらに、妊娠中の腹痛や冷え、貧血などの症状にもよく用いられ、産前産後を通して安心して使いやすい漢方です。
生理痛・下腹部痛
ここが間違えやすいところ。
当帰芍薬散はどんな生理痛にも効きやすいわけではありません。
当帰芍薬散が有効な生理痛は血虚があるタイプです。
(メイン生薬の当帰は補血>活血)
生理痛で多い「気滞血瘀(生理前に激痛タイプ)」には効果が弱いです。
当帰芍薬散で効くのは「気血虚弱(生理後にしくしく痛むタイプ)」です。
冷え(比較的軽い)
当帰芍薬散は「冷えによい」といわれますが、実際には少し限定的な効能です。
この処方には、寒さの邪気を散らす「散寒薬」や、体を積極的に温める「助陽薬」は含まれていません。
ただし、当帰芍薬散は「補血+利水」の働きによって、弱い冷えにはとても効果的です。
- 体内に余分な水がたまって血流を妨げる → むくんで冷える
- 血が不足して全身に行き渡らない → 血虚による冷え
こうしたタイプの冷えに、やさしく穏やかに働きかけてくれます。
注意すべき点


応用範囲が広く比較的使いやすい当帰芍薬散ですが、闇雲に使えばよいわけではありません。
ストレスが強いタイプ
当帰芍薬散は、肝と脾のバランスを整える「肝脾不和」に有効で、更年期障害やPMS(月経前症候群)にも用いられる処方です。
しかし、強いストレスによる不調にはあまり向いていません。
特に、感情の起伏が激しくイライラしやすいタイプや、ストレスが強く感情を抑えられないタイプには不向きです。
このようなタイプは「気滞(きたい)」と呼ばれ、当帰芍薬散には気の巡りを整える生薬が「川芎」しか含まれていないため、十分に対応できないことがあります。
一方で、体が弱く、小さなストレスが長く続くようなタイプには適している場合もあります。
強いストレスが主な原因のときは、「柴胡(さいこ)」を含む処方加味逍遙散(かみしょうようさん)などを検討するとよいでしょう。
胃腸が極端に弱い
胃腸が極端に弱いタイプは、当帰芍薬散の使用に注意が必要です。
白朮や茯苓が含まれており、これらの健脾作用により比較的胃腸にやさしい処方ではありますが、「当帰」や「芍薬」が重く感じる人もいます。
胃腸が弱い方でどうしても当帰芍薬散を使いたい場合は、六君子湯や平胃散など、胃腸を整える処方を併用したり、まずは消化機能の改善から始めることをおすすめします。
中医学でいう「脾胃(≒胃腸)」は、
- 水分代謝の出発点(水分は脾・肺・腎が連携して調整)
- 気血を生み出す源
とされています。
そのため、浮腫みや血虚のいずれの改善にも、脾胃に負担をかけすぎると逆効果になります
まとめ

《当帰芍薬散》は婦人が領域で頻用されるだけあり応用範囲の広くとても便利な処方です。
簡単にまとめると
【適した症状】
- 血虚の症状
- 浮腫む
- 産前産後の不具合
- 軽い生理痛
- 冷え体質
【注意すべき点】
- ストレスが強い
- 強い冷え(ほかの処方が推奨)
- 胃腸が極端に弱い
だけどキチンと使えるととっても良く効く漢方薬だよ!












