生理痛に使われる漢方薬とは?4つのタイプと特徴を漢方薬剤師が解説

漢方薬を飲んでいるけど、いまいち合っていない気がするの。
生理痛に使われる漢方薬だけど、青さんの今の状態に合っているとは限らないよ。
効能・効果に「生理痛」って書いてあるのに?
生理痛に用いられる漢方薬はいくつもあります。
しかし、同じ「生理痛」でも、漢方では痛み方や体質によって考え方が異なります。
そこで今回は、生理痛を中医学ではどのように考えるのか、代表的な4つのタイプと漢方薬について解説します。
なお、生理痛には子宮内膜症や子宮筋腫などの病気が隠れている場合もあります。
痛みが強い、以前より悪化している、日常生活に支障があるなどの場合は、漢方薬だけで様子を見ず婦人科への相談を検討してください。
生理痛を中医学ではどう考える?


生理痛は、中医学では「痛経(つうけい)」と呼ばれます。
中医学で「痛み」を考えるときに、よく使われる考え方が次の2つです。
つまり、中医学では生理痛を大きく、
「滞って痛むタイプ」
と
「不足して痛むタイプ」
に分けて考えていきます。
ただし、生理痛を「我慢するのが当たり前」と考えないことも大切です。
特に、
- 痛みで学校や仕事を休むほどつらい
- 以前より生理痛が強くなっている
- 鎮痛薬を使用しても強い痛みが続く
- 生理以外の時期にも下腹部痛がある
- 出血量が急に増えた
といった場合は、婦人科など医療機関への相談をおすすめします。
生理痛タイプ① 気滞血瘀|生理前~前半に痛みが強い


中医学で「気滞血瘀(きたいけつお)」とは、気の巡りが滞り、それに伴って血の巡りも悪くなった状態を指します。
ストレスなどによって「肝」の疏泄機能が乱れ、気血の巡りが滞ることで、生理前から生理前半にかけて痛みが出ると考えます。
【気滞血瘀タイプの特徴】
- 生理前にイライラしやすい
- 生理前に胸が張る
- 生理前~生理1、2日目に痛みが強い
- 刺すような痛みを感じる
- 経血の色が暗い
- 血の塊が混じることがある
- 下腹部を押されると不快に感じる
気滞血瘀タイプに用いられる漢方薬
血府逐瘀丸(けっぷちくおがん)
血府逐瘀丸は、中医学で「気」と「血」の巡りを整える目的で用いられる処方です。
構成を見ると、血の巡りを整える「桃紅四物湯」と、気の巡りを整える「四逆散」の考え方を組み合わせたような処方になっています。
そのため、中医学では、
- イライラや胸の張りがある
- 刺すような痛みがある
- 経血に血の塊が混じる
など、気滞と瘀血の両方が目立つ場合に検討される処方です。
折衝飲(せっしょういん)
折衝飲も、瘀血を背景とした月経痛などに用いられる漢方処方です。
特徴的なのが延胡索(えんごさく)を含むこと。
中医学では延胡索は、気血の巡りを整えながら痛みに用いられる代表的な生薬です。
同じ「瘀血」の生理痛でも、症状や体質によって使用する漢方薬は異なります。
自己判断で処方を選ばず、専門家に相談しましょう。
気滞血瘀タイプの養生


- 長時間同じ姿勢を続けない
- 無理のない範囲で体を動かす
- ストレスをため込みすぎない
- 睡眠不足や夜更かしを避ける
- 体を冷やしすぎない
無理なく「巡らせる」ことを意識しよう。
生理痛タイプ② 寒凝|冷えると痛みが強くなる


「寒凝(かんぎょう)」は、寒さによって気血の巡りが滞った状態です。
中医学では、寒には物を収縮させたり、巡りを悪くしたりする性質があると考えます。
そのため、
「冷えると生理痛が悪化し、温めると楽になる」
というのが大きな特徴です。
【寒凝タイプの特徴】
- 下腹部が冷えて痛む
- 冷えると痛みが強くなる
- 温めると少し楽になる
- 経血量が少ない傾向
- 経血の色が暗い
- 手足が冷えやすい
寒凝タイプに用いられる漢方薬
当帰四逆加呉茱萸生姜湯
当帰四逆加呉茱萸生姜湯は、手足など末端の冷えが強い人に用いられる代表的な漢方薬です。
処方中には、体を温める方向に働く呉茱萸や生姜などが含まれています。
さらに当帰・芍薬など、血を補いながら巡りを整える生薬も配合されています。
そのため、
- 手足が強く冷える
- 冷えると下腹部痛が悪化する
- 冷えに伴う月経トラブルがある
といった場合に検討されることがあります。
冷えについては、こちらの記事でも詳しく解説しています。
寒凝タイプの養生


- 温かい食事を意識する
- 下腹部や腰、足元を冷やしすぎない
- 冷たい飲み物・食べ物のとり過ぎに注意する
- 入浴などで体を無理なく温める
生理痛タイプ③ 気血虚弱|生理後半にしくしく痛む


気血虚弱は、中医学でいう「不栄則痛」の代表的なタイプです。
月経によって血を失った後、体を十分に養う「気」と「血」が不足し、弱い痛みが続くと考えます。
【気血虚弱タイプの特徴】
- 生理後半~生理後に痛みやすい
- しくしくと弱く痛む
- 経血の色が薄い傾向
- 疲れやすい
- 顔色が悪い、立ちくらみなどを伴うことがある
気血虚弱タイプに用いられる漢方薬
温経湯(うんけいとう)
温経湯は、血を補い、巡りを整えながら体を温める方向に働く生薬で構成された漢方薬です。
中医学では、冷えや血の不足などを背景とした月経トラブルに用いられることがあります。
ただし、「生理痛なら温経湯」というわけではありません。
冷え・乾燥・月経周期・経血の状態など、全身の状態を見ながら選びます。
また、生理痛やむくみなどに当帰芍薬散が用いられることもありますが、こちらも体質によって適否が異なります。
気血虚弱タイプの養生


- 疲れをため込みすぎない
- 十分な睡眠を確保する
- 無理な食事制限を避ける
- 消化しやすく栄養のある食事を心がける
- たんぱく質や鉄なども不足しないよう意識する
生理痛タイプ④ 肝腎虚|腰のだるさなどを伴う


中医学では、「肝」と「腎」は月経や生殖、加齢などと深い関係があると考えます。
肝腎が不足すると、月経に伴って腰のだるさやめまいなどが現れ、弱い痛みが続くことがあります。
【肝腎虚タイプの特徴】
- 生理後半にしくしく痛む
- 痛みは比較的弱い
- 腰が重だるい
- 疲れやすい
- めまいや耳鳴りなどを伴うことがある
肝腎虚タイプに用いられる漢方薬
肝腎虚の状態では、体質や症状に応じて肝や腎を補う処方を検討します。
ただし、生理痛に対して特定の「補腎薬」を一律に選ぶわけではありません。
痛みだけでなく、冷え・ほてり・月経周期・腰の状態・疲労感などを合わせて判断することが重要です。
例えば杞菊地黄丸は、六味地黄丸に枸杞子・菊花を加えた処方で、肝腎陰虚を背景としたかすみ目・疲れ目などに用いられる漢方薬です。
杞菊地黄丸についてはこちらで詳しく解説しています。
生理痛を理由に、杞菊地黄丸や他の漢方薬を自己判断で組み合わせて服用することは避けましょう。
肝腎虚タイプの養生


- 睡眠をしっかり確保する
- 過労を避ける
- 無理のない範囲で体を動かす
- 食事を抜いたり極端に制限したりしない
生理痛の漢方薬はいつ飲む?


「生理痛の漢方薬は、生理中だけ飲めばいいの?」
という質問もよくあります。
漢方薬の服用時期は、その人の体質や生理痛のタイプ、処方の目的によって変わります。
漢方相談では、普段から継続して服用する場合もあれば、症状や体質に合わせて、
- 生理が始まる1週間ほど前から服用する
- 生理後から次の生理に向けて服用する
- 普段の体質を整える漢方薬と、生理前後に使う漢方薬を分ける
といった服用方法を提案することもあります。
これは、生理痛の原因を中医学的に「気血の滞り」「冷え」「気血の不足」などに分け、その人の状態に合わせて考えるためです。
そのため、「生理痛には生理1週間前から飲めばいい」などと、自己判断で服用時期を決めるのはおすすめできません。
同じ生理痛でも、適した漢方薬や服用するタイミングは人によって異なります。
特に服用時期を調整したい場合は、漢方に詳しい医師や薬剤師などに相談し、自分の体質や症状に合わせて提案された服用方法を守るようにしましょう。
また、市販の漢方薬を服用する場合は、製品に記載された用法・用量を守って使用してください。
まとめ|生理痛の漢方薬は「痛み方」と全身の状態から考える


生理痛は、人によって痛む時期や痛み方、伴う症状が異なります。
中医学では、こうした違いを手がかりに体の状態を考えていきます。
- 生理前~前半に痛みが強く、イライラ・胸の張り・血の塊などがある
→ 気滞血瘀タイプ - 冷えると痛みが悪化し、温めると楽になる
→ 寒凝タイプ - 生理後半~生理後にしくしく痛み、疲れやすい
→ 気血虚弱タイプ - 弱い痛みに腰のだるさ、疲労感などを伴う
→ 肝腎虚タイプ
ただし、この分類はあくまで中医学で体の状態を考えるための目安です。
症状だけを見て自己判断で漢方薬を選ぶのではなく、体質や経過も含めて専門家に相談することをおすすめします。
また、痛みが強い、以前より悪化している、日常生活に支障があるなどの場合は、婦人科など医療機関への相談を優先してください。












