
みなさん、こんにちは。
漢方薬剤師の玄(@gen_kanpo)です。
近年は「酷暑」「猛暑」と呼ばれる日が本当に多くなっていますね。
私が子供の頃(30年前w)は、30℃といえば「暑い日」でした。
ところが今では、体温よりも高い37℃以上の日も珍しくありません。
「暑くてプールに入れない!」なんてニュースもありますが、私たちの時代は逆で「気温が低く水温が上がらないから入れない」でした。
年々、気候が大きく変わってきています。
そして、外界が変われば、養生や漢方治療の考え方も当然変わってきます。
今回は 気象庁のデータ を参考にしながら、「暑い夏をどう養生するか」を一緒に考えていきましょう。
主要都市の気温データ(2020〜2025年)

| 2020年6月 | 札幌 18.3℃ / 東京 23.2℃ / 名古屋 24.6℃ / 大阪 24.9℃ / 福岡 24.9℃ |
|---|---|
| 2021年6月 | 札幌 18.9℃ / 東京 22.7℃ / 名古屋 23.4℃ / 大阪 23.9℃ / 福岡 24.2℃ |
| 2022年6月 | 札幌 16.8℃ / 東京 23.0℃ / 名古屋 24.3℃ / 大阪 24.4℃ / 福岡 24.8℃ |
| 2023年6月 | 札幌 19.3℃ / 東京 23.2℃ / 名古屋 23.8℃ / 大阪 23.8℃ / 福岡 24.4℃ |
| 2024年6月 | 札幌 19.0℃ / 東京 23.1℃ / 名古屋 23.8℃ / 大阪 23.9℃ / 福岡 23.9℃ |
| 2025年6月 | 札幌 20.6℃ / 東京 24.7℃ / 名古屋 24.9℃ / 大阪 25.4℃ / 福岡 25.0℃ |
| 2020年7月 | 札幌 21.2℃ / 東京 24.3℃ / 名古屋 25.4℃ / 大阪 26.0℃ / 福岡 25.5℃ |
| 2021年7月 | 札幌 23.9℃ / 東京 25.9℃ / 名古屋 27.4℃ / 大阪 27.9℃ / 福岡 28.9℃ |
| 2022年7月 | 札幌 23.1℃ / 東京 27.4℃ / 名古屋 27.5℃ / 大阪 28.4℃ / 福岡 28.9℃ |
| 2023年7月 | 札幌 23.8℃ / 東京 28.7℃ / 名古屋 28.9℃ / 大阪 28.9℃ / 福岡 28.9℃ |
| 2024年7月 | 札幌 23.3℃ / 東京 28.7℃ / 名古屋 29.4℃ / 大阪 29.6℃ / 福岡 29.9℃ |
| 2025年7月 | 札幌 25.8℃ / 東京 28.4℃ / 名古屋 29.4℃ / 大阪 30.2℃ / 福岡 30.0℃ |
| 2020年8月 | 札幌 23.3℃ / 東京 29.1℃ / 名古屋 30.3℃ / 大阪 30.7℃ / 福岡 30.2℃ |
| 2021年8月 | 札幌 22.9℃ / 東京 27.4℃ / 名古屋 27.8℃ / 大阪 28.1℃ / 福岡 27.5℃ |
| 2022年8月 | 札幌 22.7℃ / 東京 27.5℃ / 名古屋 28.5℃ / 大阪 29.5℃ / 福岡 29.8℃ |
| 2023年8月 | 札幌 26.7℃ / 東京 29.2℃ / 名古屋 29.4℃ / 大阪 29.9℃ / 福岡 29.7℃ |
| 2024年8月 | 札幌 24.6℃ / 東京 29.0℃ / 名古屋 30.2℃ / 大阪 30.4℃ / 福岡 30.5℃ |
| 2025年8月 | 札幌 25.4℃ / 東京 29.2℃ / 名古屋 30.6℃ / 大阪 30.6℃ / 福岡 29.8℃ |
年々上昇傾向にある夏の気温
2020年と2025年を比較すると、東京・名古屋・大阪・福岡はいずれも夏の平均気温が1〜2℃程度上昇しています。特に7月・8月は30℃に迫る、もしくは30℃を超える都市が多くなっており、「酷暑」が常態化していることがわかります。
東京・大阪・名古屋・福岡は30℃超えが当たり前に
7月後半から8月にかけては、東京・大阪・名古屋・福岡で30℃を超える年が増加。特に2023年以降はほぼ毎年30℃近くを記録しており、かつての「真夏日ライン(30℃)」が日常的になっています。
札幌でも夏の気温上昇が顕著
札幌は他都市より涼しい傾向にありますが、2025年には7月平均25.8℃、8月平均25.4℃と「避暑地」とは言いづらい水準まで上昇しています。近年は北海道でも熱中症のリスクが高まっていることがデータから読み取れます。
2023年が特に暑い夏に
2023年は東京・名古屋・大阪・福岡で7月の平均気温が28.7〜28.9℃、8月も29℃台と、記録的な猛暑が観測されました。札幌も26.7℃と平年を大きく上回っており、全国的に「灼熱の夏」となったことがわかります。
養生・健康面での注意点
- 日中の外出時は、冷房・日傘・帽子・通気性の良い衣服で「体に熱をためない工夫」が必須。
- 夜間も高温多湿のため、冷房を軽く使用して睡眠環境を整えることが重要。
- 薬膳的には「清熱(熱を冷ます)・利水(余分な水分を排出する)」食材(スイカ・きゅうり・緑豆・ハトムギなど)を活用するのがおすすめ。
- 発汗で失われる「水分・ミネラル」の補給を心がけ、熱中症予防を徹底する。
- ↑とはいえ、中医学的には水分で冷えを取らない。水分のとり過ぎにも注意する。
ドンドン使っていきましょう!
主要都市の湿度データ(2020〜2025年)


| 2020年6月 | 札幌 73% / 東京 82% / 名古屋 73% / 大阪 69% / 福岡 76% |
|---|---|
| 2021年6月 | 札幌 71% / 東京 77% / 名古屋 72% / 大阪 69% / 福岡 75% |
| 2022年6月 | 札幌 77% / 東京 77% / 名古屋 72% / 大阪 69% / 福岡 73% |
| 2023年6月 | 札幌 73% / 東京 80% / 名古屋 74% / 大阪 73% / 福岡 76% |
| 2024年6月 | 札幌 74% / 東京 79% / 名古屋 71% / 大阪 71% / 福岡 77% |
| 2025年6月 | 札幌 72% / 東京 79% / 名古屋 74% / 大阪 69% / 福岡 75% |
| 2020年7月 | 札幌 77% / 東京 89% / 名古屋 84% / 大阪 80% / 福岡 82% |
| 2021年7月 | 札幌 74% / 東京 83% / 名古屋 77% / 大阪 72% / 福岡 69% |
| 2022年7月 | 札幌 78% / 東京 79% / 名古屋 78% / 大阪 72% / 福岡 73% |
| 2023年7月 | 札幌 77% / 東京 72% / 名古屋 71% / 大阪 70% / 福岡 75% |
| 2024年7月 | 札幌 77% / 東京 78% / 名古屋 71% / 大阪 71% / 福岡 71% |
| 2025年7月 | 札幌 74% / 東京 77% / 名古屋 71% / 大阪 67% / 福岡 68% |
| 2020年8月 | 札幌 76% / 東京 76% / 名古屋 68% / 大阪 66% / 福岡 70% |
| 2021年8月 | 札幌 73% / 東京 80% / 名古屋 76% / 大阪 73% / 福岡 80% |
| 2022年8月 | 札幌 75% / 東京 79% / 名古屋 76% / 大阪 70% / 福岡 70% |
| 2023年8月 | 札幌 78% / 東京 78% / 名古屋 73% / 大阪 70% / 福岡 73% |
| 2024年8月 | 札幌 81% / 東京 79% / 名古屋 71% / 大阪 67% / 福岡 73% |
| 2025年8月 | 札幌 75% / 東京 76% / 名古屋 67% / 大阪 67% / 福岡 74% |
東京・福岡は湿度が高め
夏場は常に湿度70〜80%台が多く、蒸し暑さが強い傾向があります。そのため体感的に「気温以上に暑く感じる」ことが多く、睡眠の質の低下や熱中症リスクの増大につながります。
大阪・名古屋は7月〜8月に湿度が下がる傾向
東京や福岡と比べると湿度が低めで、多少カラッとすることもあるようです。ただし気温が高いため、不快指数は依然として高止まりしています。水分不足や脱水リスクに注意が必要ですね。
札幌でも油断しない!比較的湿度が安定して高い
気温は他都市より低めですが、湿度は70%台後半が多く「思ったより蒸す」という印象です。「北海道の夏は涼しい」というイメージとは異なり、寝苦しさや熱中症リスクも一定程度存在するようです。
2023年以降、7月は湿度がやや落ち着く傾向に
東京・名古屋・大阪・福岡では、気温が上昇している一方で湿度はやや下がる傾向が見られます。数値的に極端な乾燥ではありませんが、エアコンのドライ運転や除湿機を夜通し使用することで体感的に乾燥しやすくなるケースがあります。最近では夏場でもウイルス感染症が増えているため、睡眠時などは過度な除湿に注意が必要です。
不快指数との関係
不快指数(DI=0.81T+0.01H(0.99T-14.3)+46.3)で見ると、湿度70%以上かつ気温28℃超では「不快指数80以上」となり、多くの人が「暑くて不快」と感じる領域に入ります。東京・福岡・名古屋・大阪は、ほぼ毎年の7〜8月が不快指数80超となっており、「冷房・除湿」「睡眠環境の工夫」「水分と塩分補給」が養生の基本といえます。
養生のポイント
- 蒸し暑い日 → 利尿作用や体にこもる熱を出す食材(ハトムギ・スイカ・緑豆など)
- 湿度がやや下がる時期 → 喉や肌の潤いを意識して補う食材(梨・白きくらげ・はちみつなど)
- 就寝時 → 冷房の除湿モードを使いすぎず、快適さと乾燥対策のバランスをとる
湿度の見方について(注釈)
天気予報で出てくる「湿度50%」は 相対湿度 を指します。これは、その気温で空気に含める水蒸気量の限界(飽和水蒸気量)に対して、何%含んでいるかを示すものです。つまり、相対湿度は空気中に含まれる 水蒸気の割合 を表しています。
一方で「絶対湿度」という指標もあり、これは空気1㎥あたりに含まれる水蒸気の重さ(g/㎥)を示します。例えば「湿度50%」でも、気温30℃では絶対湿度15.2g/㎥、気温15℃では6.4g/㎥と大きな差が生じます。
一般的に天気予報では相対湿度 が使われています。
- 乾燥(湿度40%以下) → ウイルスが活性化・飛散しやすい
- 相対湿度40〜60% → 快適ゾーン
- 相対湿度70%以上 → 蒸し暑く、不快に感じやすい
梅雨から夏は湿邪と暑邪が活発になる


東洋医学では、自然界の気候による影響を「六淫(風・寒・暑・湿・燥・火)」と呼びます。そのうち、夏に特に問題となるのが 湿邪 と 暑邪です。
- 湿邪 → 体の重だるさ、食欲不振、むくみ、頭重感をもたらす
- 暑邪 → 強い熱で体力を奪い、喉の渇きや熱中症を引き起こす
- 暑湿 → 高温と高湿度が重なる状態。夏バテ・胃腸の不調・だるさを招きやすい
暑邪は湿邪の性質を含むため、梅雨が明けても湿邪の影響が残ることが多くあります。そのため、夏の盛りでも湿邪対策を意識することが、体調管理に役立ちます。
暑湿に負けないための養生法
- 生活習慣での工夫
男性でも日傘を使う/冷房は「つけっぱなし」で温度管理/除湿機で湿度を60%前後にコントロール - 食養生での工夫
除湿の食材 → ハトムギ、冬瓜、小豆
解暑の食材 → 緑豆、スイカ、きゅうり - 汗をかいたら休息も必要
中医学では暑さで発汗すると体液といっしょに気(エネルギー)を失うと言われています。
水分を補っても気が補えていないと夏バテ・疲れの原因に。
汗をかいた日はしっかり休養をとりましょう。 - 胃腸に優しい食事を心がける
夏バテの原因のひとつは胃腸の疲れ。
暑湿は胃腸の働きを弱めるため、肉や鰻などのこってりした食事は逆効果になることも。
消化の良い食事を心がけ、体に負担をかけないようにしましょう。 - 解暑は大事だけど胃腸を冷やしすぎない
冷たい飲食物のとりすぎはエネルギー工場である胃腸を冷やしてしまい、疲れの原因になります。
冷たい食べ物には温かい飲み物を合わせるなど、バランスを意識しましょう。 - 睡眠不足は厳禁
夏は陽が強くなる季節で、相対的に陰(冷やす・落ち着かせる力)が不足しやすくなります。
睡眠不足は陰虚を助長し、熱やイライラの原因に。
睡眠時間をしっかり確保し、心身を落ち着かせましょう。
また、イライラも陰を消耗するため、ストレスの原因から離れる工夫も大切です。
近年の日本では除湿機はマストアイテムです!
まとめ


今回の記事では、札幌・東京・名古屋・大阪・福岡の気象庁データ(2020〜2025年)をもとに、近年の夏の傾向と養生のポイントを整理しました。
数字としての変化を知ることで、体感だけでは気づきにくい「暑さ」「湿気」の特徴が見えてきます。
今回の内容をまとめると
- 気象庁データからも「気温上昇+湿度高め」が日本の夏の新常識になりつつある
- 東京や大阪はもちろん、札幌も「涼しい街」ではなくなってきている
- 2023年以降は、都市部を中心に「気温上昇+相対湿度の微妙な変化」が目立ち、体感環境に影響している
- 養生のポイントは「湿邪」「暑邪」「暑湿」を意識すること
- 環境の工夫(冷房・除湿・日傘)+食養生で、夏を少しでも快適に
- 「湿」と「暑」は胃腸にダメージをあたえる。消化の良い食事を心がけ、冷たい飲食の取りすぎることは注意
- 暑さによるイライラや睡眠不足は心身をさらに熱くさせるため、休養と心の安定も大切
これからの夏は、湿邪と暑邪への対策がますます必須になっていくでしょう。
また、熱を生むイライラや睡眠不足にも注意が必要です。心身が不安定になると、体感の暑さも増してしまいます。
気象データをヒントに、生活習慣と食養生を工夫して、この厳しい夏を健やかに乗り切りましょう。











