どんな感じ?
体も疲れて不安感なんかもあるんだ。
なら「酸棗仁湯(さんそうにんとう)」なんかいいかもね。
不眠の治療でよく使われる「酸棗仁湯(さんそうにんとう)」
病院などからもよく処方が出ているイメージです。
とてもよい漢方薬なのですが、全ての「不眠症」に有効とは限りません。
今回はこの「酸棗仁湯」について、どんな不眠に有効なのか解説してみようかと思います。
- 不眠気味である
- 精神不安がある
- 体がほてる
酸棗仁湯ってどんな漢方薬?
簡単に説明すると
肝の陰血が不足することでおこる虚火に対する漢方薬です。
陰血は体を潤し火を鎮めるものです。
足りなくなることで陰陽のバランスが陽に傾き体は「火」がつきやすい状態になります。
火をつければすぐに燃えてしまう状態だね。
火がつく(陽が亢進)と…
- 不眠
- 気持ちがソワソワする
- 火照り(※)
- 動悸(※)
※市販の適応にはなっていない
このような症状が出ると考えられています。
酸棗仁湯はこれらに対応する漢方薬となります。
出典の金匱要略には
体も心は疲れ、火照って眠れない人には、酸棗仁湯が適応です。
※ 超意訳
この様な事が書かれています。
この火照りは「外感病」の熱ではなく体の内側から発生した熱です。
前述とおり陰陽のバランスが崩れ相対的に陽が強くなった状態を指します。
このような時は…
「氷水をかけて冷やすのではなくラジエーター(冷却器)を修理するような漢方薬が有効です」
肝の陰血を消耗する要因
なぜ肝の陰血は不足するのでしょう?
肝の陰血を消耗する要因
- 長期のストレス
- 目の酷使(PC・スマホ・ゲーム)
- 睡眠不足(寝る時間が遅い)
現代の人はとても陰血を消耗しやすいです。
目は肝に属する感覚器なので酷使すれば肝は疲れていきます。
また肝は五行説では「木」に属します。
木はノビノビ成長する物で締め付けがとても嫌いです。
短期のストレスなら肝の陽が多少亢進しても肝陰がバランスを取るのですが
長期にストレスがかかり肝の陽がずっと亢進しているとバランスを取っている陰が消耗し続け足りなくなってしまいます。
そして陰血は寝ている時に作られているとされています。
寝ないことで陰血が足りなくなり、その結果今度は寝れなくなってしまうなんてことこともあります。
睡眠不足→陰血が作られない→陽を抑えられない→不眠
この様なことが起こります。
どの症状にも言えることですが…
睡眠は非常に大事です!!
↓血についてはコチラの記事を確認してみてください。
構成生薬
≪生薬名≫ | ≪効能・効果≫ |
---|---|
酸棗仁 | 肝血を補う 安神★君薬 |
知母 | 滋陰清熱 不要な熱を去る |
茯苓 | 酸棗仁の安神をサポート 健脾 |
川芎 | 気と血を巡らす |
(炙)甘草 | 生薬の調和 胃腸を整える |
肝血を補う酸棗仁がメインの生薬です。
酸棗仁は量をたくさん使うので比率がかなり大きいです。
知母で不要な熱を去るために構成されます。
超カッコいい名前の白虎加人参湯にもはいってるよ!
川芎は活血薬ですが「血中の気薬」と呼ばれ「血だけでなく気のめぐり」も改善します。
川芎が入ることにより肝の気鬱を改善、また肝にスムーズに血を運ぶことが出来ます。
甘草は諸薬の調和と脾胃を整える役割があります。
また酸棗仁との配合で「酸甘化陰(=酸味と甘味は陰を生む)」陰液を補う役割もあります。
茯苓は利水や健脾で使うことが多いですが安神作用(気持ちを落ち着かせる)もあるため帰脾湯などにも使用されています。
ちなみに…
茯苓はマツホドの菌核。
マツホドは松の根に寄生して菌核を形成します。
外側の皮を除いた菌核全体→茯苓
マツの根を抱いたもの→茯神
マツの根を抱いたものというのは「茯苓の中に松の根の通った状態」です。
茯神は茯苓よりも高価で安神作用が優れているとされています。
よく使う症状
陰血が不足すると体は興奮状態になります。
するとイライラも出てくるのですがそれと同時に不安感や落ち込みがでてきます。
イライラがずっと続くタイプよりも混在し、
落ち込み・不安感>イライラ
このようなタイプの方が向いてると思います。
心身が疲れ弱って眠れないもの
陰血を失った状態の不眠に有効です。
特徴としては…
- 火照る
- 多夢・睡眠が浅い
- 不安感
- 血虚の症状
これらが出ている人は酸棗仁湯を試してみる価値があります。
イライラが強かったり、興奮が強いタイプは抑肝散や加味逍遙散などの方が良いかもしれませんね。
ちなみに…
酸棗仁湯は文献によって嗜眠(ねむくなる)にも使われるとされています。
この場合は酸棗仁を生で使用する。
不眠で使う場合は炙して使うと良いとされています。
注意すべき点
脾胃に負担がかかりやすい
君薬(メイン生薬)である酸棗仁は棗の成熟種子。
使用する量も多いです。
生薬辞典に「脾胃が虚弱の人注意」とは記載がありませんが、個人的には脾胃に負担があると考えています。
特に舌苔が厚く湿を溜め込んでいるタイプは要注意。
実際使っていても
- 胃もたれ
- 食欲低下
- 下痢
訴える人がいました。
脾胃に負担がかかれば血は作られず血虚になってしまい逆効果です。
冷え体質の人は注意
酸棗仁湯は虚火に対しての漢方薬です。
実熱を去る漢方薬に比べると直接的に冷やす作用は弱めですが冷え体質の人は注意しましょう。
まとめ
不眠の漢方薬として有名な酸棗仁湯。
どんな不眠にも有効なわけではありません。
肝の陰血を補い不要な興奮と熱を落ち着かせる漢方薬です。
現代の人たちにはフィットすることが多い処方なのでぜひ覚えてくださいね。
簡単にまとめると
- 心身が疲れた人の不眠に
- 精神不安に
- イライラが強い人はほかの処方も検討
- ストレス、目の酷使など陰血を失う場合も多い
- 脾胃が弱い人は注意が必要
他の処方でも言えることだけど「ストレス管理」「睡眠時間の確保」など養生はしっかりしましょうね。