気持ち悪い…
胃腸炎かな!
…青さんにぴったりだね。
治っても少し飲んでた方がいいかも。
みなさん、こんにちは!
漢方薬剤師の玄(@gen_kanpo)です。
胃腸の風邪って流行りますよね?
そんな時に役に立つ漢方薬が小柴胡湯(しょうさいことう)です。
風邪薬と胃腸薬の両面を併せ持つとても便利な処方です。
ただ薬剤師だとこの名前を聞くとちょっと警戒するかもしれませんね。
(以前重大な問題になったことがある)
そこで今回はこの小柴胡湯がどんな漢方薬なのか解説していきます。
- 胃腸炎の漢方薬を知りたい
- 胸腹部が張りやすい
- ストレスが多い
小柴胡湯ってどんな漢方薬?
簡単に説明できませんが説明すると
- 少し長引いた風邪に
- 胃腸炎のような症状に
- ストレス性症状(胃腸障害)
実はこれは一例で他にも色々な使い方ができる漢方薬です。
他の漢方薬を合わせたり、症状に合わせて加減することが望ましいとされています。
小柴胡湯の一番有名な使い方は風邪が少し長引いて邪が体表面より奥に入り込んだ『少陽病』に対してです。
出典の傷寒論の代表的な条文には
風邪が治らずに少陽病に転入すると胸や脇が張り、
からえずきをして食べることができなくなり、悪寒と熱感が交互に起きるようになる。
吐かせる治療、下す治療をしていなくて脈が沈緊なら小柴胡湯を与えましょう。
※超意訳
こんな風に書いてあります。
この少陽病というのは邪気が体表面から少し体内に入り込んでいる状態(半表半裏といいます)です。
また、邪気の力と正気の力が拮抗している状態。
そのためこの時期は葛根湯などの邪気を発汗させて追っ払う漢方薬はNGとなります。
この時期は抵抗力も少し低下しているので体を元気にする生薬も必要となってきます。
そして小柴胡湯を使うポイントとしては
- 寒さと熱が交互に来る(往来寒熱)
- 胸から脇が張って苦しい(胸脇苦満)
往来寒熱と胸脇苦満は特徴的な症状で小柴胡湯を使う上で重要な判断材料になります。
往来寒熱(おうらいかんねつ)
寒熱が交互に来ることです。(同時ではない!)
少陽病というのは正気と邪気の力が拮抗してる状態です。
そのため
- 正気が強い時は熱
- 邪気が強い時は寒
少陽病は邪気と正気がせめぎあっているのでこれが交互にやってきて往来寒熱が発生します。
胸脇苦満(きょうきょうくまん)
胸脇苦満とはへその上の肋骨両側のあたりが苦しい症状。
少陽は体の側面を通り脇の下辺りに位置されています。
そして少陽の胆は気血の流れをコントロールする肝と表裏の関係。
ここ邪気がうけると気の流れがうっ滞し張りが生じるとされています。
その他、肝胆の気がうっ滞すると
- イライラ
- 嘔吐
- 食欲不振
この様な症状も併せて出やすくなります。
風邪だけではない!
傷寒論の他の条文には
寒さが原因の風邪にかかり5.6日たって悪寒と熱が交互にきたり、胸の下あたり(胸脇)が苦しく食欲がなくなり、吐きたくなる。
あるいは、
胸がざわざわして吐かない
お腹が痛くなる
脇がつかえて触るとかたい感じがする
みぞおちに動悸を感じる
おしっこが減少する
喉が渇かず体に熱がある
咳が出る
こんな時は小柴胡湯をあたえましょう。
※超意訳
小柴胡湯は出典の傷寒論(風邪の症状の本)及び金匱要略(その他の内傷病の本)に数多く出てきます。
これは、この処方が風邪の薬ではなく応用して使うことのできる処方ということを意味しています。
個人的なポイントとしては『気の滞り』と『胃腸の不具合』
これらがある場合は病名に問わず応用できると考えています。
上記の条文も『あるいは』以降は胃腸の症状以外をみると
気がつまる⇒血がつまる⇒水がつまる
と考えることもできます。
小柴胡湯の別名「三禁湯」といいます。
発汗(汗法)、嘔吐(吐法)、下(下法)の「三つの治療法が禁止」状態に使うためにこの名前がついているとされます。
上記の3つの治療法は体に対して負担が大きいです。
半表半裏のときには禁忌とされます。
小柴胡湯は病邪を和解させるという意味で「和解剤」という治療法になります。
ちなみに葛根湯は「汗法」です。
葛根湯は体調に合わせてつかいたいですよね笑
構成生薬
生薬名 | 効能 |
---|---|
柴胡 | 少陽の熱を去る 肝の気の流れを助ける |
黄芩 | 熱を去る 柴胡の散邪を助ける |
人参 | 体に栄養を与えることで邪を散らすのを助ける |
半夏 | 胃の気の逆流を防ぐ |
甘草 | 胃腸を元気に |
生姜 | 半夏と共に吐き気を止める |
大棗 | 胃腸を元気にする |
柴胡と黄芩で肝の流れと熱を改善させる。また入ってきた邪を去る。
その他の生薬が脾(胃腸)に働きかけるので胃腸が弱いタイプにはとても使いやすい処方になります。
人参が入るので補気の効能もあり体が少し虚したタイプに使えます。
メインの生薬の柴胡で情緒をコントロールする『肝』に働きかけるためストレス性の疾患に応用されることが多いです。
柴胡が入る処方は地黄や当帰などの胃腸に負担がかかる生薬が入ってる場合があります。
そのような処方が合わないときは小柴胡湯が便利です。
よく使う症状
体力中等度で,ときに脇腹(腹)からみぞおちあたりにかけて苦しく,食欲
不振や口の苦味があり,舌に白苔がつくものの次の諸症:食欲不振,はき
け,胃炎,胃痛,胃腸虚弱,疲労感,かぜの後期の諸症状厚生労働省 薬局製剤指針より引用
説明した通り応用範囲が多い処方です。
胃腸炎(吐き気・胃炎)
下痢や吐き気を伴う胃腸からくる風邪によく使います。
少陽病は体の水路的な役割をする三焦に影響を及ぼします。
ここに邪が邪をうけると体の巡りが悪くなります。
上部では吐き気、下部では下痢の症状がみられるようになります。
小柴胡湯はこの巡りを改善することができるます。
そして、胃を整える生薬も多く含むので広い範囲の胃腸炎に応用する事ができます。
単独の胃腸炎でも良いですし発熱などの風邪の症状があっても応用することができます。
(ストレス性の)胃腸障害
中医学では脾(胃腸)は肝の助けを借りて正常に消化吸収が出来ると考えます。
情緒や自律神経を主る肝はストレスに対してとても敏感。
肝に負担がかかると胃腸にも影響があり
- 胃痛
- 吐き気
- 下痢
- おなかの張り
この様な症状が現れます。
肝と脾に効果がある小柴胡湯はどちらにも働きかけてくれるのでとても便利。
ダブルで効果的だよ!
風邪の治りが悪い(かぜの後期の諸症状)
傷寒論の条文通り風邪を引いて4.5日たってもすっきり治らないときは使います。
ポイントとしては風邪を引き数日がたち
- 口の中が苦く乾く
- 胸脇苦満
- 往来寒熱
- 吐き気
- めまい
これらの症状が全部でなくても1つ以上出てきたら小柴胡湯を検討しても良いです。
注意すべき点
禁忌
(次の患者には投与しないこと)
1.
インターフェロン製剤を投与中の患者(「相互作用」の項参照)2.
肝硬変、肝癌の患者[間質性肺炎が起こり、死亡等の重篤な転帰に至ることがある。]3.
慢性肝炎における肝機能障害で血小板数が10万/mm3以下の患者[肝硬変が疑われる。]ツムラ小柴胡湯 添付文章 より引用
上記の通り肝硬変やインターフェロン製剤を使用している人は使用禁忌の漢方薬です。
服用を検討している人は必ずチェックしましょう。
かつて大きな『間質性肺炎』という副作用で問題になりました。
効能効果に肝炎と書いてある小柴胡湯はありますが服用したい場合は自己判断をせず必ず専門家の意見を聞きましょう。
陰虚タイプ
小柴胡湯には肝に働く漢方薬なのは説明しました。
ただ、肝の気を動かすのですが肝の陰を補う(潤す)漢方薬ではないです。
小柴胡湯には柴胡、黄芩、半夏と体を乾燥させるタイプの生薬を多く含みます。
特に柴胡は量が多いと肝陰(潤す成分)を傷つけるとされているので
血が少ないタイプに使い続けると肝の血(陰)まで乾かしてしまうことがあります。
そのため元々
- 乾燥肌・爪が弱い・髪が細い
- 夜間に火照る
- 疲れやすい
- 貧血傾向
- 眼精疲労・ドライアイ
この様な症状がある人は単独で長期連用は避けた方がよいです。
まとめ
重大な副作用がありちょっと怖いイメージのある小柴胡湯。
きちんと使えるととても便利な処方です。
簡単にまとめると
肝と脾(胃腸)に働きかける漢方薬
【よく使う症状】
- 胃腸炎
- ストレス性の症状
- 気管支炎
【注意点】
- 禁忌の対象がいる(必ず確認)
- 陰虚の症状
小柴胡湯を飲んだら楽になったわ。