杞菊地黄丸とは?効果・効能や向いている人、注意点を漢方薬剤師が解説

みなさん、こんにちは!
漢方薬剤師の玄(@gen_kanpo)です。
目も疲れやすいし、頭が重かったり、めまいが気になることもあるわ。
このような目の不調に使われる漢方薬のひとつに、杞菊地黄丸(こぎくじおうがん)があります。
杞菊地黄丸は、特に加齢などに伴って「肝(かん)」や「腎(じん)」の働きが不足した状態を補うことを目的とした処方です。
同じ疲れ目やかすみ目でも、体質や一緒に出ている症状によって合う漢方薬は変わるよ。
ただし、単に「目が疲れたから杞菊地黄丸」というわけではありません。
漢方では同じ疲れ目やかすみ目でも、体質や一緒に現れている症状などから適した処方を考えます。
この記事では、杞菊地黄丸の効果・効能、構成生薬、中医学ではどのような人に向いているのか、服用時の注意点について漢方薬剤師が解説します。
杞菊地黄丸とはどんな漢方薬?


杞菊地黄丸は、六味地黄丸(六味丸)に「枸杞子(くこし)」と「菊花(きくか)」を加えた処方です。
六味地黄丸
+ 枸杞子
+ 菊花
=杞菊地黄丸
六味地黄丸は「腎」を補う代表的な処方のひとつ。
そこに目と関係の深い「肝」を補う枸杞子と菊花を加えることで、肝と腎の不足を背景とした目の症状などに用いられる処方になっています。
ポイントになるのは「肝」と「腎」の両方なんだ。
杞菊地黄丸の出典
杞菊地黄丸は、清代の医学書『医級(いきゅう)』を出典とする処方です。
「肝腎不足のエネルギーが不足して(肝腎陰虚)かすみ目、物が二重に見える)、目が乾燥して痛む時には杞菊地黄丸を飲もう!」
※超意訳
中医学では、目の働きには「肝」、加齢や成長・生殖などには「腎」が深く関係すると考えます。
特に杞菊地黄丸を考えるうえで重要なのが、
「肝腎陰虚(かんじんいんきょ)」
という状態です。
「肝」と「腎」を補って目を養う
中医学では、
「肝は目に開竅する」
と考え、肝と目には深い関係があるとされています。
また、肝は「血を蔵す」とされ、目を養うためにも十分な血や陰が必要です。
そのため、肝の血や陰が不足すると、
- 目が疲れやすい
- 目がかすむ
- 目が乾燥する
といった症状につながると考えます。
一方、「腎」は加齢や成長などと関係が深い臓腑です。
年齢とともに腎の働きが衰え、さらに肝の陰も不足した状態が「肝腎陰虚」です。
杞菊地黄丸を考えるポイント
目の症状だけを見るのではなく、
「加齢に伴って目がかすむ」
「目が疲れやすく、ほてりや口渇もある」
「目の不調に加えて頻尿なども気になる」
など、肝腎の不足を示す症状が一緒にあるかを考えます。
杞菊地黄丸の構成生薬


杞菊地黄丸は8種類の生薬から構成されます。
| 生薬名 | 中医学的な主な働き |
|---|---|
| 枸杞子 | 肝腎を補い、目を養う |
| 菊花 | 肝を整え、目の症状に用いる |
| 熟地黄 | 腎陰や血を補う |
| 山茱萸 | 肝腎を補い、精を収める |
| 山薬 | 脾胃を補い、腎を助ける |
| 茯苓 | 脾を助け、余分な水分をさばく |
| 沢瀉 | 余分な水分を排出し、熱をさます |
| 牡丹皮 | 血の巡りを助け、余分な熱をさます |
ポイントとなるのが「六味地黄丸+枸杞子+菊花」という構成です。
六味地黄丸は、
熟地黄・山茱萸・山薬・茯苓・沢瀉・牡丹皮
の6種類から構成されています。
六味地黄丸は「三補三瀉」と呼ばれるバランスで構成され、腎陰を補いながら、余分な水分や熱にも配慮した処方です。
そこに、
枸杞子:肝腎を補って目を養う
菊花:肝を整えて目の症状に用いる
という2つの生薬を加えたものが杞菊地黄丸です。
杞菊地黄丸の効果・効能


薬局製剤指針では、杞菊地黄丸の効能・効果として次のように示されています。
体力中等度以下で,疲れやすく胃腸障害がなく,尿量減少又は多尿で,ときに手足のほてりや口渇があるものの次の諸症:かすみ目,つかれ目,のぼせ,頭重,めまい,排尿困難,頻尿,むくみ,視力低下
ここで重要なのは、「疲れ目・かすみ目だけを見て選ぶ処方ではない」ということです。
「疲れやすい」「胃腸障害がない」「尿量の変化」「手足のほてり」「口渇」なども処方を考える重要なポイントになります。
疲れ目・かすみ目・視力低下
杞菊地黄丸の代表的な適応として挙げられるのが、
- かすみ目
- 疲れ目
- 視力低下
などの目の症状です。
中医学では、肝腎の陰が不足して目を十分に養えなくなった状態に用いると考えます。
そのため、単純な一時的な目の疲れというより、加齢や慢性的な疲労などを背景として目の不調が続いている場合に検討される処方です。
ただし、急な視力低下、視野の異常、強い目の痛みなどがある場合には、漢方薬だけで様子を見ず眼科を受診してください。
頭重・めまい
杞菊地黄丸の効能・効果には「頭重」「めまい」も含まれています。
ただし、どのようなめまいにも使用するという意味ではありません。
中医学的には、肝腎の不足を背景として、
- 疲れるとふらつきやすい
- 慢性的に頭が重く感じる
- 目の不調と一緒にめまいや頭重感がある
といった場合に検討します。
めまいの原因は多岐にわたります。
突然の激しいめまい、ろれつが回らない、手足のしびれ・麻痺、激しい頭痛などを伴う場合は、速やかに医療機関を受診してください。
頻尿・排尿困難・ほてり・口渇
杞菊地黄丸は六味地黄丸をベースとしているため、目以外の症状も処方を考えるヒントになります。
例えば、
- 頻尿
- 排尿困難
- 尿量の変化
- 手足のほてり
- 口渇
などです。
これらに目のかすみや疲れ目などが重なっている場合には、杞菊地黄丸の適応を考えやすくなります。
杞菊地黄丸が向いている人は?
ここまでをまとめると、杞菊地黄丸は次のような特徴がある人に検討される漢方薬です。
- 疲れ目・かすみ目が気になる
- 加齢とともに目の不調が増えてきた
- 疲れやすい
- 手足にほてりを感じる
- 口が渇きやすい
- 頻尿など排尿の変化がある
- 目の不調とともに頭重感やめまいがある
同じ「疲れ目」でも、体質や症状の組み合わせによって処方は変わるんだ。
ただし、これらに当てはまれば必ず杞菊地黄丸が適しているというわけではありません。
漢方では同じ「疲れ目」でも、その人の体質や症状の組み合わせによって処方が変わります。
杞菊地黄丸と六味地黄丸・八味地黄丸の違い
杞菊地黄丸を理解するときに知っておきたいのが、六味地黄丸や八味地黄丸との違いです。
杞菊地黄丸と六味地黄丸の違い
杞菊地黄丸は、
六味地黄丸+枸杞子+菊花
という構成です。
そのため、六味地黄丸が適するような腎陰不足の症状に加えて、かすみ目・疲れ目など目の症状が目立つ場合に杞菊地黄丸が検討されます。
杞菊地黄丸と八味地黄丸の違い
八味地黄丸は、六味地黄丸に桂皮と附子を加えた処方です。
六味地黄丸や杞菊地黄丸が陰の不足やほてりなどを考慮するのに対して、八味地黄丸は冷えを伴う腎陽虚に用いられる代表的な処方です。
「目だから杞菊地黄丸」「頻尿だから八味地黄丸」と症状だけで決めず、冷えやほてりなど全身を見ることが大切だよ。
「目の症状があるから杞菊地黄丸」「頻尿だから八味地黄丸」と症状ひとつだけで選ばず、全身の状態を見ることが大切です。
八味地黄丸については、こちらの記事で詳しく解説しています。
杞菊地黄丸を服用するときの注意点


杞菊地黄丸も医薬品です。
「漢方薬だから誰でも安心して飲める」というわけではありません。
胃腸が弱い人は注意
杞菊地黄丸には地黄が含まれています。
地黄を含む漢方薬では、体質によって食欲不振、胃部不快感、下痢などの消化器症状が現れることがあります。
特に胃腸が弱い人は注意が必要です。
漢方薬と胃腸の関係については、こちらの記事でも解説しています。
効果が出るまでの期間には個人差がある
「杞菊地黄丸は何日飲めば効きますか?」
という質問もありますが、一律に「○日」「○か月」と決めることはできません。
症状や体質、服用する製品などによっても異なります。
杞菊地黄丸などは比較的に効き目がゆっくりの場合があります。
ただ、一定期間服用しても症状が改善しない場合や、症状が悪化する場合は漫然と服用を続けず、医師・薬剤師・登録販売者などに相談しましょう。
急な目の症状は眼科へ
疲れ目やかすみ目だと思っていても、目の病気が隠れていることがあります。
特に、
- 急に視力が低下した
- 視野が欠ける
- 物が突然二重に見える
- 強い目の痛みがある
- 目の症状が急激に悪化した
などの場合は、自己判断で漢方薬を使用せず、眼科などの医療機関を受診してください。
まとめ|杞菊地黄丸は「肝腎」と目の不調を考える漢方薬


杞菊地黄丸は、六味地黄丸に枸杞子と菊花を加えた漢方薬です。
中医学では「肝腎陰虚」を背景とした目の症状などに用いる処方として考えます。
- 六味地黄丸に枸杞子と菊花を加えた処方
- かすみ目・疲れ目・視力低下などが効能・効果に含まれる
- 頭重・めまい・頻尿・ほてり・口渇なども処方を考えるポイント
- 単純な「PCによる疲れ目=杞菊地黄丸」ではない
- 胃腸が弱い人は消化器症状に注意する
- 急な視力低下や強い目の症状は医療機関を受診する
大切なのは「疲れ目」という症状だけでなく、体質や全身の状態を合わせて漢方薬を選ぶことです。
杞菊地黄丸が自分に合うか分からない場合や、服用中に気になる症状が現れた場合は、漢方に詳しい医師や薬剤師などに相談してください。












