
なにか良い漢方ってない??
何かツラい症状あるんですか??
それなら枝茯苓丸を試してみよう!!
みなさん、こんにちは!
漢方薬剤師の玄(@gen_kanpo)です!
今回は、婦人科領域でよく用いられる漢方薬 「桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)」 をご紹介します。
この処方は、月経異常や月経痛などに広く使われていますが、実は どんな婦人病にも効くわけではありません。
さらに、体質によっては逆効果になることもあるため、注意が必要です。
そこで今回は、婦人科で頻用される「桂枝茯苓丸」について、ポイントをわかりやすく解説していきます。
- 月経不順がある
- 冷えのぼせがある
- シミやアザができやすい
桂枝茯苓丸ってどんな漢方薬?


簡単に説明すると
瘀血を取り除く駆瘀血剤(くおけつざい)の代表格です。
それを駆逐するから駆瘀血剤(くおけつざい)だよ!
出典の金匱要略には
婦人で腹部にしこりがある人。2,3ヶ月生理か止まる。その後出血止まらない+お腹に動悸がある。こんな時は瘀血が凝り固まって『しこり』を形成し妊娠を邪魔してる。妊娠六か月で胎動を感じるもので、前の三か月に正常な月経がある人は妊娠している。前の三か月に不正出血がある人は血液がドロドロして妊娠がダメになっている。いつまでも不正出血が止まらない人は瘀血が凝り固まってるからで桂枝茯苓丸で治療するべき。
※超意訳
この用に書かれています。
【血液の滞り】がある婦人に対して有効な漢方薬であることが、『金匱要略』の記載からもわかります。
実際の臨床でも、瘀血を去る基本の漢方薬として活躍している処方です。
シンプルな構成のため応用範囲も広く、
- 生理痛
- 生理不順
- 頭痛
- 肩こり
- めまい
- しみ
- etc.
といった症状に用いられることがあります。
大事なのは、これらの症状でも「瘀血が原因」という大前提がある場合に効果を発揮するってことなんだ。
また、中医学では「婦人は血をもって本となす」とされます。
そのため女性は血に関連する症状が出やすく、特に瘀血が関わる不調に対して桂枝茯苓丸がよく使われてきたのです。
構成生薬
| 生薬名 | 効能 |
|---|---|
| 桃仁 | 活血化瘀←瘀血を去る、血行改善(強力) |
| 牡丹皮 | 活血涼血←瘀血を去る、体(血)を冷やす |
| 赤芍 | 活血涼血←瘀血を去る、体(血)を冷やす |
| 桂枝 | 通脈←体を温め血行改善、余分な水分を去る(補助) |
| 茯苓 | 健脾利水←胃腸を整え余分な水を抜く。 |
上記は本来の「桂枝茯苓丸」です。
3種類の瘀血を去る生薬がしっかり入った処方です。
桂皮は体をかなり温める生薬で性質は「大熱」。
桂枝は風邪(かぜ)薬などに使われる生薬で性質は「温」。
どちらも体を温め血行を助ける点では共通しており、「どちらでも良い」という専門家もいます。
問題はこの
赤芍(せきしゃく)と白芍(びゃくしゃく) です。
- 瘀血を去る(血行改善)
- 身体を冷やす
【白芍】
- 補血
- 止血
- 鎮痙(けいれんを止める)
- 止痛
この差によって、本来は強力な駆瘀血薬だった「桂枝茯苓丸」が、よりマイルドな効果になっています。
ただしこれはデメリットだけでなく、結果として日本人に合ったマイルド処方になっているとも考えられます。
強い活血薬は、虚弱な人に使うと負担になることがあります。
特に日本人は中国人に比べて胃腸が弱く、漢方薬に負けてしまう人も少なくありません。
赤芍が白芍に置き換わったことで、「強い活血(血行改善)」が減り、「補血(血を補う作用)」が加わりました。
そのため「長期的にゆっくり瘀血の症状を改善したい」人に適した処方になっているのです。
さらに、忘れてはいけないのが「茯苓」の存在です。
茯苓は利水・健脾の働きによって、血の滞りの背景にある水の偏在を調整します。
桂枝茯苓丸は「瘀血(血の滞り)」を改善する代表的な処方ですが、瘀血はしばしば水の偏在(痰湿・水滞)を伴います。
血と水はいずれも陰に属するため、どちらかが滞るともう一方にも影響しやすいのです。
そこで茯苓が加わることで、
- 血の巡り(駆瘀血)
- 水のさばき(利水)
の両面から調和を図り、バランスよく働くように設計されています。
桂枝茯苓丸を使う症状


比較的体力があり,ときに下腹部痛,肩こり,頭重,めまい,のぼせて足冷えなどを訴えるものの次の諸症:月経不順,月経異常,月経痛,更年期障害,血の道症,肩こり,めまい,頭重,打ち身(打撲症),しもやけ,しみ,湿疹・皮膚炎,にきび
厚生労働省 薬局製剤指針より引用
その中でも特によく使う症状を紹介するよ!
生理不順・生理痛
最も多く使われるケースだと思います。
瘀血が原因の生理不順や生理痛には、次のような特徴があります。
- 血塊が出る
- 生理の前半に痛みが強い
- 経血量が多い
- 生理が来ない
このような症状に対して使用すると、改善が期待できます。
このタイプは当帰芍薬散などを使います。
瘀血で火照るタイプ
中医学では「滞ると熱が生まれる」と考えます。
そのため、瘀血(血行不良)があると体はほてりやすくなるのです。
特徴としては、
- 冷えのぼせ
- 舌が黒(紫)っぽい
- 他の瘀血の症状を伴う
このような「瘀血によるほてり・のぼせ」に有効です。
ただし、注意が必要なのが「陰虚のほてり」と「実熱のほてり」との見分け。
実熱は熱の邪気が入り込んで発症するもので、清熱薬(黄連解毒湯や白虎加人参湯など)で熱を制する必要があります。
陰とは体を「潤す」「冷やす」働き。
陰虚によるほてりの特徴は、
- 冬でも夜中に布団から手足を出したくなる
- 寝汗をかく
- 舌が真っ赤
- 体が乾燥する
このような症状には知柏地黄丸という漢方薬が有効です。
瘀血の所見がない場合は、桂枝茯苓丸を単独で使うのは控えましょう。
熱を抑えながら血を巡らす牡丹皮(本来は赤芍も)が配合された桂枝茯苓丸は、「瘀血によるほてりタイプ」にピッタリ!
ちなみに、瘀血がある人は「冷え」も出ることがあります。
効能効果に「のぼせ」「足腰の冷え」と相反するような症状が書かれているのはそのためです。
要は、気血の巡りが悪く、冷えと熱が分かれてしまっている状態なのです。
瘀血の所見があり、冷えとのぼせが混在するときなどは桂枝茯苓丸を検討してみましょう。
肩こり・頭痛
当然ながら、瘀血が関わるタイプの肩こり・頭痛に有効です。
- 座り仕事が長い
- 運動不足
- ズキズキする痛み
- 生理前に悪化
ただし、疲労で悪化する場合などは別の体質(気虚など)が関わることもあるので、専門家に相談しましょう。
打ち身・外傷
東洋医学では打ち身や捻挫などの外傷では、局所に血液が滞りやすくなり瘀血が生まれると考えます。
桂枝茯苓丸は活血作用があるため、血の巡りを助け、症状の改善をサポートすることができます。
本来は通導散など服用するのが良いとされますが、強力な瀉下(下痢させる)作用があるため胃腸が弱い人は桂枝茯苓丸のほうが安心です。
男性でも使える桂枝茯苓丸
桂枝茯苓丸は婦人科で有名な漢方薬ですが、男性でも瘀血の症状なら使用可能です。
例えば肩こりや頭痛、疲労感などは血行不良や瘀血が原因になっていることがあります。 その場合、桂枝茯苓丸で血の巡りを整えることが期待できます。
注意すべきタイプ


応用範囲が広く使いやすい『桂枝茯苓丸』ですがもちろん合わないタイプも存在します。
血虚(貧血気味など)
何度も書きますが「桂枝茯苓丸」は瘀血を改善する漢方薬です!
「血」が足りないタイプに単独で使用するのは適しません。
具体的には、
- 貧血気味
- 皮膚が乾燥する
- 髪がパサつく
- 爪がもろい
- 痩せ気味
こんな症状の人には「桂枝茯苓丸」単独で使用するの気をつけましょう!
血の不足(けっきょ)が悪化する可能性があります。
『血』が足りない人は悪化するの?
- 血の量→川の水の量
- 血行不良→川の傾斜(かたむき)が足りない
川も水が少ないのに「傾斜」だけつけたらすぐに干上がるでしょ!
水(血)を補いながら「傾斜(血流改善)」もつける必要があるのね!
虚弱体質
芍薬(白芍)がはいっているとはいえ構成するほとんどが瀉する生薬(体から不要なものを除く)です。
エネルギー不足の人に使用し続けると、体がどんどん消費して「虚」が悪化してしまいます。
効能効果に「比較的体力があり」とあるように、エネルギーが余って滞ってる人に有効な漢方薬ということを忘れないようにしましょう。
虚弱体質の人で瘀血がある人は『芎帰調血飲第一加減』にしましょう。
妊娠の可能性がある
様々な意見がありますが、妊娠の可能性がある人には避けるべきと考えます。
桂枝茯苓丸には桃仁や牡丹皮など、効能の強い活血薬が含まれています。
血の巡りを改善する作用により、着床した卵を流してしまうリスクがあると考えられるため、妊娠中や妊娠の可能性がある場合は使用に注意が必要です。
桂枝茯苓丸加薏苡仁


これは名前の通り、桂枝茯苓丸+薏苡仁(ハトムギ)です。
日本の経験方として用いられており、特に皮膚炎やニキビ、色素沈着したニキビなどに効果を発揮することがあります。
瘀血の改善に加えて、余分な水分や湿を排出する作用があるため、肌トラブルに悩む方に向いています。
薏苡仁(ハトムギ)は利尿作用があるので、体や肌の潤いを奪ってしまう可能性があるんです。
まとめ


瘀血を去る漢方薬の代表「桂枝茯苓丸」
特に婦人病に大活躍です。
ただどんな婦人病にも良いわけではありません!
きちんと自分のタイプを考察しましょう。
簡単にまとめると
桂枝茯苓丸は構成生薬が少ない処方だから他の漢方薬とも組み合わせしやすいんだ。













