【養生訓より】養生の四寡(しか):少なくする養生について

みなさん、こんにちは!
漢方薬剤師の玄(@gen_kanpo)です。
健康のための養生というと、多くの人は「何かを足すこと」を思い浮かべます。
栄養のある食事、サプリメント、運動、さまざまな健康法などです。
もちろんそれらも大切です。
しかし、もう一つ大切な考え方があります。
それが「少なくする養生」です。
算数、数学でも足し算だけでは、成り立たないですよね?
実は体調が整わない原因は、足しすぎていることにあるかもしれません。
この「足す養生と引く養生」については、以前の記事でも紹介しています。
そしてこの考え方は、江戸時代のベストセラー養生書:貝原益軒の「養生訓(ようじょうくん)」にも書かれています。
今回はこの養生訓にある、「少なくする養生」について解説していこうと思います。
- 色々な健康法を試しているのに体調が良くならない
- 新しい健康情報につい飛びついてしまう
- 情報が多すぎて何を信じていいかわからない
「少なくする養生」という考え方


もしかすると体の不調は「足しすぎている」のかもしれません。
現代は健康情報があふれる時代です。
テレビ、インターネット、SNSなどから、毎日のように新しい健康法が紹介されています。
「これが体にいい」
「この食べ物が健康に効く」
「この習慣を取り入れると調子が良くなる」
そうした情報を取り入れること自体は悪いことではありません。
しかし、知らないうちに体に負担をかけてしまっていることもあります。
そんな時に参考になるのが、江戸時代の養生書「養生訓」です。
この本には、様々な健康法が書かれていますが、特に大切な考え方として「少なくする養生」も書かれています。
その代表的な教えが、これから紹介する養生の四寡(しか)です。
養生の四寡(四つの少なくすべきこと)
【原文】
おもひをすくなくして神を養ひ、欲をすくなくして精を養ひ、飲食をすくなくして胃を養ひ、言をすくなくして気を養ふべし。
是養生の四寡なり。
【現代語訳】
思い悩むことを少なくして精神(神)を養い、欲を少なくして生命力のもとである精を養い、飲食を控えめにして胃を養い、言葉を控えめにして気を養うべきである。
これが養生における「四つの少なくすべきこと四寡)(しか)」である。
ピックアップするとこんな感じ。
- 思いを少なくして神を養う
- 欲を少なくして精を養う
- 飲食を少なくして胃を養う
- 言を少なくして気を養う
とても簡潔な言葉ですが、健康の本質を突いた教えです。
思いを少なくして神を養う


「思い」とは、ここでは考えすぎることを意味します。
もちろん人間は考える生き物です。
しかし、考えすぎることは心身を消耗させます。
中医学では、精神活動を「神(しん)」と呼びます。
この神は、過度な思考や心配によって疲れてしまいます。
中医学では思慮過度(考えすぎること)は様々な悪影響を与えると考えます。
- 思は脾を傷る → 胃腸が弱る → 気血が作られにくくなる
- 思い過ぎると心身の源である心血を消耗 → 不安・不眠
考えすぎるほど体と心の両方が消耗していってしまいます。
現代は特に、考えすぎやすい環境です。
仕事、将来、人間関係など。
さらにスマートフォンを開けば、次々と情報が流れてきます。
ニュース、SNS、動画、広告。
一日中、脳は刺激を受け続けています。
その結果、気づかないうちに心は疲れてしまいます。
養生訓は江戸時代のベストセラーですが、すでにこの時代から「考えすぎは体を弱らせる」と説かれていました。
神を養う大切な養生です。
欲を少なくして精を養う


次に出てくるのが「欲」です。
東洋医学では生命の根本的なエネルギーを精(せい)と呼びます。
この精は、過度な欲望や無理な生活によって消耗すると考えられています。
東洋医学における精には、少し広い意味があります。
体を支える生命物質全体を指す場合もありますが、特に重要なのが腎に蓄えられる「腎精」です。
腎精はさらに二つに分けられます。
一つは、両親から受け継ぐ先天の精。
もう一つは、食事や呼吸によって作られる後天の精です。
先天の精は、成長・発育・生殖など生命の根本を支えるエネルギー。
年齢とともに少しずつ減っていき、これが老化の一因と考えられています。
一方、後天の精は脾胃(≒胃腸)の働きによって作られ、日々の生命活動の燃料となるものです。
食事や生活習慣によって補うことができるため、養生の影響を受けやすい部分でもあります。
この二つは互いに助け合う関係にあります。
先天の精は消化機能を温めて働きを助け、後天の精は先天の精の消耗を補うことで、生命のバランスを保っています。
もちろん、欲があること自体は悪いことではありません。
欲求の発散、楽しいことや嬉しいことなどは気を緩めて心身を楽にしてくれる働きがあります。
向上心や意欲も、ある意味では欲の一つです。
しかし欲が強くなりすぎると、
「もっと働く」
「もっと成果を出す」
「もっと成功する」
と自分を追い込みやすくなります。
楽しいことや欲求は変化を求めているから陽の性質。
陰陽はバランスが大切で強い陽には陰である精血の下支えが必要です。
そして、過剰な陽は陰を賞もします。
結果として休む時間が減り、体は少しずつ消耗していきます。
これは精を無理に使い続けている状態とも言えます。
現代社会は競争も多く、欲を刺激される場面がとても多い時代です。
だからこそ時には、「足るを知る」という視点も大切なのかもしれません。
精を守るためには、頑張り続けるだけでなく、適度に休み、生活を整えることも大切な養生なのです。
飲食を少なくして胃を養う


三つ目は「飲食」です。
これはとても分かりやすい内容でしょう。(私も毎回口うるさく言ってますしw)
食べすぎは胃腸を疲れさせるということです。
中医学で脾胃(≒胃腸)は、食料を管理する役人にたとえられ、「倉廩(そうりん)の官」とも呼ばれます。
つまり脾胃は、体のエネルギーを作る中心的な存在です。
言い換えると、脾胃はエネルギーを生み出す「体の工場」のようなものです。
しかし食べすぎてキャパオーバーになると、消化にばかり負担がかかり、うまくエネルギーが作れなくなります。
これは、材料が十分にあっても工場がうまく稼働しなければ製品が作れないのと同じです。
現代は食べ物が豊富な時代です。
コンビニ、外食、スイーツ、夜食と、気づけば一日中何かを口にしている人も少なくありません。
しかし体にとっては、「食べない時間」も大切な休息になります。(エネルギー工場の休憩時間)
腹八分目という言葉があるように、少し控えめな食事が胃腸を守る養生につながります。
エネルギー不足を感じるときこそ、あえて食事を軽めにして、胃腸を休ませてみること。
言を少なくして気を養う


最後は「言」です。
言葉を発することは、意外とエネルギーを使います。
中医学では、声を出すことは「気」を消耗すると考えられています。
実際に、楽しい会話やSNSのやり取りでも、知らず知らずのうちに気を使っているものです。
文字通り「気を使う」=気を消耗する、ということです。
また、昔から「口は災いの元」という言葉があります。
これは現代のSNSにも当てはまるかもしれません。
- 思ったことをすぐ発信する
- 感情のままにコメントする
こうした行動は、人間関係のトラブルにつながるだけでなく、結果的に気の消耗を招くこともあります。
言葉のやり取りそのものが、精神的なエネルギーを使う行為でもあるのです。
もちろん、楽しく会話をすること自体は大切です。
しかしその一方で、
- 言いすぎない
- 反応しすぎない
も意識したいところです。
時には言葉を控えめにすること。
そして、一人でのんびり過ごす時間や、スマホやPCから離れる時間を持つこと。
それもまた、自分の気を守る大切な養生と言えるでしょう。
まとめ


現代は、情報も食べ物もあふれる時代です。
気づかないうちに「足しすぎている」ことも少なくありません。
だからこそ「少なくする養生」という視点も大切にしていきましょう。
今回の内容を簡単にまとめると
養生訓に書かれている養生の四寡(四つの少なくすべきこと)の考えを大切にする!
- 考えすぎない(思いを少なくして神を養う)
- 欲張りすぎない(欲を少なくして精を養う)
- 食べすぎない(飲食を少なくして胃を養う)
- しゃべりすぎない(言を少なくして気を養う)
とてもシンプルですが、現代ではむしろ難しいことかもしれません。
それが、心と体を整える大切な一歩になります。
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