また葛根湯加川芎辛夷でいい?
それなら辛夷清肺湯(しんいせいはいとう)の方がよいかもね?
みなさん、こんにちは!
漢方薬剤師の玄(@gen_kanpo)です。
花粉症や風邪で「鼻がつまる」のはわずらわしいですね。
あまり放っておいて慢性化すると蓄膿症(副鼻腔炎)になることがあります。
悪化してしまうと悪化すると手術なんてことも可能性があります。
ある程度、悪化したら耳鼻科に行き抗生物質が必須ですが、その手前なら漢方薬で対処できる可能性があります。
そんな時に活躍する可能性があるのが「辛夷清肺湯(しんいせいはいとう)」
「清肺湯」
「葛根湯加川芎辛夷」
これらと名前は似ていますが使い方は異なるとても優秀な漢方薬です。
今回は、そんな蓄膿症で有効な漢方薬「辛夷清肺湯(しんいせいはいとう)」について解説してみようかと思います。
- 鼻がつまる
- 黄色い鼻水が出る
- 花粉症やアレルギー性鼻炎
辛夷清肺湯ってどんな漢方薬?
簡単に説明すると…
熱性の黄色い鼻水が出る人・慢性鼻炎・蓄膿症に有効な漢方薬です。
この「黄色い鼻水が出る」ってのがポイントです。
出典の外科正宗(げかせいそう)には…
(五臓の)肺に熱があり、鼻の中に腫れ物があり、初めはザクロの種みたいだったのが、日に日に大きくなり、鼻がつまり、空気が通らないものを治す
※超意訳
この様に書いてあります。
かつては鼻の中の腫れ物(鼻茸やポリープ)に使っていたようです。
※現代の製剤では腫れ物(鼻茸やポリープ)の効能効果にありません。
鼻は五行説で肺と同じ金に属します。
「肺の熱があり」という文章からこの漢方薬が熱を去るタイプだということが分かります。
五臓の肺の熱を去る≒鼻の熱を去る
この様な処方だと考えることが出来ますね。
漢方薬には同じ効能効果でも寒↔熱があり、間違えると逆効果なこともあるので注意しましょう。
構成生薬
≪生薬名≫ | ≪効能・効果≫ |
---|---|
石膏 | 肺の熱を去る(強) 潤す |
知母 | 肺の熱を去る 潤す |
麦門冬 | 肺の熱を去る(弱) 潤す(強) |
黄芩 | 清熱解毒 肺の熱を去る |
山梔子 | 清熱解毒 肺の熱を去る |
百合 | 肺を潤す |
枇杷葉 | 去痰 |
升麻 | 生薬を上部に効かせる |
辛夷 | 軽い辛温解表 通鼻 |
全体的に五臓の肺を「潤す・冷やす」生薬で構成されています。
「清肺湯」という漢方薬もありますが、コレとはちょっと違った処方なので間違えないようにしましょう。
黄芩・山梔子という黄連解毒湯にも含まれる熱毒を去る生薬が構成されているので化膿性が強い(蓄膿症)症状にも対応できると思います。
この辺も葛根湯加川芎辛夷と違いますね。
辛夷は鼻つまりによく使う生薬です。
よく使う症状
体力中等度以上で,濃い鼻汁が出て,ときに熱感を伴うものの次の諸症:
鼻づまり,慢性鼻炎,蓄膿症(副鼻腔炎)厚生労働省 薬局製剤指針 より
鼻炎と言っても色々あるので自分に合っているか確認してみてくださいね。
鼻づまり
熱感が強い人の鼻づまりに有効です。
出てくる鼻水は「薄く水っぽい」よりも「黄色く濃い」方が適しています。
慢性鼻炎・蓄膿症
こちらも熱感があるタイプの方が使いやすいと思います。
- 葛根湯加川芎辛夷は冷えてるタイプ
- 辛夷清肺湯は熱が強いタイプ
こう使い分けると良いかと思います。
こんなパターンが多いと思います。(個人差あり)
注意すべき点
便利な漢方薬ですが、どんな症状にも良いわけではありません。
身体を冷やす処方
特に肺・胃を冷やしやすい生薬で構成されているので
- 薄い痰がたくさん出るような咳
- 胃もたれしやすい
- 下痢しやすい
この様な時は注意が必要です。
また、服用して胃腸に負担がかかる場合は量を減らしたり、他の処方に変更した方が良いかもしれません。
身体を元気にする処方ではない
麦門冬や百合など体を潤す生薬は含まれますが、全体的には体の熱を去る生薬で構成されています。
「体力中程度」と書いてあるように虚弱な人が単独で使い続ける時は少し注意した方が良いと思います。
まとめ
慢性鼻炎や蓄膿症(副鼻腔炎)に有効な辛夷清肺湯(しんいせいはいとう)。
風邪が悪化しやすい人やアレルギー鼻炎の人は知っておくと便利な漢方薬です。
簡単にまとめると
辛夷清肺湯は黄色い鼻水が出るような熱感のある鼻炎によい。
【よく使う症状】
- 鼻づまり
- 慢性鼻炎
- 蓄膿症(副鼻腔炎)
【注意すべき点】
- 身体を冷やす
- 身体を元気にする処方ではない
蓄膿症は繰り返すことがあるから治っても養生しないとダメだよ。