若いもんにも使うからな(怒気)!!
みなさん、こんんちは!
漢方薬剤師の玄(@gen_kanpo)です!
ドラッグストアなどで働いている人だと…
八味丸(八味地黄丸)=高齢者のお薬
こんなイメージを持つかもしれません。
全部が間違っているわけではありませんが正確でもありません。
わりと雑に使われがちなイメージです。
きちんと使えないと逆効果なこともあります。
そこで今回は巷でわりと雑に使われている漢方薬「八味丸(八味地黄丸)」を解説してみたいと思います。
- 体が冷える
- 頻尿・夜間尿が気になる
- 体が浮腫む
八味丸ってどんな漢方薬?
八味丸は別名、(金匱)腎気丸 八味地黄丸とも言われます。
この処方は簡単に説明すると
腎陽を補うことでいろいろな症状を改善する漢方薬です
症状としては特に頻尿、夜間尿などの代表的な方剤です。
ただ理解しないで使われている場合が多い気がします。
出典の金匱要略には…
- 下肢のしびれや麻痺が上ってきて下腹部に達するもの治す
- 虚労の腰痛、下腹部のひきつり、尿の出が悪い時は八味地黄丸が主る
- 微量の水が巡らない事での息切れは尿で水を抜けばよい苓桂朮甘湯あるいは腎気丸(八味地黄丸)を用いる
- 男性でのどが異様に渇き、多飲多尿になるのは腎気丸(八味地黄丸)を用いる
- 腎気不足による婦人で尿が出ない時に応用する(転胞という)
※この内容は後で付け加えられたものとされています
※超意訳&短縮
条文でもかなり尿の話が出ています。
腎陽とは?
東洋医学の「腎」は、解剖学の「腎臓」とは少し異なり生命、老化、生殖機能など主る臓です。
また、骨や耳なども腎が主るとされています。
腎には生命エネルギーの源「精」が蓄えられてあるとされています。
※腎精ともいわれます。
腎の症状の多くはこの腎精不足が原因です。
古典・『黄帝内経素問(こうていだいけいそもん)』の上古天真論(じょうこてんしんろん)には…
腎のエネルギーは男性は8の倍数、女性は7の倍数で変化する。
男性では32歳、女性では28歳がピークでそこから低下していく。
※超意訳&短縮
この様な事が書かれています。
年を重ねると腎精はどんどん減っていく傾向にあります。
すると腎が主る部分の機能も低下すると考えられています。
広い意味での腎精不足には腎気虚・腎陰虚・腎陽虚があり八味丸はこの腎陽虚の漢方薬とされています。
陽虚とは腎性不足の中でも温めるエネルギーが不足した状態です。
腎陽は体を温める土台です。
このエネルギーが低下すると慢性的な冷え症状が現れたりします。
そのため八味丸という漢方薬は…
(東洋医学的)腎の機能低下の症状+冷えの症状
このような時に有効とされます。
ちなみに
八味地黄丸から附子と桂皮(桂枝)を抜いたものを六味地黄丸(六味丸)と言います。
六味丸は腎精不足の基本の漢方薬です。
六味丸をベースに考え
- 冷えが強い→八味丸
- ほてりが強い→知柏地黄丸
- 肝の潤いも不足→杞菊地黄丸
このように応用させていくことができます。
構成生薬
≪生薬名≫ | ≪効能・効果≫ |
---|---|
(熟)地黄 | 補血・補腎陰⇒体を潤す |
山茱萸 | 補肝陰 精が漏れるの防ぐ |
山薬 | 補脾陰 精が漏れるのを防ぐ |
沢瀉 | 不要な水分を去る 地黄のベタベタを防止 |
茯苓 | 脾胃を補う 不要な水分を去る |
牡丹皮 | 肝の熱を去る 血の流れを改善 |
桂枝(皮) | 温めることで下半身の気血を巡らす |
附子 | 腎を温め陽を増やす |
附子・桂皮を抜いた六味丸は「三瀉三補」という構成で有名です。
- 地黄、山薬、山茱萸→三補
- 沢瀉、茯苓、牡丹皮→三瀉
地黄、山薬、山茱萸の三つで腎・肝・脾を補う⇒三補
沢瀉、茯苓で不要な水分を去り、牡丹皮は血の流れを改善⇒三瀉
補いと瀉がバランス良く配合されています。
ここに附子と桂皮(枝)が入ることで体を温め気血を巡らす作用が加わります。
個人的には地黄は潤す力が強い熟地黄が良いと思います。
これにも色々な説があるな。
よく使う症状
体力中等度以下で,疲れやすくて,四肢が冷えやすく,尿量減少又は多尿でときに口渇があるものの次の諸症:下肢痛,腰痛,しびれ,高齢者のかすみ目,かゆみ,排尿困難,残尿感,夜間尿,頻尿,むくみ,高血圧に伴う随伴症状の改善(肩こり,頭重,耳鳴り),軽い尿漏れ
厚生労働省 薬局製剤指針より引用
腎を補う漢方薬の代表なので体が弱った人を中心に使うことが多いです。
高齢者に使うイメージですが腎陽虚があるならどこの年齢層でも使って大丈夫です。
子供に使ってもよいですが陽が足りなくなる事は少ないので六味丸の方をよく使います。
頻尿・夜間尿
一番使う頻度が高い症状が頻尿や夜間尿です。
腎は五行説で「水」に属します。
水の大まかな流れは…
脾で吸収⇒肺で全身に巡らせ⇒腎で排出・再利用
腎は水の排出・再利用にかかわります。
腎の裏は膀胱です。
腎のエネルギーが弱まると固摂作用(留めておく力)が低下し尿を留めておくことができなくなります。
すると頻尿や夜間尿が増えることがあります。
また腎陽が低下することで…
水を気化(再吸収)することができずどんどん尿にしてしまう。
陽気が低下することで水を上部に持ち上げることできないため上部か渇く。
のどが異様に渇き、多飲多尿のような症状が合わせて出ることもあります。
東洋医学ではこの症状は消渇(しょうかち)と言われ、現代では糖尿病に近い症状と考えられています。
※八味丸は血統を下げる効果効能はない
腰痛・神経痛
東洋医学では『腎は骨を主る』とされています。
そのため腎陽を補う八味丸の効能効果には『腰痛や坐骨神経痛』という文字が入ることがあります。
ポイントとしては
- 腎気が低下⇒高齢者・慢性化している
- 陽虚⇒冷えると悪化or温めると楽になる
このような時は検討する価値はあるかもしれません。
浮腫(むく)み
頻尿のところで解説しましたが腎の機能が低下すると水分の気化は作用は低下。
- 水を再利用できない
- 水を上部にあげれない
このことで浮腫みが出やすくなります。
特徴としては『冷えて下半身が浮腫む』こんな時は検討してもよいでしょう。
頭重、肩こり、耳鳴り
腎は脳をつかさどるとされます。
腎虚になると脳が空虚になり頭重感など重だるさが生じます。
特徴としては弱々しい痛み(重み)が継続したり、疲労で悪化します。
腎は耳に通じているので虚すると耳鳴りがするようになります。
腎虚の耳鳴りはジージーとセミが鳴くような低い音がするのが特徴です。
注意すべき点
便利で応用範囲が広い漢方薬ですが注意すべき点もあります。
特に体質を見ないで使われる場合が多い処方だと思っています。
確認してみましょう。
体を温める処方
八味丸は桂皮、附子が構成されている処方なので体を温めます。
頻尿、夜間尿の人は冷えている人が多いのですが、絶対冷えてるわけではありません。
腎の力が衰えてる場合にも
- 腎気虚
- 腎陽虚
- 腎陰虚
タイプが分かれます。
八味丸の対応は腎陽虚なので必ず「体が冷えている!」を確認して使うようにしましょうね。
胃腸に負担がかかる場合がある
八味丸のメイン生薬は地黄です。
地黄は補血、補腎の効能が優れていますが、その反面胃腸に負担がかかる生薬としても有名です。
体調にあっていても消化吸収ができなければ効果は半減。
逆に飲食物から後天的にエネルギーが作れなくなってしまうので逆効果とも言えます。
まとめ
高齢者で使う場面が多い八味丸。
寒い冬で冷えが気になる人は検討する余地がある漢方薬です。
簡単にまとめると
八味丸は腎陽を補う処方
【よく使う症状】
- 頻尿・夜間尿
- 腰痛・神経痛
- 浮腫み
- 頭重感、耳鳴り、肩こり
【注意すべき点】
- 体を温める
- 胃腸に負担がかかる場合がある
でも黄老師には必要ないですね!
お酒ばっかり飲んでる湿熱タイプだから。
※湿熱タイプには八味丸は使いにくい