他にはどう?
もしかしたら当帰四逆加呉茱萸生姜湯(とうきしぎゃくかごしゅゆしょうきょうとう)が効くかもね!
長い名前の漢方薬ね!
みなさん、こんにちは!
漢方薬剤師の玄(@gen_kanpo)です。
漢方薬局には一年を通して「冷え」の相談があります。
症状や冷える場所などによって漢方薬が変わるのですが…
婦人の冷えによく使うのが、
当帰四逆加呉茱萸生姜湯(とうきしぎゃくかごしゅゆしょうきょうとう)です。
今回は
なぜ?当帰四逆加呉茱萸生姜湯が女性の冷えに有効なのか?
どんな人に有効なのかを解説していこうかと思います。
- 手足が冷える
- 下腹部痛(生理痛)が重い
- 頭痛がする
当帰四逆加呉茱萸生姜湯ってどんな漢方薬?
簡単に説明すると
血虚に重なって冷えが体内に侵入してきた時に起こる不具合に対する漢方薬です。
(血虚受寒)
この処方は婦人科領域で使う場面が多いです。
それは女性には生理があるため。
月に1度生理で血を失う女性は「血虚」なりやすいです。
血は西洋医学の「血液」とは少し違うので詳しくはこちらを↓
当帰四逆加呉茱萸生姜湯は血虚(血が足りない)ベースがある人に有効な漢方薬です。
そのため婦人科領域で使う場面が多くなるのです。
当然、体質に合っていれば男性が使ってもOKです。
出典の傷寒論には
手足の冷えがひどく、脈が細く消えそうなものは当帰四逆湯でメインで治療する。もし、その人に慢性的な冷えがあるなら当帰四逆加呉茱萸生姜湯がよい。
この様なことが書いてあります。
血虚の人が寒さの邪気を受けると陽気が四肢に到達しないので冷えを感じやすくなります。
「四逆」の「四」とは四肢(手足)「逆」とは「逆冷」のことを言い、手足(体の末端)から冷えが上がっていくことを意味します。
これを去るのが当帰四逆湯(とうきしぎゃくとう)
上記の通り当帰四逆散という漢方薬に呉茱萸と生姜が加わった処方になります。
乾姜、附子などの強めの体温める生薬を使わないのは「血虚」があるため。
優先的に当帰などで補血するのが先決です。
補血をせずに温めると血虚が悪化すると考えられています。
構成生薬
≪生薬名≫ | ≪効能・効果≫ |
---|---|
当帰 | 補血・活血⇒メインの生薬 |
芍薬 | 補血 当帰の作用を助ける |
桂皮(枝) | 気血を巡らす 体表部を温め寒邪を去る |
細辛 | 桂枝と共に気血を巡らせ 寒邪を去る 不要な湿を去る |
木通 | 桂枝 細辛の補助 |
甘草 | 胃腸を整える 諸薬の緩和 |
大棗 | 胃腸を整える |
呉茱萸 | 脾胃を温める |
生姜 | 脾胃を温める |
当帰四逆加呉茱萸生姜湯は名前の通り
当帰四逆湯+呉茱萸+生姜
の構成になっています。
当帰四逆湯も手足の冷えに使う漢方薬ですが、ここに呉茱萸、生姜という温性の生薬を足すことで慢性の冷え症状を改善する漢方薬になっています。
また、体の弱い人の寒さの邪気による風邪に使う桂枝湯を含む処方とも考えることができます。
桂枝湯(桂枝 芍薬 大棗 甘草 生姜)
桂枝湯は陰陽のバランスを調える作用があるのでより慢性疾患に使いやすいです。
よく使う症状
温める生薬で構成されている当帰四逆加呉茱萸生姜湯。
どの症状に使っても「冷えて悪化する」というのがポイントになります。
なら冬にぴったりな漢方薬ね!
手足の冷え
強い手足の冷えを実感する人にはオススメです。
メーカーによっては「しもやけ」で効能効果をとっているところもあります。
血が足りない状態で寒邪が侵入してきているので気血の巡りが悪くなった状態に有効です。
寒冷地などでの「一時的な冷え」
体質的な「慢性的な冷え」
どちらにも対応できる漢方薬です。
手足に不快な冷えを感じた場合のファーストチョイスとされることが多いです。
下腹部痛(生理痛)
こちらも冷えて悪化するタイプの下腹部痛(生理痛)に有効です。
冷えが入り込んで気血の巡りが悪くなるタイプの生理痛は痛みが激痛の場合があります。
温めて楽になる人は検討しても良いかもしれません。
逆に言うとこの処方で痛みが和らぐに人は生理中、後に体を冷やさないようにしましょう。
「血虚+冷え」この場面は生理中、後に起こりやすいです。
また「血虚+冷え」の組み合わせは生理不順の原因にもなります。
特に「生理が遅れる」「経血量が少ない」タイプには検討してもよいかもしれません。
頭痛
他の症状と同条件(血虚+冷え)で頭痛にも使われます。
生理後の頭痛には使うことが多いです、
逆に気圧が影響するような頭痛は他は五苓散のような処方が有効なことが多いです。
ちなみに
胃が冷えることでおこる吐き気、頭痛には同じ呉茱萸が構成された「呉茱萸湯」という漢方が有効です。
こちらは慢性的な胃の冷えが原因。
血虚がない場合はこちらの方を検討してもよいです。
注意すべき点
「冷え+血虚」と女性にとって比較的使いやすい漢方薬の当帰四逆加呉茱萸生姜湯ですが注意点もあります。
温める処方
当然ながら温める処方なので体がのぼせるタイプには注意が必要です。
人によっては胃腸に重いかも
個人的にはそこまで重いイメージは無いのですが「当帰」「芍薬」を含む処方なので飲んでもたれるようなら注意が必要です。
- 他の処方を検討する
- 量を減らす
- 胃腸の漢方を併用する
工夫が必要になってきます。
ちょっと苦いかも
呉茱萸は生薬でトップクラスの苦さを誇る生薬なのでこの漢方薬はかなり苦いです。
でもスグになれるから大丈夫だよ(多分)!
まとめ
血虚を治すことがベースの漢方薬。
婦人病を中心に冷えや下腹部痛に有効な当帰四逆加呉茱萸生姜湯。
「しもやけ」にも有効な処方なので冬時期に知っておくとても便利です。
簡単にまとめると
当帰四逆加呉茱萸生姜湯は血虚の状態に冷えが入り込んだ時の不具合に有効
【よく使う症状】
- 手足の冷えに(しもやけ)
- 下腹部痛(生理痛)
- 生理不順
- 頭痛
【注意すべき点】
- 温める処方
- 人によっては胃腸に重いかも
- ちょっと苦い!
でも、この処方が効く!ってことは血虚があるかもしれないよ。
生理後のケアなども大事にね!
(手にアイスとゲーム)