どうしたの??
みなさん、こんにちは!
漢方薬剤師の玄(@gen_kanpo)です!
突然ですがみなさんにはストレスはありますか?
この答えに「全く無い!」と答える人は少ないと思います。
漢方薬局で相談をしていてもストレスが原因での症状が本当に多いです。
このようなときに活躍するのが「四逆散(しぎゃくさん)」
あまり聞いたことが無いかもしれませんが有名な漢方薬の骨格になっていたりします。
覚えておくとストレス社会を泳ぎ切るヒントになるかも?
- ストレスが強い
- お腹が張る
- 胃腸の調子が悪い
四逆散ってどんな漢方薬?
簡単に説明すると
五臓の肝の気をめぐらせる「気滞」に対しての漢方薬です。
気滞(きたい)とはその名の通り気の滞り。
主にストレスが原因でおこります。
この気滞に対しての基本薬が四逆散です。
「気滞」は気が滞っているので「張る」「過敏に動く」「詰まる(ような気がする)」このような症状が出やすいです。
四逆散は理気薬といわれ滞った気を巡らせる作用があります。
パンパンに膨らんだ風船の空気を抜くイメージです。
出典の傷寒論には
少陰病(病邪が奥に入り込んでいる状態)で四肢が冷え、その人があるいは咳をして、あるいは動悸がして、あるいは尿があまり出ず、あるいはお腹が痛く、あるいは下痢するものは四逆散がつかさどる
- 咳するときは五味子と乾姜
- 動悸がするときは桂枝
- 尿の出が悪い時は茯苓
- お腹が痛む時は附子
- 下痢するときは薤白(らっきょう)
を加える。
こう書かれています。
四逆散は気をめぐらせる漢方薬です。
陽気がうっ滞することで末端に届かない時に使う処方です。(陽鬱とも言う)
四逆散は温めるというより「気の滞りを去ることで末端に陽気をめぐらす」ことで温めます。
ただ、陽気がうっ滞しているので「イライラ、不眠、顔だけ火照る など」局部的な熱症状が出ることもあります。
※同じ少陰病に出てくる四逆湯とは別処方。四逆湯はとても温める処方です。
構成生薬
≪生薬名≫ | ≪効能・効果≫ |
---|---|
柴胡 | 肝気をめぐらす 少し冷やす |
芍薬 | 柔肝→肝陰を補い緊張を緩める |
枳実 | 胃の気を下におろし張りをとる |
甘草 | 脾胃の調和 |
疏泄(①気のめぐりを調整②精神を安定)を主るのは五臓の肝。
四逆散は肝の気をめぐらす柴胡がメイン生薬です。
四味というシンプルな構成なので気滞シャープに効いてくれます。
一般的に構成生薬は…
- 少ない→シャープ
- 多い→マイルド
とされています。
枳実はミカン科ダイダイの幼い果実。
脾胃の気の滞りを強力に除去してくれます。
芍薬が肝(筋を主る)の陰血を補ってくれるので筋肉の過緊張を和らげてくれます。
甘草の組み合わせることで「酸甘化陰」といって陰血を生む組み合わせになります。
緊張を和らげたり、肝の陽気を暴走しないように抑えてくれます(柔肝)
有名な加味逍遙散は四逆散がベース。
四逆散+四物湯≒逍遙散
四逆散に血虚の基本に薬である四物湯を足すと逍遥散に近い処方になります。
この逍遥散に体の熱を去る生薬(牡丹皮・山梔子)を加えた処方が「加味逍遙散」
加味逍遙散も肝気鬱結に使いますが、気滞に対しては四逆散のほうがシャープに効きます。
その分、血虚に対してのアプローチがないので使い分けには中止しましょう。
婦人病の場合は「血」が関わることが多いので(加味)逍遥散を使う場面が多いです。
よく使う症状
体力中等度以上で,胸腹部に重苦しさがあり,ときに不安,不眠などがあるものの次の諸症:胃炎,胃痛,腹痛,神経症
厚生労働省 薬局製剤指針より引用
気滞の基本処方というところを忘れないようにしましょう!
ストレスがかかり気滞が起こると「メンタル的な異常」「身体的な異常」どちらも起こりうるので注意しましょう。
神経性の胃腸障害
こちらは身体的な異常。
肝は全身の気機のめぐりを管轄しているので機能不全を起こすと「張り」「神経症状」が起こります。
特に肝と脾は相克の関係なので肝の気がうっ滞して暴走すると脾胃を攻撃します。
ストレスがかかると…
- お腹が張る
- 胃が痛い
- おなかが痛い
こんな時に有効です。
気滞(≒ストレス)が原因での症状は一般的な胃腸薬が効きにくいときが多いです。
神経症(イライラ)・不安
こちらはメンタル的な異常。
シンプルにイライラや不安感に使います。
肝の感情は「怒り」なので、四逆散が有効な神経症はどちらかというと「イライラ>不安感」です。
注意すべき点
胃腸薬だけど胃腸が弱い人は注意
四逆散は生薬も少なく切れ味の良い処方です。
その分、胃腸を元気にする生薬が甘草のみです。
調子が良いからと単体での長期連用は注意が必要です。
動かしすぎて逆に脾胃の力が衰えていくこともあります。
適切な胃腸薬と併用するなど検討しましょう。
切れ味が良い分、使い方に注意ですね。
まとめ
気の滞りに対しての有効な四逆散。
覚えておくと現代のストレス社会を戦うための強力なお助けマンになってくれるはずです。
今回の内容を簡単にまとめると
四逆散は気滞で起こる症状の基本薬。
【よく使う症状】
- ストレスによる胃腸の不具合
- 神経症状
【注意スべき点】
- 胃腸の漢方薬だけど胃腸が弱い人は注意
でも、四逆散が効くということはストレスが多いのかも?
気晴らしするのも大事ですよー。