あと少し気分が落ちている気もするわね。
みなさん、こんにちは!
漢方薬剤師の玄(@gen_kanpo)です。
漢方薬局には1年を通して「不眠」の相談が来ます。
当然ですが「不眠=この漢方」という雑なことはせず体質や症状にあった漢方薬をお選びします。(ですよね?)
不眠の漢方薬で胃腸が弱っている現代日本人に活躍するのが「温胆湯(うんたんとう)」です。
私も大好きな処方で頻用しています。
今回は胃腸が弱っている人にも使える不眠の漢方薬「温胆湯」について解説していきます。
- 不眠が気になる
- 優柔不断な性格
- 暴飲暴食してしまう
温胆湯ってどんな漢方薬?
簡単に説明すると
気と水の滞りを改善し痰熱を除くことで不眠、神経症、胃腸の障害を改善する漢方薬です。
暴飲暴食など食生活乱れた状態が続くと体内に要らない水のベタベタ(痰飲)ができます。
この痰飲を放置すると熱がこもり痰熱(たんねつ)となります。
体の中に痰熱がたまるとと…
- 胃腸が不調になる(胆胃不和)
- 心神にたまると精神不安、不安
- 胆にたまりイライラ
このような症状が起きます。
温胆湯はこの「胆と痰(熱)」だぶるの「たん」にフォーカスした漢方薬です。
中医学では「胆は決断を主る」とされ、胆は嫌なことから精神を守る役割を果たしています。
胆が疲れてしまうのが「胆虚(たんきょ)」
胆虚になると決断できない、驚きやすい、音に敏感になったりします。
また、胆は肝の裏の腑で、痰熱がたまると肝胃不和と似たような胃の不快が悪化します。
※肝胃不和とは消化器官を管轄する肝が不調が胃の不調につながる
ストレスや寝不足に暴飲暴食が重なると起こりやすいですよ!
- ストレスで脾胃の不調
- 暴飲暴食(痰飲ができる)
- 睡眠不足で体が熱化しやすい
どれもストレス社会に多い状態です。
時間別の養生である子午流注で胆の時間(23-25時)は新陳代謝がアップする時間。
真夜中なので陰の時間です。
胆に痰熱がたると陰の時間(夜)を邪魔をする→睡眠の質が低下することに繋がります。
また、睡眠に関わる脳を管轄するのは五臓の「心」
痰熱が心を犯し、興奮状態になると心の神明を主る機能を乱されメンタルも低下します。
「心の興奮+しっかり陰も補えない」ため慢性的な不安や不眠にも繋がります。
これらを【痰熱内擾(たんねつないじょう)】といいます。
出典の千金方にはこのようなことが書かれています。
大病のあとのノイローゼや不眠は胆寒が原因だから温胆湯で温めれば良い。
※超意訳
温胆湯の名前の由来は諸説あるようです。
- 胆寒の原因は機能しないベタベタした水(痰飲)。
その水を排除すれば胆は温まることで温胆湯となった。 - 胆が冷える→驚く、心悸
胆虚を改善するから温胆となずけられた
どちらにしても「胆」「痰」を改善する漢方薬と憶えておくと良いですね。
構成生薬
≪生薬名≫ | ≪効能・効果≫ |
---|---|
半夏(君薬) | 痰飲をさり 胃の下向きのベクトルを整える |
生姜 | 胃の動きを正常にする 半夏の毒性を去る |
陳皮 | 気と水を巡らす 半夏と合わせて二陳 |
枳実 | 気を巡らす、降ろす |
茯苓 | 胃腸を整え湿を除く |
竹茹 | 熱痰を去る |
甘草 | 脾胃を整える |
痰飲を去る二陳湯(にちんとう)がベースに熱を去る竹茹が加わった処方です。
竹茹には単独でも脳の鎮静作用があるとされます。
「痰」ネバネバした性質なので熱が滞留しやすいです。
ただ熱を去る漢方ではなく「痰飲+熱」を去る処方が有効です。
よく使う症状
体力中等度以下で,胃腸が虚弱なものの次の諸症:不眠症,神経症
厚生労働省 薬局製剤指針 より引用
痰熱の症状というポイントを忘れないようにしましょう。
熱症状が強い場合は黄連を加える黄連温胆湯という処方があります。
黄連解毒湯を足しても良い場合があります。
その場合は専門家の意見を聞きましょうね。
胃腸の不具合
痰熱があるので「過食になるけど胃がもたれる」「ゲップが多い」などの症状に有効です。
舌の苔が黄色くべったりしている場合は検討しても良いですね。
【応用】
「脾は生痰の源、肺は貯痰の器」といわれます。
肺の感覚器は鼻であるため多痰や副鼻腔炎に応用されることもあります。
脾(≒胃腸)と肺は母子の関係(脾=母 肺=子)です。
肺(鼻)の症状は胃腸を整えると改善することがあります。
不眠症、神経症
温胆湯は「決断力を主る腑」である胆を改善します。
脾胃(≒胃腸)の調子が悪く
- 驚きやすい
- 神経不安
- 不眠症
上記のような症状に有効です。
特に「驚きやすい」「小さい音などビクビクする」という胆虚という症状が顕著だと検討したいです。
注意すべき点
血虚の不眠に使うと逆効果
ここ重要!
温胆湯が得意なのは「痰熱が原因の不眠」です。
不眠には他にも(心)血虚や腎虚などが原因の場合もあります。
「機能しない水+気」をめぐらす温胆湯は血虚の人が使うと虚を助長させてしまう可能性があります。
- 物質的な血の不足「血虚」:乾燥する 痩せ型
- 物質的な水のあまり「痰飲(痰熱)」ベタつく 浮腫みやすい
※一例
総合的に判断することが大事です。
脾胃を強くする処方ではない
温胆湯は脾胃を整えることで新しい痰飲を生成しないようする作用はありますが、脾胃を強くするタイプの漢方薬ではありません。
単独で連用する場合は頭に入れておきましょう。
「疲れると悪化する」という気虚の症状が顕著な場合は他の漢方薬も検討しましょう。
まとめ
胃腸の弱い人の不眠や神経症によく使う温胆湯(うんたんとう)
ストレス社会の現代人にとって強い味方になるかもしれません。
不眠気味の人は憶えておくと便利ですよ。
今回の内容を簡単にまとめると、
温胆湯は気と水の滞りを去り痰熱を除き不眠、神経症、胃腸の障害を改善する漢方薬
【よく使う症状】
- 胃腸の不具合
- 不眠、神経症
【注意すべき点】
- 血虚の不眠には逆効果
- 脾胃を強くする処方ではない
面倒くさい仕事もバシバシ片付けてやってるわ!ハハハハー。
元気になって「胆(きも)が据わる」(ボソッ)