
みなさん、こんにちは!
漢方薬剤師の玄(@gen_kanpo)です。
日本の暮らしの中には、自然の移ろいを表す「二十四節気」があります。
立春や夏至、冬至といった節気は耳にしたことがありますよね。実際には、一年を24の季節に分ける細やかな知恵です。
中医学の考えでは、「天人合一」といって、自然のリズムと人の体は密接につながっていると考えます。
天人合一:宇宙自然界と人は一体であり、人は常に自然環境と気候の影響を受けているという考え方。
そのため、季節ごとに養うべき「五臓」があり、それに合った食養生を心がけることで、一年を健やかに過ごすことができます。
今回は、春夏秋冬に梅雨・土用を加えた5つの季節ブロックごとに、二十四節気と旬の食材を紹介します。
記事内の食材は【食材帳】からさらに詳しくご覧いただけます。
春(立春〜穀雨)|肝を養い、気をのびやかに

「春三月,此謂發陳」
春はあらゆるものが芽吹き、新しい命が発する季節。体も冬にこもっていたエネルギーを外へとのびやかに解放します。
ただし気の動きが急に活発になるため、イライラや頭痛、めまいが起きやすいのが特徴的。
肝の働きを整えて気の巡りをスムーズにすることが養生の要です。
春の食養生のポイント
- 春と同じ木に属する味は「酸味」。肝の疲れには酸味を取り入れると良いとされます。
- また「春は苦味を盛れ」とも言われます。冬に溜め込んだ不要なものをデトックスするには、清熱作用のある苦味も役立ちます。
- 春の色は「青(緑)」。青い食べ物は肝を養うとされ、濃い緑の葉野菜、山菜、青魚などがおすすめです。
二十四節気と旬の食材(春)
長ねぎ、生姜、白菜、ブロッコリー
菜の花、長ネギ、薄荷、キャベツ
ふきのとう、せり、たらの芽、わらび
セロリ、苺、新玉ねぎ、あさり
タケノコ、クレソン、いちご、さより
新茶(緑茶)、そら豆、レタス、たけのこ
- 夏は「心」と関わりが深く、暑さの影響を受けやすい季節。
- 火に属する味は「苦味」。ゴーヤなど苦味の野菜は熱を去り、余分な水分を抜き、解毒にも役立ちます。
- 夏の色は「赤」。夏に美味しいトマトやスイカは体の熱を冷まし潤す代表食材です。
- 立夏(5月上旬):新緑の季節。豆類、グリーンピース、カツオで気血を養う。
そら豆、グリーンピース、かつお、木の芽 - 小満(5月下旬):万物が成長して満ち始める。アスパラガスやきゅうりで余熱を冷ます。
トマト、きゅうり、さくらんぼ、アスパラガス - 芒種(6月上旬):稲作の始まり、湿度が気になる頃。はと麦、枝豆で湿気を取り除く。
はと麦、小豆、枝豆、ズッキーニ - 夏至(6月下旬):一年で最も昼が長い日。トマト、ズッキーニなどで体の熱を冷ます。
トマト、ズッキーニ、枝豆、鮎 - 小暑(7月上旬):暑さが本格化して消耗しやすい。鯵(アジ)などで胃腸を整え元気に。冬瓜などで湿気対策
冬瓜、ピーマン、鯵(アジ)、穴子 - 大暑(7月下旬):一年で最も暑い時期。西瓜(スイカ)で潤し(+清熱)、苦瓜(ゴーヤー)で心を労る。
スイカ、きゅうり、鶏肉、豆腐、ゴーヤー(苦瓜) - 甘味は脾を養うとされるが、この甘味は砂糖ではなく、自然の甘味!果物・穀物・芋類などの甘味を選びましょう。(人工甘味料も非推奨)
- 長夏の色は「黄」。かぼちゃ、さつまいも、とうもろこし、マンゴーなど黄色の食材がおすすめです。
- 豆類は脾胃を補い、水はけを良くする作用があり、湿気の多い時期にぴったりです。
- 五行では「金」に属し、味は「辛」。適度な辛味は体を温め発散を助け、免疫にも良い影響を与えますが、摂りすぎは肺や肝を傷つけるため注意。
- 秋の色は「白」。豆腐、大根、レンコン、山芋、きのこ類など白い食材は肺を潤すのに役立ちます。
- 立秋(8月上旬):残暑で気と潤いを失いやすい!キウイフルーツや梨で体を潤す。梨、ぶどう、オクラ、キウイフルーツ
- 処暑(8月下旬):山芋などで胃腸を補い、秋の準備:山芋、いちじく、サンマ、茄子
- 白露(9月上旬):乾燥が気になり始める頃。芋類、ブドウで内側から乾燥対策。れんこん、はちみつ、ブドウ、秋刀魚
- 秋分(9月下旬):夏の疲れが出始める頃。キノコ類で補気を心がけ、肺を守る。栗、きのこ、柿、鯖
- 寒露(10月上旬):ヘルペスや帯状疱疹などの免疫低下による皮膚疾患が多い。潤す食材と補気の食材を続ける。れんこん、柿、さつまいも、鮭
- 霜降(10月下旬):気温が安定、低下してくる頃。寒い冬に向けエネルギーを蓄える。蕪(かぶ)、生姜、さつまいも、鰤
- 腎と同じ「水」に属する味は「鹹(塩辛い味)」。ただし摂りすぎは血を傷つけるため適度に。
- 冬の色は「黒」。黒豆、黒ごま、黒キクラゲ、昆布、黒酢など黒い食材が腎を補います。
- 特におすすめは【黒ゴマ】。腎のエネルギーを補い、体を潤すため冬に最適です。
- 立冬(11月上旬):冬の始まり。温める食材を心がける。白菜、ニラ、長ねぎ、鯖
- 小雪(11月下旬):わずかに雪が降るとされる頃。生姜や春菊で血行促進を心がける。白菜、春菊、鱈、生姜
- 大雪(12月上旬):本格的な冬が到来。温めながら気血を失わない養生が大切。鮭、ほうれん草、鴨肉、生姜
- 冬至(12月下旬):陰が極まる頃。ゆず湯など外側からも温める養生を心がける。かぼちゃ、小豆、ゆず、鶏肉
- 小寒(1月上旬):「寒の入り」感染症などが流行る。「冷え対策+補腎、補気」羊肉、にんにく、長芋、寒ブリ
- 大寒(1月下旬):冷えのピーク。滋養があるものを積極的に!牡蠣、鶏肉、ほうれん草、にんにく
- 春:肝を整えて気の巡りをスムーズに
- 夏:心を守り、潤いと気を補う
- 梅雨・土用:脾を大切にして湿気対策
- 秋:肺を潤して乾燥を防ぐ
- 冬:腎を養い、エネルギーを蓄える
夏(立夏〜大暑)|心を養い、潤いと気を守る


「夏三月,此謂蕃秀」
夏は万物が繁茂し、体内の陽気も盛んに。活動的になる一方で、暑さによる消耗も大きいため、潤いを守り、心を安定させる食養生が大切です。
夏の食養生のポイント
また、ウリ科の野菜(スイカ、キュウリ、冬瓜など)は余分な水分を排出。
マメ類は水分代謝を上げ、脾胃(≒胃腸)を補い、消耗した気を回復してくれるため梅雨から夏に最適です。
二十四節気と旬の食材(夏)
梅雨・土用(湿気の季節)|脾を守り、だるさを防ぐ


『黄帝内経』に直接の記載はありませんが、中医学では「長夏(ちょうか)」と呼び、脾胃を養う時期とされています。
湿気が高まるこの時期は、だるさや食欲不振が出やすいため、脾を補い余分な湿を排出する食材を意識しましょう。
調子を崩す人が多いですよ!
梅雨・土用の食養生のポイント
おすすめ食材(梅雨・土用)
はと麦、冬瓜、とうもろこし、小豆、枝豆
山芋、南瓜、じゃがいも
紫蘇、生姜、みょうが
鯵、鰯、しじみ
秋(立秋〜霜降)|肺を潤し、乾燥から守る


「秋三月,此謂容平」
秋は万物が成熟し収まる季節。自然界の陽気が収斂するように、体も内に向かい始めます。乾燥により肺が傷つきやすいため、潤いを与える食材で肺を守ることが大切です。
秋の各節気ごとの養生ポイントはコチラ
秋の食養生のポイント
二十四節気と旬の食材(秋)
冬(立冬〜大寒)|腎を養い、エネルギーを蓄える


「冬三月,此謂閉藏」
冬はすべてが閉じこもり、静かにエネルギーを蓄える時期。無理に発散せず、温かい食材で体を養うことが基本です。
冬の食養生のポイント
二十四節気と旬の食材(冬)
まとめ


二十四節気は自然のリズムを映す暦であり、中医学ではそのリズムに寄り添った養生が勧められています。
旬の食材をうまく取り入れることは、薬に頼らない自然な健康法です。
今日の食卓に、ぜひひとつ、二十四節気の知恵を取り入れてみてください。
二十四節気 × 食材・効能表
| 春(立春〜穀雨) | 酸味・青い食材で肝を養い、気の巡りを良くする。旬の山菜・葉物野菜が最適。 |
|---|---|
| 夏(立夏〜大暑) | 苦味・赤い食材で心を養い、熱を冷まし潤す。トマト・スイカ・豆類で気を補う。 |
| 梅雨・土用 | 甘味・黄色い食材で脾を守る。はと麦・かぼちゃ・とうもろこしで湿をさばく。 |
| 秋(立秋〜霜降) | 辛味・白い食材で肺を潤す。大根・梨・レンコン・きのこ類がおすすめ。 |
| 冬(立冬〜大寒) | 鹹味・黒い食材で腎を補い、体を温め蓄える。黒豆・黒ごま・羊肉など。 |







