みなさん、こんにちは!
漢方薬剤師の玄(@gen_kanpo)です。
今回テーマは心の問題でよく使われる「抑肝散(よくかんさん)」
この「抑肝散」頻用されますがキチンと使われていない印象があります。
きちんと使えるとちょっとしたストレスからくる様々な症状の緩和に使えます。
便利な処方なので是非おぼえていってくださいね!
- イライラしやすい
- 子育てで悩んでる
- 睡眠の質が悪い
抑肝散ってどんな漢方薬?
簡単に説明すると
母子(親子)で使える軽いメンタル症状に有効な漢方薬です。
「抑肝散」の出典は中国宋の時代の『小児薬証直訣』、明の時代の『保嬰撮要』ともいわれています。
この二つ両方とも小児の医学書。
これらの古典に
- 子供の夜泣き
- ひきつけ
- けいれん
の漢方として紹介されています。
怒りを主る臓器は五行説で木に属する「肝」
肝を抑えるから『抑肝散』
つまり過度の怒り(ストレス)を抑える漢方なんです。
子供は大人のより脳が未熟だから感情もストレートに表現します。
ストレスに対し敏感に反応し「夜泣き」や「疳症」に繋がると考えられています。
子母同服
この「抑肝散」の飲み方で有名なのが「子母同服」
夜泣きやひきつけを起こす子供に服用させる場合
「お母さんも一緒に服用しましょう!」
ということが書かれています。
これは夜泣きや神経症の原因の1つが「お母さん(親)のイライラ」考えられている為です!
構成生薬
生薬名 | 効能 |
---|---|
釣藤鈎 | 平肝熄風←めまいやふらつきを抑える |
柴胡 | 疏肝解鬱←イライラをとる |
川芎 | 疏肝理気←気血の流れを改善(イライラにも) |
白朮 | 健脾利水←胃腸を整え余分な水を抜く。胃腸を整える |
茯苓 | 健脾利水←胃腸を整え余分な水を抜く。 |
当帰 | 補血柔肝←肝の栄養「血」を補う |
甘草 | 健脾 調和←胃腸を元気にする。生薬の作用をマイルドにする。 |
メーカーによっては白朮→蒼朮
蒼朮には健脾作用はありません。
後述するけど、どちらもイライラの漢方薬として優秀だよ。
よく使う症状
体力中等度をめやすとして,神経がたかぶり,怒りやすい,イライラなど
があるものの次の諸症:神経症,不眠症,小児夜泣き,小児疳症(神経過
敏),歯ぎしり,更年期障害,血の道症厚生労働省 薬局製剤指針より引用
精神科領域で頻用される漢方薬『抑肝散』
ただ、どんな精神病でも良いわけではありません。
イライラしている
五行説で「肝」の感情は「怒」
肝を抑制する漢方薬で「抑肝散」です。
つまり怒りを抑える漢方薬と考えることが出来ます。
同じ気持ちの問題でも『落ち込み』タイプより『イライラ』タイプにオススメです。
小児疳症(神経過敏)
子供の神経過敏などにはよく使います。
一般的に子供は…
- 肝(情緒)が高ぶりやすい
- 脾胃(消化器官)弱りやすい
こういわれており肝が高ぶりやすいです。
最近は子供もストレスが多く神経過敏などの相談も多く使う場面が多い漢方薬です。
歯ぎしり
抑肝散は「内風(ないふう)」という症状にも使います。
前に言っていた風邪の邪気『風邪』??
それに対して体の中に吹く風を『内風』って言うんだ。
五行説で肝が属するのは「木」
この木の邪気が風です。
ストレスなどで臓腑(特に肝)が弱ると体の中に『内風』という風がふきます。
風の性質は物を動かす。
体の中に風が吹くと『自分の意志ではない体の動き』が出てしまうのです。
歯ぎしりは全部自分の意志ではないですよね?
その様な不随意運動を引き起こすのが内風
抑肝散はこの内風にたいして効果があるとされます。
不眠
これも「イライラ」と関係があります。
ストレスなどで夜でも交感神経が優勢の時などにオススメ。
- イライラして寝れない
- 睡眠の質が悪い(歯ぎしりをしている)
等の不眠には有効。
逆に
- 不安感が強い
- 寝る前にあれこれ考えてしまう
- 寝汗をかく
様な不眠には他の漢方薬の方が有効です。
落ち込むタイプよりイライラタイプの方がオススメ!
加味逍遥散との使い分け
同じイライラの漢方薬には有名な「加味逍遥散」があります。
構成生薬も似ている部分があります!
ではどのように使い分ければよいのでしょう?
前述したように抑肝散には
「内風」に対して「釣藤鈎」が入っています。
加味逍遥散には
「牡丹皮」「山梔子」という清熱の生薬が含まれます。
上部の血のめぐりを良くする「川芎」を含まない。
そのため…
- 不随意運動(内風)がある→抑肝散
- 上部のほてりがある→加味逍遙散
こう使い分けるのが一般的です。
注意すべき点
元々子供のために作られただけあり、とても使いやすい漢方薬です。
ただ、闇雲に使えばよいわけではないので注意しましょう。
頼り過ぎない(養生も大切に)
イライラに対してとても有効な漢方薬です。
抑肝散がよく効くのは「肝が高ぶっている」タイプ。
肝が高ぶる原因は…
- ストレスが多い
- 睡眠時間が足りない
- 飲食物の不摂生
- 運動不足
様々な原因があります。
肝は「のびのび」することを好む臓。
ストレス発散法も考えるようにしましょう。
子供の場合は特に睡眠が大事です。(大人もですが)
成長期の子供は陰陽のバランスが陽に傾きやすいです。
陰を補うには睡眠が一番です。
睡眠時間の確保は第一優先にしましょうね。
こんな悪循環がとても多いです。
まとめ
『抑肝散』は軽度の精神症状(特にイライラ)に有効でとても使いやすい処方です!
簡単にまとめると
抑肝散は母子(親子)で使える軽いメンタル症状に有効な漢方薬。
【適した症状】
- イライラ
- 歯ぎしり
- 不眠症
- 小児の神経症
【注意すべき点】
- 頼り過ぎない
- ほてりが強いタイプ←加味逍遥散
でも、抑肝散がよく効くという事は肝が暴走気味!
養生も大事にしましょうね!