単独で使うことは少ないですが覚えておいて損はない漢方薬ですね!
日頃からお酒を飲んだり、味の濃い食事を好む人は覚えておくのじゃ!
みなさん、こんにちは!
漢方薬剤師の玄(@gen_kanpo)です。
今回のお話は「二陳湯(にちんとう)」
あまり有名な処方ではないのですが超重要です!
特に湿気の時期に体調が悪い人や脂っこい食事が好きな人は覚えておくと良いですよ!
- 胃腸の調子が悪い
- 梅雨時期に体調が悪い
- これから漢方薬の勉強をしたい
二陳湯ってどんな漢方薬?
簡単に説明すると
体内に溜まる不要なベタベタ(痰湿)を去る漢方薬の基本です。
出典の『和剤局方』には
体に不要なベタベタ(痰湿)があることで、吐き気、めまい、動悸、胃の不快感、発熱などの症状のある場合、あるいは生物や冷えた物を食べたことによる胃腸障害を治す。
※超意訳
この様に書いてあります。
脾胃は『生痰の源』といわれ調子を崩すと痰湿を作ってしまう場所です。
二陳湯はこの脾胃(胃腸)に対して作用します。
- 水分をためないようにする⇒痰湿の生成を防ぐ
- 溜まった痰湿を去る
これが主な作用の漢方薬です。
二陳湯は痰湿が原因で引き起こされる様々な症状に使える処方ですが、実際の現場では単体で使うことは少なく他の処方に組み込まれていることが多いです。
【二陳湯を含む処方例】
- 六君子湯(二陳湯+四君子湯)→胃の不具合
- 抑肝散加陳皮半夏(抑肝散+二陳湯)→イライラ・不眠
- 釣藤散→頭痛・肩こり
- 半夏白朮天麻湯→頭痛・めまい
これらは『痰湿+各部の不具合』を治療する漢方薬です。
ちなみに
『陳』という感じは古いという意味があります。
二陳湯の『二陳』は半夏と陳皮を指すとされています。
この二つの生薬は古い物の方が貴重とされているのでこの名前が付いたそうです。
※痰湿(痰飲+水湿)については津液(体に必要水分)の記事をご参照ください。
構成生薬
≪生薬名≫ | ≪効能・効果≫ |
---|---|
半夏 | メイン生薬 痰湿を去る 胃の気を正常に(下向きに) |
陳皮 | 胃の動きを調える 半夏をサポート |
茯苓 | 胃の不要な水分を去り痰飲ができるのを防ぐ |
生姜 | 半夏の毒性を下げる |
甘草 | 生薬を調和させる |
二陳湯のメイン生薬(君薬)は半夏です。
強力な化痰(痰を去る)作用があります。
陳皮は半夏と組み合わせることで不要なベタベタを去る作用を強化します。
陳皮は芳香性の健胃薬として胃の動きも改善。
茯苓は脾胃の水はけをよくする効果があるので痰湿が作られる前に不要な水分を裁くことができます。
生姜は脾胃を温め水の巡りをよくする効果と半夏の毒性を弱める効果があります。
甘草は各生薬の調和をする効果と脾胃の力を強める効果があるとされています。
ちなみに
半夏には毒性があるとされていて単独で長期に使う場合は注意が必要とされています。
※そんな場面はほぼないですが
その半夏の毒性を抜くのが生姜。
半夏の加工には有名な『姜半夏(きょうはんげ)』というものがあり。
半夏を水で半日さらした後に生姜と一緒に煮詰め、そのあとに天日干しをします。
この過程をとると半夏の毒性・燥性が和らぎ生薬のベクトルを下に向かせる作用を強調できるとされています。
六君子湯など脾胃が弱ってる人に使う処方の場合はこの『姜半夏』が良いとされています。
残念ながら日本ではこの処理をしている漢方メーカーは少ないです。
よく使う症状
吐き気、悪心
条文の効能効果とおりの使い方です。
脾胃に痰湿が溜まると動きが悪くなり吐き気や悪心が出やすくなります。
二陳湯で不要な痰湿を取り除くことで脾胃の動きを正常にすることができます。
吐き気の症状が長い場合は脾胃が疲弊している可能性があります。
痰湿のある症状
痰湿は体の中で様々な悪さをします。
- 吐き気
- 回転性のめまい
- 吐き気を伴う頭痛
- 神経症状
- 痰の多い咳
口から出る痰は痰湿の一種です。
他の大多数の痰湿は実態はありませんが、たまった部分で悪さをしています。
そして痰湿がある人で特徴的なのが「外気の湿気と連動しやすい」というところ。
注意すべき点
乾燥させる作用や強い
半夏、陳皮、茯苓と水はけをよくする生薬がメインの方剤です。
- 皮膚炎(カサカサタイプ)
- 乾燥肌
- 粘膜が乾燥
乾燥症状がある人は単独での使用は注意しましょう。
ただ、痰湿が邪魔して乾燥している場合は他の処方と組み合わせると効果的になったりします。
潤いを与えても不要な痰湿が邪魔していたら行き届きません。
その場合は『痰湿を去る』『潤す』を同時に行うと効果的です。
体を補う処方じゃない
二陳湯を使うと『体が重い』という症状を取り去ることができます。
ここで間違えてはいけないのが『体が重い』という症状には虚実があるということ。
痰湿は『体の重だるさ』や『頭重感』などを生みます。
でも体が疲れていても『体の重だるさ』は症状として出てきます。
虚実では治療の仕方か真逆です。
虚の人に実の治療をすると体からさらに正気が抜けてしまう恐れがあります。
痰湿と疲労の重だるいは似ているので注意しましょうね。
わからない場合はキチンと専門家に相談しましょう。
まとめ
様々な処方の基礎になっている『二陳湯(にちんとう)』
あまり単独で使うことはありませんが、骨格になっていることも多い処方です。
これから漢方薬を勉強したい人はぜひ覚えておきましょう。
簡単にまとめると
二陳湯は痰湿(体に溜まる不要なベタベタ)を去る基本処方
【よく使う症状】
- 吐き気・悪心
- 痰湿のある症状
【注意すべき点】
- 乾燥させる作用が強い
- 体を補う処方ではない
まさに『縁の下の力持ち』『陰の実力者』的な存在じゃな!